英投資ファンドのCVCキャピタル・パートナーズは、「家庭教師のトライ」を手がけるトライグループ(東京・千代田)を1100億円程度で買収する。新型コロナウイルスの感染下でオンライン教育が浸透するなか、人工知能(AI)関連の投資を増やし競争力を高め、3~4年後の上場を目指す。教育ビジネスで、デジタル投資が生き残りを左右する要因になってきた。
トライは家庭教師や個別指導塾を全国で展開し、1100カ所の拠点を持つ。登録する家庭教師の数は20万人を超える。家庭教師でシェア約1割の最大手だ。非上場だが2021年5月期の売上高は約500億円と、上場企業では東進ハイスクールを手がけるナガセと同規模。トライグループはこの数年増収基調で、EBITDA(税引き、利払い、償却前利益)は80億円強と収益性も業界内では高い。
両社は月内にも買収契約を結ぶ。CVCは買収のためにSPC(特別目的会社)を設立し、創業者の平田修会長らからトライ株を全株取得する。その後、平田会長と二谷友里恵社長は売却で得た資金を活用してSPCに再出資することで、経営に一定程度関与する。
CVCはトライのオンライン対応を一段と加速させる。学力診断などに使用するAIの精度向上や新たなサービスの開発を進める。CVCはオンライン大学Pegasoを運営するイタリアの企業に投資するなどの投資経験を生かして、トライの企業価値を高める。
学習塾・予備校・家庭教師の市場規模はここ数年1兆円近く(矢野経済研究所調べ)で推移する。少子化が進む一方で、1人当たりにかける教育費は増えている。新型コロナのまん延で対面授業が難しくなり、オンライン化が急速に進んでいる。資本力のある大手は対応を進めているが、中小の学習塾は遅れが目立っており、今後再編が進む可能性がある。
CVCは11日、トライの買収についてコメントを控えた。トライはコメントしていない。