2018年8月23日に世界的権威のある医学雑誌『ランセット』誌に掲載された1本の論文が世界に衝撃を与えた。それまでは少量であれば健康に良いが過量になると悪影響があると考えられていたアルコールが、たとえ少量でも健康に悪いという報告であったからである。 しかも大量の患者の実測に基づいたものであったからなおさら。しかし結論としては、少量の飲酒は心筋梗塞などの循環器系の疾病には効果があるが、がんは、少量の飲酒でも危険率が高いというから、少量の飲酒は悪くはないということ。
東洋経済が
この論文に掲載された図では、1日1杯ではほとんどリスクが上昇しておらず、1日1杯以上になると飲酒量が増えるに従い、病気になるリスクが上昇しているように見える。
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ちなみにここでの1杯とは、純アルコール換算で10gのことを指す。10gの純アルコールはグラス1杯のワインやビールに相当する。
最後は自分自身のリスク要因で決める
論文によると、健康リスクを最小化する飲酒量に関して、最も信頼できる値は1日0杯であり、95%の確率で0~0.8杯/日の間に収まるという結果であった。この結果を受けて「最も健康に良い飲酒量はゼロである」と主張している人も多いが、筆者は個人的には「1日1杯までであればリスクは上昇しない」と解釈してもいいのではないかと思っている。
つまり、1日1杯程度の少量のアルコールの場合、心筋梗塞や糖尿病のリスクが低いことと、乳がんや結核(そしてアルコールに関連した交通事故や外傷)のリスクが高いことが打ち消しあって、病気のリスクは変わらないという結果になっていると考えられる。
この結果を見て、私たちはどのように生活習慣を変えればいいだろうか?
第一に、好きでもないのに健康に良いからという理由でアルコールを少量飲んでいる人は止めたほうがいいだろう。健康へのメリットは思われているほどはっきりしたものではないし、がんやケガのリスクを高めてしまう可能性がある。
ではアルコールが好きで飲んでいる人(ほとんどの人はこちらだろう)はどうしたらいいだろうか。自分自身のリスクなどを総合的に判断して決めるべきだろう。近い親族にがんになってしまった人がいる遺伝的にがんのリスクの高い人は、アルコールの摂取量を最低限に抑えることをおすすめする。過去にアルコール関連で事故やケガをしてしまった人も控えた方がよいだろう(ランセットの論文で少量の飲酒でも病気のリスクが上がる原因は、がんだけでなく飲酒に伴う事故やケガも含まれていたため)。
もちろんアルコールを飲むことで人生が豊かになり、生活の質が上がるという人もいるだろう。人間は病気にならないためだけに生きているわけではないので、そのような人は適量、つまり1日1~2杯までに抑えてたしなむことがいいと筆者は考える。
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