日米欧などの国際共同研究グループが10日、銀河の中心にある巨大ブラックホールの撮影に初めて成功したと発表した。世界の8つの電波望遠鏡を連動させ、極めて解像度の高い巨大望遠鏡に見立てて観測した。ブラックホールの存在は間接的な証拠からわかっていたが、目に見える形で姿をとらえたことはなかった。謎に包まれた天体の解明につながるノーベル賞級の成果で、データ解析に使われた技術は新素材の開発や医療にも役立つ。
日経ニュース速報による。
ブラックホールは過去の研究で実在することは確実だとわかったが、周囲を回る星の動きなど間接的な根拠から存在を推定するのにとどまり、画像という「動かぬ証拠」にたどり着けなかった。想像で描かれてきたブラックホールの本当の姿が明らかになり、最後のピースが埋まったことで存在は完全に証明された。
現代の物理学の理論の検証や、銀河の成り立ちについても新たな知見が得られる可能性がある。巨大ブラックホールは星の形成などに深くかかわっていると考えられるが、その仕組みについては不明な点も多い。多くの謎が解明に向けて進展すると期待される。
今回、日本の国立天文台などが参加する研究グループはチリやメキシコ、米国、スペイン、南極にある8つの電波望遠鏡を連動させ、地球サイズの巨大望遠鏡を仮想的に実現。解像度を宇宙深部の観測などに用いられるハッブル宇宙望遠鏡の約2千倍に高め、月面にあるゴルフボールを観察できるほどの「視力」で撮影を試みた。
宇宙には無数の星の集まりである銀河が少なくとも数千億あり、その中心には巨大ブラックホールが存在するとされる。研究グループは地球から5500万光年離れたおとめ座のM87銀河にある巨大ブラックホールを2017年に撮影し、10日に画像を公開した。
分析によると、撮影したブラックホールの質量は太陽の約65億倍。画像には周辺に直径およそ1千億キロメートルの光の輪が映し出された。
観測技術や膨大なデータを処理するコンピューターの性能が飛躍的に向上し、理論上の存在だったものが実際にとらえられるようになった。ブラックホールも最先端の技術を駆使し、その姿を写し出すことに成功した。
観測技術の改良が進めば、地球からさらに離れたブラックホールを撮影できる可能性がある。重要な特徴を見つけ出すデータ解析の手法は、人工知能(AI)や通信、医療などにも応用され始めており、産業への貢献も期待される。
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