BizHintというIT系Webサイトがテレワーク導入はまずはツールを使い始めることが第一歩と大手ITメーカーの担当者の座談会で結論付けていた。これが意味するところは、まだ、テレワークが一般化しておらず、様子見の段階であると思われる。この座談会を読んでも、テレワーク時代になって、新たな環境やシステムがいるということが指摘されている。例えば、テレワーク勤務規約、これは厚生省が出している[テレワークモデル就業規則]とかでそれが参考になる。また依然、ハンコ社会なので、電子押印認証システムとかが必要になる。
まずはツールを使い始めることがテレワーク導入の第一歩!
中小企業のテレワークがなかなか進まない、というデータから座談会はスタート。
冒頭、登壇者の自己紹介と、現状感じていることについて一言ずつコメントがありました。
日本マイクロソフト株式会社 エバンジェリスト・業務執行役員の西脇資哲氏は、「マイクロソフトでは3月時点でオフィスに出社していた従業員は16%、4月5日時点で4%、非常事態宣言後は1%を切りました」と話し、「育児や介護をしている人だけがテレワークや在宅勤務という考え方ではなく、 社員全員を在宅にして出勤という標準をやめることが必要 でしょう」と述べました。
続いて、富士通株式会社 理事 首席エバンジェリストの中山五輪男氏は「富士通では現在ほとんどの社員がオフィスに出勤していません。もともと 2019年7月のテレワークウィークに全員がテレワークできる環境を整えていた のですが、社内ネットワークへのアクセスが増えているという課題があるため、臨機応変に現場で対応しています」と現状を説明。
「マイクロソフト社では、4/5時点でオフィスに出社している社員は4%」と語るマイクロソフト・西脇氏.
テレワークの導入については「まず、 無料のSNSでも良いから使い始めることが大事 です。世の中にはたくさんのビデオ会議ツールがあるので、自分たちに合ったものを導入すれば良いと思います。 ITが苦手でスマホも使えない上司には今回を機に強制的に覚えてもらい、周囲がサポートすることも重要 です。会社PCの持ち出しルールの見直しも必要になるでしょう」とアドバイスしました。
全国の会計事務所や企業をクライアントに持つ株式会社TKCの代表取締役社長 飯塚真規氏は、「もともとテレワークには積極的ではなかったのですが、コロナを受けて開始しました。緊急事態宣言のエリアを中心にテレワークを行っています」と話し、「会計に関する業務上、データセンターやコールセンター業務、あるいは郵便の受け取りや請求書の処理などは、在宅では行うことができません。また、 顧客は訪問するものという思い込み が特に都市部では顕著に見られます。さらに新入社員の教育や帰属意識の醸成、在宅勤務のノウハウ不足など課題は数多くあります」とテレワークの課題を挙げました。
コミュニケーションはカジュアルに。とはいえ、テレワーク特有のセクハラ・パワハラに注意
続いて、オンライン座談会視聴者からの質疑応答が行われました。まず「中小企業のオンライン化の進め方」について。
西脇氏は「 中小企業にもITを推進してきた人がいる ので、その人達の力を借りてテレワークを進めましょう。自分たちがどんなインフラを持っているか、例えばOffice365を持っていればグループチャットウェアのTeamsが使えます。わざわざ投資をするのではなく、今ある知恵とライセンスを上手く組み合わせることが大事です」とコメント。
飯塚氏は「中小企業の代表は65歳以上で、スマートフォンが使えないという方が多い。 そこはどうしても乗り越えなくてはいけません 」と強調しました。
「テレワークに対応できない上司には、周囲の働きかけで強制的にでも対応してもらう必要がある」と語る富士通・中山氏
続いて「テレワークによる従業員のメンタルケア」についての質問。富士通の中山氏が「リモートでメンタルをサポートするのは難しいが、LINEやZoomを使った コミュニケーションをこまめに取ることが効果的 です。メンタル的に危ないと思ったら、いろいろな人にコンタクトを取ってみるのも良いでしょう。また、 ビデオ会議においては女性に配慮して顔出しを必須にしないことも重要 です。在宅勤務特有のセクハラやパワハラが生まれないよう、寛容な気持ちで上司がケアしていかなくてはいけません」とテレワークにおける留意事項を解説。
西脇氏も「疎外感をなくすために カジュアルな気持ちでコミュニケーションに参加することが大切 です。テレワークでは暗くなりがちなので、 Web会議では身振り手振りや笑顔といった反応を大げさにしたり、マルバツを描いた札のような小物を用意するのも良い と思います。 楽しい雰囲気で仕事をすることがこれからのテレワーク だと言えます」とテレワークにおけるTipsを説明しました。
従来の常識を見直す機会、何が必要で何が不要かを明確に
次に「テレワークにあたって、パソコンをどうするか?」という質問について。中山氏は「プライベートなパソコンからアクセスするBYOD(Bring Your Own Device /自分のデバイスを持ち込むこと)は、 今限定で認めても良いのではないでしょうか?あれもこれもダメではビジネスが止まってしまう。 なんとかして事業を継続するためにいろいろなことにトライして、ベストな方法を見つける必要があります」と話し、「スマホファーストでテレワークを考えるのも良いかもしれません」と続けました。
生活と仕事の垣根が分かりにくくなるという観点から、テレワークにおける就業規則についても質問がありました。
西脇氏は 「就業規則を一度ゼロリセットする必要があると思います。そもそも就業規則は出勤して働くことを前提としている ので、新たに見直す時期ではないでしょうか」と話すと、飯塚氏も「テレワークをやるにも就業規則の整備は必要です。まずは厚生労働省が出している[テレワークモデル就業規則]を参考にすれば良いのではないでしょうか」と説明し、 インターネットがない時代に作られた就業規則を見直す機会 であることを示唆しました。
KTKC・飯塚氏から「テレワーク時の就業規則に困ったら、厚生労働省の指針をコピーペーストするところから始めたら良いのでは?」という提案がなされた。
さらに、ハンコを押すだけのために出社する「ハンコ問題」について、中山氏が「電子契約サービスを利用してハンコ文化から脱却することが必要です」と話すと、飯塚氏は「必ず押印して紙で保管する書類もあるので、法律の見直しも必要かもしれません」と補足。今回の座談会のコーディネーターを務めた日本デジタルトランスフォーメーション推進協会アドバイザーの森本登志男氏も「 規制緩和でハンコが減れば助かる人も多いと思います。ただゼロにする必要はなくて、8割削減できれば良い。 何が必要で何が不要かの切り分けが求められるでしょう」とコメントしました。
アフターコロナの世界を想像し、新しい働き方を創造する
「楽しい雰囲気で仕事をする」。テレワークでの運動不足をテーマにバーベルが登場する一幕も。
最後にクロージングとして、登壇者から一言ずつコメントがありました。
飯塚氏はアフターコロナに向けて今から取り組むべきこととして、「経理においては紙からのインプットが多いのが現状です。例えば経費は法人クレジットカードにまとめてしまえば、データ受信するだけで簡単に記帳ができます。預金をネットバンキングにするのも良いでしょう。 テレワーク中に不便に感じたことを記録しておくと役に立つ はずです。そして、経理業務のDXを目的とするのではなく、DXを通じて何を実現するかを明確にすることが大切です」と経理部門のDXに言及しました。
中山氏は「コロナショックで世界がデジタル化に向かいます。働き方のルールからシステムの使い方まで、ゼロクリアして古い文化を見直すきっかけになるでしょう。不況になるとIT投資は縮小しますが、 今こそIT化を進める良い機会です。みんなで情報を共有し、勇気を持ってお金を使いましょう 」とアフターコロナの世界について想像することを強調。
西脇氏は「コロナ後の世界は、これまでの“普通”が変わります。いわゆる、新しい普通“NewNormal”ができてくると思います。今までと考え方を変えて、自分の会社は何のために存在しているのか、コミュニケーションを円滑にする理由は何かなど、 新しい普通をつくる必要があります。 ITやDXはNewNormalの先にある言葉だと言えるでしょう」と締めくくりました。
新型コロナウイルスの感染拡大が続き、各企業や従業員に厳しい状況が強いられている今、ITやオンラインを活用した新しい働き方が求められています。これまでの常識を見直し、導入できるところからテレワークを進め、アフターコロナの世界に備えることが必要だと言えるでしょう。
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