スマホ決済は少額決済が中心で、ネットショッピングのような比較的高額な分野はクレジットカードが強い
外出自粛を受けた巣ごもり消費の拡大で、スマートフォン決済に逆風が吹いている。5月の日用品の支払額データを分析したところ、クレジットカードの利用が36%と最多だった。店頭でかざして使うことが多いスマホ決済は7%にとどまった。対面決済での利用機会が減っているためだ。スマホ決済事業者は消費行動の変化への対応が課題となっている。
市場調査会社のインテージの協力を得て、新型コロナウイルスの感染拡大が広がった2月以降の日用品の決済手段を分析した。購入した日用品のバーコードを読み取って消費者が金額と決済方法を入力する「SCIペイメント」のデータを活用し、支払額や回数を調べた。本やゲームなど集計に含まれない項目もあるが、大まかな決済動向がつかめる。
2月10日~3月8日と、直近の5月4日~17日のデータを比べると、最も利用が多かった決済手段はクレジットカードの36.2%で、1.9ポイント増えた。現金は2.8ポイント減の31.7%、「ペイペイ」や「LINEペイ」などQRやバーコードを読み取るタイプのスマホ決済のシェアは0.1ポイント減の7.4%だった。
Suica(スイカ)など電子マネーの利用額のシェアは0.8ポイント増えて18.4%となった。支払時にスマホを操作する必要がなくタッチするだけで支払えるため、QRコードの決済などと比べると堅調だった。
クレジットカードはネット通販とスーパーで利用が増えた。「外出を減らすためにまとめ買いが増え、高額を決済できるカードが伸びた」(インテージの駒崎幹拓アナリスト)
三井住友カードによると、4月7日に緊急事態宣言が出されて以降、テレワーク関連消費とみられる「通信サービス」や「家電量販店」での利用が伸びた。楽天カードも4月以降のカードショッピング取扱高が前年同月比でプラスだ。
感染症対策で接触機会を減らせる「脱現金」が進むなかで、スマホ決済は苦戦した。東京都の宝山健太郎さん(34)は「スマホ決済のアプリは持っているが、チャージしてあるのは5000円以内。まとめ買いにスマホは使わない」という。
スマホ決済はコロナによる生活の変化で2つの逆風を受けた。1つ目はまとめ買いだ。スマホ決済の平均利用額はスーパーで3000円台と4000円を超えるクレジットカードに比べて低い。
2つ目は店舗に足を運んで使うことが多く、外出自粛の影響を受けやすかったことだ。1~3月の決済回数が前年同期の約17倍の3億回となったペイペイも「4月は加盟店の休業が増え、決済回数の伸びが鈍化した」(同社)。5月も横ばいだった。auペイも4月以降の利用率は横ばいだという。
スマホ決済は大規模な還元キャンペーンで利用者を増やしてきた。消費行動の変化にどう対応するかが各事業者にとって課題となっている。
ペイペイは6月から飲食店のテークアウト向けに新サービスを始めた。注文から決済までをアプリ上でできる仕組みだ。
スマホ決済は少額決済が中心で、ネットショッピングのような比較的高額な分野はクレジットカードが強い。キャッシュレス決済に詳しい日本総研の岩崎薫里上席主任研究員は「現状ではQRコードなどを使う決済はセキュリティーの課題があり少額の利用にとどまっている。不正利用の防止などの信頼獲得が重要」と指摘する。
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