湖子庵の庭と、梨園の境界に植えられている樹木が、枝葉を伸ばし鬱蒼としておりました。
庭全体が森の中にいるようなさまで、梅雨の雨で陰鬱な気分になりがちで御座いました。
二、三日前から、梨園出入りのおじさんが来て境界の樹の枝葉や幹も程よい高さで切りそろえ、すっきりと調えてくれました。
おじさんは、地元の方で、ここで生まれて育ったので他府県に出た事は無いとのこと、仕事ではなく樹を切って綺麗にする事が好きで、毎年この時期にやってくるのです。
お陰で随分と明るくなり、梅雨空ながら別世界のようになりました。
湖子庵の庭のほうが、ぼさぼさで見苦しくなり、昨日は吉天も負けじと、モミジやカエデの手入れをし、枝に透かしを入れたりして、にわかに庭師に変身しました。
作業の甲斐あって、それは見事な名園と化し、自身も庭師の腕を上げたと自己満足で、充実した一日で御座いました。
大きく広がった空は「どんより」してはおりますが、雲間から光も射し、名園のたたずまいを、「ぼんやり」眺めております。
繁みを、取り払われた樹の幹が露出して、大きな蝸牛が「ゆっくり」と這い登っているのが、見られます。
PCのディスプレイや、キーボードに目を落としているうちに、彼の蝸牛を見失いました。
奴は、誤って樹の幹から落っこちたかなと、心配になり庭に下りて探索いたしましたるところ、幹の裏側にしっかりと貼りついて居りました。
余計な心配ご無用。と、マイペース、焦らず、ゆっくり。
カタツムリに、コーチングしてもらって、「どんより」のなか、「ぼんやり」して「ゆっくり」と、それでも幹の頂上を目指す心意気を学ばせてもらいました。
名園「湖子庵の庭」にて。 吉天爺