国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

モンゴルの欧州安全保障協力機構加盟と内モンゴルの分離独立運動

2012年06月08日 | 中国
モンゴルが欧州安全保障協力機構に年内にも正式加盟することになるという。既にモンゴルは欧州安全保障協力機構及び北大西洋条約機構にパートナーとして参加しているが、そこから更に欧州との軍事関係を深化させることになる。欧州本土から遠く離れたモンゴルがなぜ欧州安全保障協力機構の正式会員になれるのかというと、中国の脅威に対抗するためとしか考えられない。 ロシアを含む広義の欧州文明にとっての最大の脅威は儒教・イスラム連合であることは故サミュエル・ハンチントンが「文明の衝突」で1990年代で既に指摘している。ただ、イスラム文明もアラブ・イラン・トルコ・パキスタン・インドネシアと多様性に富む。周辺国を含む広義の儒教文明圏も中国・日本・朝鮮・モンゴル・チベット・ベトナム等多様性に富む。そして、イスラム・儒教文明の中で最大集団であり地理的にも隣接しているアラブと漢民族が最大の敵であることは間違いない。欧州は恐らく、アラブと対抗するためにトルコやイランと手を結び、漢民族に対抗するためにモンゴルや日本と手を組むことを検討しているのだと思われる。トルコ・カザフスタン・モンゴルは欧州文明とアラブ・漢民族との緩衝地域としての役割も期待できる。 司馬遼太郎賞を受賞した静岡大学人文学部の楊海英(ヤン ハイイン)教授の著書「墓標なき草原」と続編の「続・墓標なき草原」を最近読んだ。文化大革命の時期に内モンゴル自治区で漢民族によるモンゴル族の大虐殺が行われ、知識人階級がほとんど全員殺されたという事実を楊海英氏は丹念な現地取材と関係者への直接インタビューを通じて明らかにしている。冷静な文体が貫かれているが、この本からはモンゴル族の漢民族に対する激しい憎悪が伝わってくる。外国人でありながらこれほど見事な日本語を書く能力は驚嘆に値する。楊海英氏は間違いなくわずかに生き残ったモンゴル族知識人の一人であり、使命感に基づいて漢民族によるモンゴル族大虐殺という歴史的事件を調査して記録しているのだろう。 . . . 本文を読む
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