●ジャパン・ハンドラーズと国際金融情報 : キッシンジャー博士2007年予測・裏読み
「アメリカは石油だけに依存する経済から脱却しようとしている」
ことを宣言しました。いわゆる「ピークオイル」説も彼ら、国際金融資本が旗振りになって流していることがこれで、明らかになったと言えます。さらに彼は石油資源のallocation(割り当て)を提案しておりますが、これなどは来るべき、「デジタル新金本位制」に連動していく可能性があります。(デジタル金本位制については、FTの記事参照)
これは「石油にたよることだけをやめる」こととは違うでしょう。通貨がドル・ユーロ・元(円ではない残念だが・・・)の鼎立になることを見据えると同時に、エネルギー源の多様化を図るという意図でしょう。詳しくは別のところで述べたいですが、おそらくはそういうことです。
世界は「アジア・欧州・米州」を中核とした地域に多極化するでしょう。オーウェルの予言がいよいよ現実味を帯びてきたのです。
●世界の各地域経済共同体等の域内及び対外貿易シェア及び総額(PDF)
東アジア地域(アセアン+日中韓+香港・台湾+インド+オーストラリア・ニュージーランド)の域内貿易は2005年には55.9%に達しており、NAFTAの43.5%とEUの65.7%の中間の数字となっている。地域のGDPもNAFTAの14.3兆ドル、EUの13.3兆ドルに対して9.9兆ドルとかなり近い水準に達している。東アジア・北米・欧州の三極から成る世界システムが成立し始めていると言えるだろう。
●小説『1984年』(ジョージ・オーウェル著、1949年)の世界のおおまかな地図。ピンクはオセアニア、紫はユーラシア、黄緑はイースタシア。間の黄色い地域は紛争地域である。
1950年代に発生した核戦争を経て、1984年現在、世界はオセアニア、ユーラシア、イースタシアの三つの超大国によって分割統治され、間にある紛争地域をめぐって絶えず戦争が繰り返されている。作品の舞台となるオセアニアでは、思想・言語・結婚などあらゆる市民生活に統制が加えられ、市民はたえず「テレスクリーン」と呼ばれる双方向テレビジョンによって屋内・屋外を問わず、あらゆる行動が当局によって監視されている。オセアニアのイデオロギーは「イングソック(IngSoc、イングランド社会主義)」と呼ばれる一種の社会主義。旧アメリカ合衆国をもとに、南北アメリカおよび旧イギリス、アフリカ南部、オーストラリア南部(かつての英語圏を中心とする地域)を領有する。
残る超大国は、旧ソビエト連邦をもとに欧州大陸からロシアにかけて広がるユーラシア(Eurasia、イデオロギーは「ネオ=ボリシェビキズム」)、旧中国や日本を中心に東アジアを領有するイースタシア(Eastasia、イデオロギーは「死の崇拝」「個の滅却」)。どの国も一党独裁体制であり、イデオロギーにも実はあまり違いは存在しない。
これら三大国は絶えず同盟を結んだり敵対しながら戦争を続けている。北アフリカから中東、インド、東南アジア、北オーストラリアにかけての一帯は、これら三大国が半永久的に争奪戦を繰り広げる紛争地域である。
●日豪が「安全保障」共同宣言へ、米以外とは戦後初-3月に首脳会談 (ブルームバーグ) 2007年1月10日(水)11時13分
1月10日(ブルームバーグ):通商協定締結から50年目となる今年、日本とオーストラリアの両国は安全保障の共同首脳宣言を発表する見通しだ。日本が米国以外の国と安全保障の枠組みを持つのは戦後初。両国関係者が明らかにしたもので、3月上旬にジョン・ハワード首相が来日して安倍晋三首相と会談する方向で調整が進んでいる。
外務省の浜田昌良政務官は「日豪安保」の枠組み構築に向け、両国が共同首脳宣言を発表することを検討していることは「事実だ」とした上で、日本の目的はオーストラリアの持つエネルギーや食糧を含めた総合的な安全保障の枠組みの構築であり、アジア太平洋地域における平和と安定に寄与できると説明する。
マレー・マクレーン駐日オーストラリア大使はイラクへの部隊派遣や対北朝鮮政策などで「両国は非常に緊密に共同歩調を取ってきた」と述べる一方で、「だからといって軍事同盟となり得るという指摘は全くあたらない」と述べて、平和維持活動を中心に据えた共同宣言となることを示唆した。
今年3月、麻生太郎外相が訪豪してアレクサンダー・ダウナー豪外相と会談し、「両国関係の将来への発展に対する最高レベルでの意思」があると宣言。以来、両国政府はどういった形で戦略的関係を強化するかについて模索するなど、機は熟していた。
宣言は条約に準ずるが、政府の公式なスタンスを示すものとされる。その内容は、テロや海賊対策を含むシーレーン防衛などの治安・警備や両国の国連平和維持活動(PKO)や災害派遣を想定した合同演習など、平和維持的な活動を中心に据える。集団的自衛権の行使に触れないなど、強力な軍事同盟の誕生を懸念するアジアなどの諸外国に配慮する見通し。
『海洋同盟』
安全保障を専門とする拓殖大学の森本敏教授は「冷戦後のアジア太平洋地域では伝統的な脅威としての北朝鮮や中台関係に加え、非対称的脅威としてテロや自然災害などのリスクが広がっているが、同じ価値観を持つ日豪『海洋同盟』はそうしたリスクに効果的に対応できる」と評価した。そして「憲法改正によって集団的自衛権の問題が解決されれば、将来的には日米同盟を多国間同盟に発展させることが望ましい。その意味で今回の日豪間の枠組みは歴史的な第一歩だと言える」と述べた。
一方、元国防副次官でオーストラリア国立大学のヒュー・ホワイト教授は「中国と日本がアジアでの影響力を競い合っている点に注意する必要がある」とした上で、「日本がオーストラリアとの安保面での関係構築を急ぐ裏には、中国がオーストラリアを含むアジア太平洋諸国と軍事面での関係強化を進めていることに対抗しようという意図がある」と分析する。
また同教授は「この安全保障体制を通じ、日本にはアジアにおけるプレゼンスを戦略的に高めようという強い意志が感じられる。しかしオーストラリアは『日豪安保』によって日本を選んで中国を切るというより、むしろ日中両国の二股をかけたのではないか」と述べた。
米国も歓迎
長年にわたり日豪の安保面の後ろ盾となってきた米国は民主主義と市場経済を普遍的な価値として共有する日豪の関係強化を歓迎する見通し。今年3月に次官級から外相級に格上げした「日米豪戦略対話」で3カ国はアジア太平洋地域の諸問題で協調していくことを確認しており、実際に対北朝鮮政策や貿易政策など幅広い分野で足並みを揃え始めた。
現在日豪両政府は、オーストラリアのハワード首相が3月上旬にも来日する方向で調整しており、宣言の具体的な内容についてマクレーン大使は両国間で詳細を詰めている最中だとしたうえで、「過去の実績の羅列というよりは、むしろ安全保障分野で将来的にどのような協調体制を取るかに焦点を絞る」と説明している。
日豪関係に詳しい獨協大学の竹田いさみ教授は「日本外交をサポートしてくれることに加え、裏表が少なく日本人にも分かりやすいオーストラリアは組みやすい相手だ。オーストラリアにとっても政治・経済・文化など日本のあらゆるセクターと深い関係を築ける上、ミドルパワーに過ぎない自国だけではできないことも、大国日本と組めばやっていける」と分析する。
http://money.www.infoseek.co.jp/MnJbn/jbntext/?id=10bloomberg33aLnqgHGlDYC8
●日本政府がインドの核保有容認へ、経済関係を優先 (2007年1月10日3時6分 読売新聞)
政府は9日、核兵器を保有するインドに対し、民生用原子力利用への協力として、日本企業が原子力発電所建設などに参入することを容認する方針を固めた。具体的には、米国によるインドの民生用原子力利用支援やインドの核保有容認を盛り込んだ米印原子力協力協定への支持を表明することでこうした道を開く。核拡散防止条約(NPT)体制堅持を掲げてきた日本の不拡散政策の例外措置となる。政府は、安倍首相の年内の訪印を調整している。インドと国際原子力機関(IAEA)の査察に関する協議などを見極めながら、日印首脳会談で米印原子力協定に対する支持を表明する見通しだ。NPT体制は、核保有国を米英仏中露の5か国に限定し、他の加盟国は核兵器保有をできず、民生用の原子力利用も兵器転用が行われないようIAEAの厳格な査察を定めている。核兵器を保有しているインドはNPTに加盟していない。
政府はこれまで、民生用原子力利用への協力をNPT加盟国に限定してきた。インドへの協力が実現すれば例外となるだけではなくインドの核保有を事実上容認することにつながる。政府は、唯一の被爆国としてインドの核実験に厳しい姿勢をとってきたが、経済発展が著しいインドとの関係強化を優先した。また、政府は、インドが民主主義国家として政治体制が安定していることに加え、〈1〉核拡散の懸念がない〈2〉IAEAの査察受け入れを表明している〈3〉インドが経済発展に伴うエネルギー需要を原子力発電に切り替えることで温暖化防止につながる――と判断した。さらに米国に加え、仏中両国もインドとの原子力協力に踏み切るなど、インドに対する各国の対応が変化してきたことも考慮した。
米印原子力協定は2006年3月に合意され、同年末に米議会で関連法案が可決、大統領が署名した。同協定の発効には、日本やフランスなど原子力供給国グループ(NSG)の規則改正が必要となるため、インドのシン首相は06年12月に来日した際、安倍首相に対し同協定への理解と支援を求めた。安倍首相は「日本の立場は検討中だ」と述べるにとどめていた。
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20070110i201.htm
【私のコメント】
冷戦時代の米ソ二極体制から冷戦後の米国一極体制を経て、米欧亜の三極体制への移行が始まった様だ。日豪の「安全保障」共同宣言、日本政府のインド核保有容認という今日の二つのニュースは東アジア陣営へのオーストラリアとインドの参加を示しているのだろう。
東アジア地域(アセアン+日中韓+香港・台湾+インド+オーストラリア・ニュージーランド)の域内貿易は2005年には総貿易額の55.9%に達しており、NAFTAやEUに匹敵する数字となっている。地域のGDPもNAFTA、EUに近い水準に達している。東アジア地域は北米や欧州と異なり地域内の人種・民族・言語・文字・宗教・経済水準・政治制度が余りに多様であり政治統合は困難だが、域内貿易の多さを考えると近未来のドル暴落に備えてドルに代わる貿易決済用の通貨を作っておくことは有用だろう。
「ジャパン・ハンドラーズと国際金融情報」では、世界通貨がドル・ユーロ・元の鼎立になると言っているが、これは鵜呑みにできない。管理人の中田安彦氏は昨年8月に「日本は戦争をしない親米英国家になるために第二次大戦でわざと負けた」という日本の国家機密に属する話をさらりと紹介しているのだが、これはフリーの国際問題評論家であった彼が日本政府に召し抱えられたことを示していると思われる。弟子に追い抜かれてしまった衝撃で副島隆彦氏はかなり落胆している様だ。
元がドル・ユーロ・円に対抗する為の最大の弱点は、元が事実上ドルとの準固定相場状態にあり、円やユーロのような完全な変動相場制の荒波を経験していない事にある。従って、東アジア地域の基軸通貨は円以外にはあり得ないだろう。「ジャパン・ハンドラーズと国際金融情報」はその影響力の大きさ故に真実を書くことが困難なのではないかと想像する。
ただ、円が東アジアの貿易決済共通通貨にそのまま移行することは日本にとっても東アジア全体にとっても決して得ではない様にも思われる。素人考えだが、貿易決済用の円の需要が激増して円が暴騰し日本の輸出産業が壊滅しないだろうか?また、信用度の低い途上国の多いアジアの貿易決済に、信用度の高い日本の通貨だけを用いることは、為替投機による途上国の通貨危機の温床にならないだろうか?
そのように考えると、東アジア域内各国通貨の加重平均によるアジア通貨単位(ACU)を作り貿易決済に使用するという日本の国際通貨研究所の提案は非常に有用と思われる。そして、現在のユーロの様な域内での広範な通貨統合は東アジア地域の巨大な経済格差を考えると今後二十~三十年間はまずあり得ないだろうと思われる(それ以前に、スペインの不動産バブル崩壊がきっかけとなって統一通貨ユーロが崩壊する危険がある)。
1949年出版の「1984年」(ジョージ・オーウェル著)の世界地図を見るとき、それが現在日米欧政府当局が計画しているであろう世界システムの地域分割に余りに類似していることには驚かざるを得ない。大きな違いは、オーストラリアが東アジア地域に参加している点であるが、これは巨大な人口を持つアセアンや中国、インドの脅威から自己防衛する為には西太平洋・インド洋のシーパワーである日本・インドと親密な関係を築く必要があるという認識によるものだろう。場合によっては、オーストラリアは北米と東アジアの両方に所属することになるかもしれない。英国の北米と欧州の両方への所属、ロシア極東の欧州と東アジアの両方への所属もあり得るだろう。
巨大な世界帝国を築いたアングロサクソン民族とロシア民族は故郷から余りに離れた地域にまで移住してしまった。それ故、オーストラリアやロシア極東の人々は周辺の異民族と共存するために知恵を絞らねばならない。故郷を遠く離れてカスピ海北西岸に移住し、ロシア帝国と同盟してオスマントルコやスウェーデンと戦ったモンゴル系のカルムイク人の歴史を彼らは参考にすべきだろう。
「アメリカは石油だけに依存する経済から脱却しようとしている」
ことを宣言しました。いわゆる「ピークオイル」説も彼ら、国際金融資本が旗振りになって流していることがこれで、明らかになったと言えます。さらに彼は石油資源のallocation(割り当て)を提案しておりますが、これなどは来るべき、「デジタル新金本位制」に連動していく可能性があります。(デジタル金本位制については、FTの記事参照)
これは「石油にたよることだけをやめる」こととは違うでしょう。通貨がドル・ユーロ・元(円ではない残念だが・・・)の鼎立になることを見据えると同時に、エネルギー源の多様化を図るという意図でしょう。詳しくは別のところで述べたいですが、おそらくはそういうことです。
世界は「アジア・欧州・米州」を中核とした地域に多極化するでしょう。オーウェルの予言がいよいよ現実味を帯びてきたのです。
●世界の各地域経済共同体等の域内及び対外貿易シェア及び総額(PDF)
東アジア地域(アセアン+日中韓+香港・台湾+インド+オーストラリア・ニュージーランド)の域内貿易は2005年には55.9%に達しており、NAFTAの43.5%とEUの65.7%の中間の数字となっている。地域のGDPもNAFTAの14.3兆ドル、EUの13.3兆ドルに対して9.9兆ドルとかなり近い水準に達している。東アジア・北米・欧州の三極から成る世界システムが成立し始めていると言えるだろう。
●小説『1984年』(ジョージ・オーウェル著、1949年)の世界のおおまかな地図。ピンクはオセアニア、紫はユーラシア、黄緑はイースタシア。間の黄色い地域は紛争地域である。
1950年代に発生した核戦争を経て、1984年現在、世界はオセアニア、ユーラシア、イースタシアの三つの超大国によって分割統治され、間にある紛争地域をめぐって絶えず戦争が繰り返されている。作品の舞台となるオセアニアでは、思想・言語・結婚などあらゆる市民生活に統制が加えられ、市民はたえず「テレスクリーン」と呼ばれる双方向テレビジョンによって屋内・屋外を問わず、あらゆる行動が当局によって監視されている。オセアニアのイデオロギーは「イングソック(IngSoc、イングランド社会主義)」と呼ばれる一種の社会主義。旧アメリカ合衆国をもとに、南北アメリカおよび旧イギリス、アフリカ南部、オーストラリア南部(かつての英語圏を中心とする地域)を領有する。
残る超大国は、旧ソビエト連邦をもとに欧州大陸からロシアにかけて広がるユーラシア(Eurasia、イデオロギーは「ネオ=ボリシェビキズム」)、旧中国や日本を中心に東アジアを領有するイースタシア(Eastasia、イデオロギーは「死の崇拝」「個の滅却」)。どの国も一党独裁体制であり、イデオロギーにも実はあまり違いは存在しない。
これら三大国は絶えず同盟を結んだり敵対しながら戦争を続けている。北アフリカから中東、インド、東南アジア、北オーストラリアにかけての一帯は、これら三大国が半永久的に争奪戦を繰り広げる紛争地域である。
●日豪が「安全保障」共同宣言へ、米以外とは戦後初-3月に首脳会談 (ブルームバーグ) 2007年1月10日(水)11時13分
1月10日(ブルームバーグ):通商協定締結から50年目となる今年、日本とオーストラリアの両国は安全保障の共同首脳宣言を発表する見通しだ。日本が米国以外の国と安全保障の枠組みを持つのは戦後初。両国関係者が明らかにしたもので、3月上旬にジョン・ハワード首相が来日して安倍晋三首相と会談する方向で調整が進んでいる。
外務省の浜田昌良政務官は「日豪安保」の枠組み構築に向け、両国が共同首脳宣言を発表することを検討していることは「事実だ」とした上で、日本の目的はオーストラリアの持つエネルギーや食糧を含めた総合的な安全保障の枠組みの構築であり、アジア太平洋地域における平和と安定に寄与できると説明する。
マレー・マクレーン駐日オーストラリア大使はイラクへの部隊派遣や対北朝鮮政策などで「両国は非常に緊密に共同歩調を取ってきた」と述べる一方で、「だからといって軍事同盟となり得るという指摘は全くあたらない」と述べて、平和維持活動を中心に据えた共同宣言となることを示唆した。
今年3月、麻生太郎外相が訪豪してアレクサンダー・ダウナー豪外相と会談し、「両国関係の将来への発展に対する最高レベルでの意思」があると宣言。以来、両国政府はどういった形で戦略的関係を強化するかについて模索するなど、機は熟していた。
宣言は条約に準ずるが、政府の公式なスタンスを示すものとされる。その内容は、テロや海賊対策を含むシーレーン防衛などの治安・警備や両国の国連平和維持活動(PKO)や災害派遣を想定した合同演習など、平和維持的な活動を中心に据える。集団的自衛権の行使に触れないなど、強力な軍事同盟の誕生を懸念するアジアなどの諸外国に配慮する見通し。
『海洋同盟』
安全保障を専門とする拓殖大学の森本敏教授は「冷戦後のアジア太平洋地域では伝統的な脅威としての北朝鮮や中台関係に加え、非対称的脅威としてテロや自然災害などのリスクが広がっているが、同じ価値観を持つ日豪『海洋同盟』はそうしたリスクに効果的に対応できる」と評価した。そして「憲法改正によって集団的自衛権の問題が解決されれば、将来的には日米同盟を多国間同盟に発展させることが望ましい。その意味で今回の日豪間の枠組みは歴史的な第一歩だと言える」と述べた。
一方、元国防副次官でオーストラリア国立大学のヒュー・ホワイト教授は「中国と日本がアジアでの影響力を競い合っている点に注意する必要がある」とした上で、「日本がオーストラリアとの安保面での関係構築を急ぐ裏には、中国がオーストラリアを含むアジア太平洋諸国と軍事面での関係強化を進めていることに対抗しようという意図がある」と分析する。
また同教授は「この安全保障体制を通じ、日本にはアジアにおけるプレゼンスを戦略的に高めようという強い意志が感じられる。しかしオーストラリアは『日豪安保』によって日本を選んで中国を切るというより、むしろ日中両国の二股をかけたのではないか」と述べた。
米国も歓迎
長年にわたり日豪の安保面の後ろ盾となってきた米国は民主主義と市場経済を普遍的な価値として共有する日豪の関係強化を歓迎する見通し。今年3月に次官級から外相級に格上げした「日米豪戦略対話」で3カ国はアジア太平洋地域の諸問題で協調していくことを確認しており、実際に対北朝鮮政策や貿易政策など幅広い分野で足並みを揃え始めた。
現在日豪両政府は、オーストラリアのハワード首相が3月上旬にも来日する方向で調整しており、宣言の具体的な内容についてマクレーン大使は両国間で詳細を詰めている最中だとしたうえで、「過去の実績の羅列というよりは、むしろ安全保障分野で将来的にどのような協調体制を取るかに焦点を絞る」と説明している。
日豪関係に詳しい獨協大学の竹田いさみ教授は「日本外交をサポートしてくれることに加え、裏表が少なく日本人にも分かりやすいオーストラリアは組みやすい相手だ。オーストラリアにとっても政治・経済・文化など日本のあらゆるセクターと深い関係を築ける上、ミドルパワーに過ぎない自国だけではできないことも、大国日本と組めばやっていける」と分析する。
http://money.www.infoseek.co.jp/MnJbn/jbntext/?id=10bloomberg33aLnqgHGlDYC8
●日本政府がインドの核保有容認へ、経済関係を優先 (2007年1月10日3時6分 読売新聞)
政府は9日、核兵器を保有するインドに対し、民生用原子力利用への協力として、日本企業が原子力発電所建設などに参入することを容認する方針を固めた。具体的には、米国によるインドの民生用原子力利用支援やインドの核保有容認を盛り込んだ米印原子力協力協定への支持を表明することでこうした道を開く。核拡散防止条約(NPT)体制堅持を掲げてきた日本の不拡散政策の例外措置となる。政府は、安倍首相の年内の訪印を調整している。インドと国際原子力機関(IAEA)の査察に関する協議などを見極めながら、日印首脳会談で米印原子力協定に対する支持を表明する見通しだ。NPT体制は、核保有国を米英仏中露の5か国に限定し、他の加盟国は核兵器保有をできず、民生用の原子力利用も兵器転用が行われないようIAEAの厳格な査察を定めている。核兵器を保有しているインドはNPTに加盟していない。
政府はこれまで、民生用原子力利用への協力をNPT加盟国に限定してきた。インドへの協力が実現すれば例外となるだけではなくインドの核保有を事実上容認することにつながる。政府は、唯一の被爆国としてインドの核実験に厳しい姿勢をとってきたが、経済発展が著しいインドとの関係強化を優先した。また、政府は、インドが民主主義国家として政治体制が安定していることに加え、〈1〉核拡散の懸念がない〈2〉IAEAの査察受け入れを表明している〈3〉インドが経済発展に伴うエネルギー需要を原子力発電に切り替えることで温暖化防止につながる――と判断した。さらに米国に加え、仏中両国もインドとの原子力協力に踏み切るなど、インドに対する各国の対応が変化してきたことも考慮した。
米印原子力協定は2006年3月に合意され、同年末に米議会で関連法案が可決、大統領が署名した。同協定の発効には、日本やフランスなど原子力供給国グループ(NSG)の規則改正が必要となるため、インドのシン首相は06年12月に来日した際、安倍首相に対し同協定への理解と支援を求めた。安倍首相は「日本の立場は検討中だ」と述べるにとどめていた。
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20070110i201.htm
【私のコメント】
冷戦時代の米ソ二極体制から冷戦後の米国一極体制を経て、米欧亜の三極体制への移行が始まった様だ。日豪の「安全保障」共同宣言、日本政府のインド核保有容認という今日の二つのニュースは東アジア陣営へのオーストラリアとインドの参加を示しているのだろう。
東アジア地域(アセアン+日中韓+香港・台湾+インド+オーストラリア・ニュージーランド)の域内貿易は2005年には総貿易額の55.9%に達しており、NAFTAやEUに匹敵する数字となっている。地域のGDPもNAFTA、EUに近い水準に達している。東アジア地域は北米や欧州と異なり地域内の人種・民族・言語・文字・宗教・経済水準・政治制度が余りに多様であり政治統合は困難だが、域内貿易の多さを考えると近未来のドル暴落に備えてドルに代わる貿易決済用の通貨を作っておくことは有用だろう。
「ジャパン・ハンドラーズと国際金融情報」では、世界通貨がドル・ユーロ・元の鼎立になると言っているが、これは鵜呑みにできない。管理人の中田安彦氏は昨年8月に「日本は戦争をしない親米英国家になるために第二次大戦でわざと負けた」という日本の国家機密に属する話をさらりと紹介しているのだが、これはフリーの国際問題評論家であった彼が日本政府に召し抱えられたことを示していると思われる。弟子に追い抜かれてしまった衝撃で副島隆彦氏はかなり落胆している様だ。
元がドル・ユーロ・円に対抗する為の最大の弱点は、元が事実上ドルとの準固定相場状態にあり、円やユーロのような完全な変動相場制の荒波を経験していない事にある。従って、東アジア地域の基軸通貨は円以外にはあり得ないだろう。「ジャパン・ハンドラーズと国際金融情報」はその影響力の大きさ故に真実を書くことが困難なのではないかと想像する。
ただ、円が東アジアの貿易決済共通通貨にそのまま移行することは日本にとっても東アジア全体にとっても決して得ではない様にも思われる。素人考えだが、貿易決済用の円の需要が激増して円が暴騰し日本の輸出産業が壊滅しないだろうか?また、信用度の低い途上国の多いアジアの貿易決済に、信用度の高い日本の通貨だけを用いることは、為替投機による途上国の通貨危機の温床にならないだろうか?
そのように考えると、東アジア域内各国通貨の加重平均によるアジア通貨単位(ACU)を作り貿易決済に使用するという日本の国際通貨研究所の提案は非常に有用と思われる。そして、現在のユーロの様な域内での広範な通貨統合は東アジア地域の巨大な経済格差を考えると今後二十~三十年間はまずあり得ないだろうと思われる(それ以前に、スペインの不動産バブル崩壊がきっかけとなって統一通貨ユーロが崩壊する危険がある)。
1949年出版の「1984年」(ジョージ・オーウェル著)の世界地図を見るとき、それが現在日米欧政府当局が計画しているであろう世界システムの地域分割に余りに類似していることには驚かざるを得ない。大きな違いは、オーストラリアが東アジア地域に参加している点であるが、これは巨大な人口を持つアセアンや中国、インドの脅威から自己防衛する為には西太平洋・インド洋のシーパワーである日本・インドと親密な関係を築く必要があるという認識によるものだろう。場合によっては、オーストラリアは北米と東アジアの両方に所属することになるかもしれない。英国の北米と欧州の両方への所属、ロシア極東の欧州と東アジアの両方への所属もあり得るだろう。
巨大な世界帝国を築いたアングロサクソン民族とロシア民族は故郷から余りに離れた地域にまで移住してしまった。それ故、オーストラリアやロシア極東の人々は周辺の異民族と共存するために知恵を絞らねばならない。故郷を遠く離れてカスピ海北西岸に移住し、ロシア帝国と同盟してオスマントルコやスウェーデンと戦ったモンゴル系のカルムイク人の歴史を彼らは参考にすべきだろう。
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