●サルコジ仏大統領、「地中海連合」を提唱 2007年5月31日 日本経済新聞
サルコジ仏大統領が欧州の地中海沿岸国からトルコ、北アフリカまでを含む「地中海諸国連合(Mediterranean Union)」構想を提唱、各国に参加を打診し始めた。経済、環境、移民問題などで共通政策をめざし、相互の成長や治安改善に役立てる。欧州連合(EU)とアフリカとの経済協力を促すほか、トルコとの良好な関係維持も狙う。来年後半にも設立準備会合を開く。
準備会合は仏のほかイタリア、スペイン、ポルトガルなど合計7カ国が共同で開く予定。サルコジ仏大統領は「それ以外の国にも扉は閉ざさない」として、トルコに参加を打診。モロッコ、チュニジアなどにも参加を呼びかける意向だ。
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20070531AT2M3000C30052007.html
●トルコの外務大臣は、EU加盟と地中海連合加盟は別問題であり、トルコがEU加盟を諦めその代わりに地中海連合で我慢することはありえないと主張 Turkish Daily News 5/31, 2007
http://www.turkishdailynews.com.tr/article.php?enewsid=74606
●トルコはサルコジ大統領の「地中海連合」構想に怒っている 5/18, 2007 Assyrian International News Agency.
http://www.aina.org/news/2007051892846.htm
●サルコジの提案する「地中海連合」に波紋が拡がる 5/10, 2007 International Herald Tribune
<要旨>
・サルコジ大統領の提唱する「地中海連合(Mediterranean Union)」構想では、地中海を取り囲むポルトガル・スペイン・フランス・イタリア・ギリシャ・キプロス・マルタ・トルコ・レバノン・イスラエル・エジプト・リビア・チュニジア・アルジェリア・モロッコ(訳者注:地中海を取り巻く16カ国という表現も一部にあり、その場合はシリアを含むものと思われる)が評議会を形成し、持ち回りの議長のもとで定期的な最高首脳会議を開くことが提案されている。
・選挙戦中の2月に初めて言及されたが、5月9日夕方の大統領選勝利演説で「欧州とアフリカの間の架け橋となる地中海連合を協力して建設する時が来た」と発言するまではほとんど注目されなかった。
・主に経済的な連合であるとしても、トルコのEU加盟や北アフリカからEUへの不法移民などの議論の分かれる問題が必然的に関与する。また、サルコジはイスラエルとアラブの問題にも取り組むことを狙っているだろう。
・この提案への反応は、移民問題・テロ問題・環境問題を効率的に扱えるとして熱狂的支持のスペイン、用心深いもののサルコジの提案はパレスチナ問題解決のための新たな良い機会であるとして賛成のイスラエル、EU加盟を拒否するための陰謀と見なし激怒するトルコまで様々である。
・トルコ首相の外交補佐官であるEgeman Bagisは電話インタビューで、「EUへの加盟交渉を開始した国は全てが最終的に加盟しており、トルコだけが例外になれば世界の15億人のイスラム教徒に非常に悪いメッセージを送ることになる。」と主張した。
・サルコジはトルコのEU加盟に反対。
・あるフランスの外交官は、「ドイツは東方に関心を持ち、フランスは南方に関心を持つ。だからといって、独仏両国は目標とする主導権を握ることを止めるべきではない。」と語った。
・国際関係の専門家たちはこの提案を歓迎するが、近未来の実現可能性については疑念を表明する。
http://www.iht.com/articles/2007/05/10/africa/france.php
●「小アジアの国」の「カッパドキア人」 ―サルコジ仏大統領候補、TV討論でトルコを揶揄 2007年05月04日付 Radikal紙
フランス大統領選挙で、(大統領の座を)日曜日の第2回投票で争う連立与党・国民運動連合(UMP)のニコラ・サルコジ党首と社会党候補のセゴレーヌ・ロワイヤルは昨晩(2日)、2000万人が視聴したテレビの生放送の討論番組で激しく意見を闘わせた。
800万人近い態度未定の有権者の支持を呼び込もうと努めている2候補による経済、失業、治安に焦点を当てた討論では、熱のこもったトルコ論争が沸き起こった。サルコジがトルコのEU加盟反対を表明する際に用いた「カッパドキア人、アナトリア人」という言葉や、「イスラームとクルド問題をヨーロッパに持ち込まないこと」という問題認識は、(サルコジが)選挙に勝った場合、トルコ・フランス両政府の関係が後退するであろうことを示す兆候である。
「政治的ヨーロッパの擁護者」であり「際限のない拡大には反対」のサルコジは、トルコへの反対姿勢を次のように説明した:「これは民主主義やイスラームの問題ではない。トルコがヨーロッパでなく、小アジアにあることに起因している問題だ。トルコをEUの一員にさせたがっている人々は、政治的ヨーロッパの反対者だ」。
「拡大小休止」論者であるロワイヤルは、サルコジを「人々をそのような言葉でどう喝してはならない」とたしなめる一方で、トルコとの加盟交渉が始まっていることを想起させた。ロワイヤルが「その時が来ればフランス国民にも国民投票で意見を尋ねることになるだろう」と述べたのに対し、サルコジはロワイヤルを次のような言葉で論破しようと努めた:「トルコはEUに入るべきか、入らないべきか、それをおっしゃってほしい。1964年以来、トルコは引きとめられている。もう我々が彼らを必要としているのか否かを明言する時が来た。つまり我々は強大なトルコ国民に対し、EUではなく地中海連合の中心になることができるだろうと言わなければならない」。対するロワイヤルの返答はといえば、加盟交渉の開始をフランスも承認しており、この約束を守らなければならない、であった。
■「当面は小休止しよう」
サルコジが「あなたの態度は『トルコにノン』なのか」と尋ねたのに対し、「当面は小休止だが、変わるかもしれない」と答えたロワイヤルは、次のような逃げ口上を使った:「(トルコのEU)加盟は唯一の選択肢ではない。強固な協力関係、あるいは特別な関係というのもあり得る。そもそもこれらは10年後の問題だ。トルコには民主主義者の勢力もいることをお忘れにならないでほしい。彼らを支援すべきだ。トルコ国民は大きな国民で、トルコは大きな国だ。これほど無作法な言葉でトルコのような強大な文明と大きな国民に門戸を閉ざすなら、世界のバランスをも危うくすることになる。あなたの前には大きな国民がいて、もしかしたらヨーロッパに入りたいという意欲を持っているかもしれない。この問題をこれほど無作法な言葉でドアをピシャリと閉めて解決することはできない。
■「小アジアの国」
サルコジUMP党首は、今度は「カッパドキア人にヨーロッパ人であることをどのように説明するつもりなのか。カッパドキア人にヨーロッパ人であることを説明するときに、ただ1つのことをおやりになるだろう。それはイスラームを強固にすることだ」と発言。一方のロワイヤルは、「トルコは民主的で世俗的な国であり、毎日世俗主義や民主主義のためにまい進する民主主義者は支援される必要がある。最近あった世俗主義のデモをご覧なさい」と述べた。これに対しサルコジは「クルドカード」を切った::「トルコは、世俗的であれ小アジアの国だ。私はフランスの子どもたちにヨーロッパの境界がイラクとシリアであると説明することはできない。クルディスタン問題をヨーロッパの問題としたときに、我々がそれほど前に進んだことになってはいない。際限のない拡大は政治的ヨーロッパを死に追いやっている。したがってトルコ人には「共通の関係を築きましょう、貿易をしましょう、でもあなた方はEUのメンバーにはなれないでしょう。なぜならアナトリア人であってヨーロッパ人ではないからです」と言わなければならない。」
フランスのマスコミがロワイヤルの方が「攻勢」であったと判断した一方で、調査会社オピニオンウェイのアンケートは視聴者の53パーセントがサルコジを、31パーセントがロワイヤルを「説得力があった」とみなしたことを明らかにした。リベラシオン紙が「サルコ(サルコジ)は負けなかったがセゴ(セゴレーヌ)が勝った」と伝える一方、フィガロ紙は「結局サルコジは自動操縦で(特に何もせずに)存在感を示した」との評価を与えた。専門家たちの討論では、サルコジが53.5パーセント、ロワイヤルが46.5パーセントの票を得るという結果を示した最新の調査機関IPSOSのアンケートに最大で1~2パーセント影響するという見通しが出された。このこともまた、第1回投票で18パーセントの票を得たフランス民主連合のフランソワ・バイル議長と、10パーセントの票を得た極右国民戦線のジャン=マリ・ルペン党首に投票した有権者を(勝敗の)「鍵」を握る存在にしている要因である。ルペンが有権者に「棄権」を呼び掛ける一方で、これまで有権者の自由意志に任せていたバイルは昨日、「私はサルコジには投票しないだろう」と発言した。
http://www.el.tufs.ac.jp/prmeis/html/pc/News20070506_022319.html
●トルコ・イラク国境で緊張が高まる BBC NEWS 5/30 2007
http://news.bbc.co.uk/2/hi/europe/6703581.stm
【私のコメント】
5月31日付けの日本経済新聞で、サルコジ仏大統領の「地中海連合(Mediterranean Union)」構想に関する記事がある。短い記事だが、非常に重要であると思われる。
まず、日経の記事では「トルコとの良好な関係維持も狙う」としているが、実際にはトルコ側は「トルコのEU加盟を拒否するための陰謀」とみなし激怒している。日経はトルコとEUの関係悪化という欧米やトルコのマスコミで多数報道されている事実を伏せたい様だ。何か理由があるのだと想像されるが、私には見当が付かない。いずれにしろ、トルコは内政のみ成らず外交でも孤立し危機に陥りつつある。トルコ首相の外交補佐官は「EUへの加盟交渉を開始した国は全てが最終的に加盟しており、トルコだけが例外になれば世界の15億人のイスラム教徒に非常に悪いメッセージを送ることになる。」と主張しているが、北アフリカからアラビア半島までのアラブ系民族、クルディスタンからタジキスタン・アフガニスタン・パキスタン西部までのペルシャ系民族、あるいはインドネシアを中心とする海洋東南アジアのイスラム教徒たちは共に偉大な歴史と共通の文化的遺産、広大な面積と大きな人口を有しており、決してEU加盟を望んではいないと思われる。中近東北アフリカで唯一の異端児であるイスラエルも、近い将来に東欧系ユダヤ人がEUに引き取られる形で消滅すると想像され、後に残るスファラディはイエメンやモロッコなどの地域から移住した「ユダヤ教を信仰し、アラビア語を公用語としアラブ人と同様の生活風習を持つ人々」である。つまり、パレスチナ問題解決後には、地中海沿岸(アドリア海沿岸は除くが)の国民はEU・トルコ以外は全てアラブ人と言う状態になるだろう。中東工科大学のİhsan Duran Dağı 教授は「イスラエル、トルコ、モロッコといった政治的・言語的・文化的に余りに多様な国々をまとめるのは困難であり、この構想は失敗する運命にある」と主張するが、私はこの構想は成功し、地中海の北側の巨大なEUと南側の巨大なアラブ連合、トルコの東の巨大なペルシャ連合の三つの巨大組織に囲まれて孤立する小国トルコを生み出すと想像する。イラクのクルド人国家問題で米軍等と衝突してトルコが滅亡しなければ、の話だが。
トルコ問題の他にもう一つ重要なのは、この構想にはシーパワーの雄であるイギリスも米国も関与していないことである。ジブラルタルやキプロス島の軍事基地を経てイスラエル・スエズ地峡に至るイギリスの軍事的影響力は、大英帝国の時代から第二次大戦後まで維持され続けており、まさに地中海帝国と呼ぶに相応しい強大なものであった。スエズ戦争後は英国の力は低下したが米国の影響力が強まり、地中海はアングロサクソンのシーパワーの支配下に置かれ続けた。サルコジ大統領の登場と共に地中海の支配者が米英(国際金融資本=シーパワー)からフランスを中心とするラテン民族のランドパワーに交代したことを意味するのではないかと思われる。
サルコジの母方の先祖はギリシャ系のユダヤ人であることを考えると、米英を支配していたユダヤ人がフランスに乗り換えただけという見方もできなくはない。しかし、この「地中海同盟」は移民流入阻止などの点で国際金融資本=シーパワーの利益よりもEU加盟国=ランドパワーの国益を追求している様に思われる点が大きな違いだろう。
最後にもう一つ重要な点は、この「地中海連合」にはドイツもロシアも参加していないことである。IHTのフランス外交官の発言と合わせて考えると、独仏両国はアジア+アフリカの二大陸を二分割し、ドイツは欧州の東側、フランスは欧州の南側を担当することで役割分担が成立しているのだと思われる。1494年のトルデシリャス条約と1529年のサラゴサ条約でスペインとポルトガルが地球を二分割したのと同様の境界線が恐らくトルコからペルシャ湾にかけての地域に引かれていることだろう。
サルコジ仏大統領が欧州の地中海沿岸国からトルコ、北アフリカまでを含む「地中海諸国連合(Mediterranean Union)」構想を提唱、各国に参加を打診し始めた。経済、環境、移民問題などで共通政策をめざし、相互の成長や治安改善に役立てる。欧州連合(EU)とアフリカとの経済協力を促すほか、トルコとの良好な関係維持も狙う。来年後半にも設立準備会合を開く。
準備会合は仏のほかイタリア、スペイン、ポルトガルなど合計7カ国が共同で開く予定。サルコジ仏大統領は「それ以外の国にも扉は閉ざさない」として、トルコに参加を打診。モロッコ、チュニジアなどにも参加を呼びかける意向だ。
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20070531AT2M3000C30052007.html
●トルコの外務大臣は、EU加盟と地中海連合加盟は別問題であり、トルコがEU加盟を諦めその代わりに地中海連合で我慢することはありえないと主張 Turkish Daily News 5/31, 2007
http://www.turkishdailynews.com.tr/article.php?enewsid=74606
●トルコはサルコジ大統領の「地中海連合」構想に怒っている 5/18, 2007 Assyrian International News Agency.
http://www.aina.org/news/2007051892846.htm
●サルコジの提案する「地中海連合」に波紋が拡がる 5/10, 2007 International Herald Tribune
<要旨>
・サルコジ大統領の提唱する「地中海連合(Mediterranean Union)」構想では、地中海を取り囲むポルトガル・スペイン・フランス・イタリア・ギリシャ・キプロス・マルタ・トルコ・レバノン・イスラエル・エジプト・リビア・チュニジア・アルジェリア・モロッコ(訳者注:地中海を取り巻く16カ国という表現も一部にあり、その場合はシリアを含むものと思われる)が評議会を形成し、持ち回りの議長のもとで定期的な最高首脳会議を開くことが提案されている。
・選挙戦中の2月に初めて言及されたが、5月9日夕方の大統領選勝利演説で「欧州とアフリカの間の架け橋となる地中海連合を協力して建設する時が来た」と発言するまではほとんど注目されなかった。
・主に経済的な連合であるとしても、トルコのEU加盟や北アフリカからEUへの不法移民などの議論の分かれる問題が必然的に関与する。また、サルコジはイスラエルとアラブの問題にも取り組むことを狙っているだろう。
・この提案への反応は、移民問題・テロ問題・環境問題を効率的に扱えるとして熱狂的支持のスペイン、用心深いもののサルコジの提案はパレスチナ問題解決のための新たな良い機会であるとして賛成のイスラエル、EU加盟を拒否するための陰謀と見なし激怒するトルコまで様々である。
・トルコ首相の外交補佐官であるEgeman Bagisは電話インタビューで、「EUへの加盟交渉を開始した国は全てが最終的に加盟しており、トルコだけが例外になれば世界の15億人のイスラム教徒に非常に悪いメッセージを送ることになる。」と主張した。
・サルコジはトルコのEU加盟に反対。
・あるフランスの外交官は、「ドイツは東方に関心を持ち、フランスは南方に関心を持つ。だからといって、独仏両国は目標とする主導権を握ることを止めるべきではない。」と語った。
・国際関係の専門家たちはこの提案を歓迎するが、近未来の実現可能性については疑念を表明する。
http://www.iht.com/articles/2007/05/10/africa/france.php
●「小アジアの国」の「カッパドキア人」 ―サルコジ仏大統領候補、TV討論でトルコを揶揄 2007年05月04日付 Radikal紙
フランス大統領選挙で、(大統領の座を)日曜日の第2回投票で争う連立与党・国民運動連合(UMP)のニコラ・サルコジ党首と社会党候補のセゴレーヌ・ロワイヤルは昨晩(2日)、2000万人が視聴したテレビの生放送の討論番組で激しく意見を闘わせた。
800万人近い態度未定の有権者の支持を呼び込もうと努めている2候補による経済、失業、治安に焦点を当てた討論では、熱のこもったトルコ論争が沸き起こった。サルコジがトルコのEU加盟反対を表明する際に用いた「カッパドキア人、アナトリア人」という言葉や、「イスラームとクルド問題をヨーロッパに持ち込まないこと」という問題認識は、(サルコジが)選挙に勝った場合、トルコ・フランス両政府の関係が後退するであろうことを示す兆候である。
「政治的ヨーロッパの擁護者」であり「際限のない拡大には反対」のサルコジは、トルコへの反対姿勢を次のように説明した:「これは民主主義やイスラームの問題ではない。トルコがヨーロッパでなく、小アジアにあることに起因している問題だ。トルコをEUの一員にさせたがっている人々は、政治的ヨーロッパの反対者だ」。
「拡大小休止」論者であるロワイヤルは、サルコジを「人々をそのような言葉でどう喝してはならない」とたしなめる一方で、トルコとの加盟交渉が始まっていることを想起させた。ロワイヤルが「その時が来ればフランス国民にも国民投票で意見を尋ねることになるだろう」と述べたのに対し、サルコジはロワイヤルを次のような言葉で論破しようと努めた:「トルコはEUに入るべきか、入らないべきか、それをおっしゃってほしい。1964年以来、トルコは引きとめられている。もう我々が彼らを必要としているのか否かを明言する時が来た。つまり我々は強大なトルコ国民に対し、EUではなく地中海連合の中心になることができるだろうと言わなければならない」。対するロワイヤルの返答はといえば、加盟交渉の開始をフランスも承認しており、この約束を守らなければならない、であった。
■「当面は小休止しよう」
サルコジが「あなたの態度は『トルコにノン』なのか」と尋ねたのに対し、「当面は小休止だが、変わるかもしれない」と答えたロワイヤルは、次のような逃げ口上を使った:「(トルコのEU)加盟は唯一の選択肢ではない。強固な協力関係、あるいは特別な関係というのもあり得る。そもそもこれらは10年後の問題だ。トルコには民主主義者の勢力もいることをお忘れにならないでほしい。彼らを支援すべきだ。トルコ国民は大きな国民で、トルコは大きな国だ。これほど無作法な言葉でトルコのような強大な文明と大きな国民に門戸を閉ざすなら、世界のバランスをも危うくすることになる。あなたの前には大きな国民がいて、もしかしたらヨーロッパに入りたいという意欲を持っているかもしれない。この問題をこれほど無作法な言葉でドアをピシャリと閉めて解決することはできない。
■「小アジアの国」
サルコジUMP党首は、今度は「カッパドキア人にヨーロッパ人であることをどのように説明するつもりなのか。カッパドキア人にヨーロッパ人であることを説明するときに、ただ1つのことをおやりになるだろう。それはイスラームを強固にすることだ」と発言。一方のロワイヤルは、「トルコは民主的で世俗的な国であり、毎日世俗主義や民主主義のためにまい進する民主主義者は支援される必要がある。最近あった世俗主義のデモをご覧なさい」と述べた。これに対しサルコジは「クルドカード」を切った::「トルコは、世俗的であれ小アジアの国だ。私はフランスの子どもたちにヨーロッパの境界がイラクとシリアであると説明することはできない。クルディスタン問題をヨーロッパの問題としたときに、我々がそれほど前に進んだことになってはいない。際限のない拡大は政治的ヨーロッパを死に追いやっている。したがってトルコ人には「共通の関係を築きましょう、貿易をしましょう、でもあなた方はEUのメンバーにはなれないでしょう。なぜならアナトリア人であってヨーロッパ人ではないからです」と言わなければならない。」
フランスのマスコミがロワイヤルの方が「攻勢」であったと判断した一方で、調査会社オピニオンウェイのアンケートは視聴者の53パーセントがサルコジを、31パーセントがロワイヤルを「説得力があった」とみなしたことを明らかにした。リベラシオン紙が「サルコ(サルコジ)は負けなかったがセゴ(セゴレーヌ)が勝った」と伝える一方、フィガロ紙は「結局サルコジは自動操縦で(特に何もせずに)存在感を示した」との評価を与えた。専門家たちの討論では、サルコジが53.5パーセント、ロワイヤルが46.5パーセントの票を得るという結果を示した最新の調査機関IPSOSのアンケートに最大で1~2パーセント影響するという見通しが出された。このこともまた、第1回投票で18パーセントの票を得たフランス民主連合のフランソワ・バイル議長と、10パーセントの票を得た極右国民戦線のジャン=マリ・ルペン党首に投票した有権者を(勝敗の)「鍵」を握る存在にしている要因である。ルペンが有権者に「棄権」を呼び掛ける一方で、これまで有権者の自由意志に任せていたバイルは昨日、「私はサルコジには投票しないだろう」と発言した。
http://www.el.tufs.ac.jp/prmeis/html/pc/News20070506_022319.html
●トルコ・イラク国境で緊張が高まる BBC NEWS 5/30 2007
http://news.bbc.co.uk/2/hi/europe/6703581.stm
【私のコメント】
5月31日付けの日本経済新聞で、サルコジ仏大統領の「地中海連合(Mediterranean Union)」構想に関する記事がある。短い記事だが、非常に重要であると思われる。
まず、日経の記事では「トルコとの良好な関係維持も狙う」としているが、実際にはトルコ側は「トルコのEU加盟を拒否するための陰謀」とみなし激怒している。日経はトルコとEUの関係悪化という欧米やトルコのマスコミで多数報道されている事実を伏せたい様だ。何か理由があるのだと想像されるが、私には見当が付かない。いずれにしろ、トルコは内政のみ成らず外交でも孤立し危機に陥りつつある。トルコ首相の外交補佐官は「EUへの加盟交渉を開始した国は全てが最終的に加盟しており、トルコだけが例外になれば世界の15億人のイスラム教徒に非常に悪いメッセージを送ることになる。」と主張しているが、北アフリカからアラビア半島までのアラブ系民族、クルディスタンからタジキスタン・アフガニスタン・パキスタン西部までのペルシャ系民族、あるいはインドネシアを中心とする海洋東南アジアのイスラム教徒たちは共に偉大な歴史と共通の文化的遺産、広大な面積と大きな人口を有しており、決してEU加盟を望んではいないと思われる。中近東北アフリカで唯一の異端児であるイスラエルも、近い将来に東欧系ユダヤ人がEUに引き取られる形で消滅すると想像され、後に残るスファラディはイエメンやモロッコなどの地域から移住した「ユダヤ教を信仰し、アラビア語を公用語としアラブ人と同様の生活風習を持つ人々」である。つまり、パレスチナ問題解決後には、地中海沿岸(アドリア海沿岸は除くが)の国民はEU・トルコ以外は全てアラブ人と言う状態になるだろう。中東工科大学のİhsan Duran Dağı 教授は「イスラエル、トルコ、モロッコといった政治的・言語的・文化的に余りに多様な国々をまとめるのは困難であり、この構想は失敗する運命にある」と主張するが、私はこの構想は成功し、地中海の北側の巨大なEUと南側の巨大なアラブ連合、トルコの東の巨大なペルシャ連合の三つの巨大組織に囲まれて孤立する小国トルコを生み出すと想像する。イラクのクルド人国家問題で米軍等と衝突してトルコが滅亡しなければ、の話だが。
トルコ問題の他にもう一つ重要なのは、この構想にはシーパワーの雄であるイギリスも米国も関与していないことである。ジブラルタルやキプロス島の軍事基地を経てイスラエル・スエズ地峡に至るイギリスの軍事的影響力は、大英帝国の時代から第二次大戦後まで維持され続けており、まさに地中海帝国と呼ぶに相応しい強大なものであった。スエズ戦争後は英国の力は低下したが米国の影響力が強まり、地中海はアングロサクソンのシーパワーの支配下に置かれ続けた。サルコジ大統領の登場と共に地中海の支配者が米英(国際金融資本=シーパワー)からフランスを中心とするラテン民族のランドパワーに交代したことを意味するのではないかと思われる。
サルコジの母方の先祖はギリシャ系のユダヤ人であることを考えると、米英を支配していたユダヤ人がフランスに乗り換えただけという見方もできなくはない。しかし、この「地中海同盟」は移民流入阻止などの点で国際金融資本=シーパワーの利益よりもEU加盟国=ランドパワーの国益を追求している様に思われる点が大きな違いだろう。
最後にもう一つ重要な点は、この「地中海連合」にはドイツもロシアも参加していないことである。IHTのフランス外交官の発言と合わせて考えると、独仏両国はアジア+アフリカの二大陸を二分割し、ドイツは欧州の東側、フランスは欧州の南側を担当することで役割分担が成立しているのだと思われる。1494年のトルデシリャス条約と1529年のサラゴサ条約でスペインとポルトガルが地球を二分割したのと同様の境界線が恐らくトルコからペルシャ湾にかけての地域に引かれていることだろう。
またちょくちょく拝見させていただきます。
http://www.teamrenzan.com/archives/writer/omnibus/afteriraqwar.html
イギリスにはまだ打つ手があるようでっせ!
http://klingon.blog87.fc2.com/blog-entry-240.html
連山を圧倒したレッドアラート
三輪様や江田島様のようなブロガーの活躍で安倍が危機的な支持率低下です。
これからの日本もネチズンが増加すればきっと良い社会になると考えています。
これからも精力的な活動を楽しみにしております。笑いが止まりませんね!
環境立国を世界へ発信 「戦略」閣議決定
http://www.teamrenzan.com/archives/writer/omnibus/environmentstrategy.html
2007/06/03(日) 13:50 | URL | ゼルダ #wpJTckbY[ 編集]
松村将軍轟沈!
コラムニストから松村が消えた!http://www.teamrenzan.com/
三輪烈士のハンニバル論争での鋭利な攻撃に耐え切れなかったのだろうか。とにかくめでたい!
国境を越えるエリート騎兵集団を作るための格差社会を認めるなど許せなかっただよ。
それよりネットカフェ難民を救済せよ。
産官学からエリートを選抜して作ったといわれる連山も大したことはない。
この調子で読者コラムを粉砕すれば中央突破によって安部政権は瓦解するよ。
そうなれば三輪烈士や孔明先生の時代になり日本は救われます。
松村を粉砕した。勝利は目前です!
2007/06/03(日) 14:33 | URL | リネージュ #RqsQ/zIM[ 編集]
日本は己の立場をわきまえるべし
http://blog105.fc2.com/ytaka2011/