プロストワインハンデル公式ブログ「クライナー・プラッツ Kleiner・Platz」

ドイツのリューデスハイムに所在するドイツワイン専門店です。在住者ならではの新鮮な情報と個性的なワインをご紹介します。

ちょっと踏み込んだ貴腐ワインのお話

2017年08月09日 09時21分25秒 | ワインについて

こんにちは。那岐です。今頃、日本は暑い夏、台風の夏をお過ごしなのでしょうか。こちらドイツでは、今年は今のところは涼しい夏となっています。暑さ控えめで過ごしやすいのはいいのですが、ブドウの生育が少し遅れ気味なので、もしかしたら今年の収穫時期はちょっと遅めになるかもしれません。

 

それはさておき、ここ数年というもの日本の夏には帰国していない私ですが、それでもやはり日本の夏を忘れることはありません。あの、まるでスチームオーブンレンジのなかでじっくりゆっくり調理されているかのような、高い気温と高い湿度。日々、浴衣姿で涼しく過ごせればまだいいですが、ネクタイを締めてスーツを着て、満員電車に揺られる毎日。思い出すだけでどっと疲れてきます。日本の夏は体力勝負!なのではないでしょうか。

ただでさえ気温と湿度で疲れ気味なのに、さらに襲い掛かる疲労の数々。たまには休憩も必要です。

そんな日々を戦うお疲れ様にぜひお薦めさせていただきたいアイテム、それが今日のお題のあま~いドイツワイン。貴腐ワインです。

貴腐ワインはとても糖度の高いワインで、ものによってはコカ・コーラの3倍以上の甘さを誇ります。でもこの甘さ、砂糖の添加によるものではなく、ブドウの天然の甘さによるものです。あの、医療現場でもよく使われる、ブドウ糖がその正体なんですよ。なので、人体への吸収の良さが違います!疲れた身体にはキンキンによーく冷やしたこのワインを少し飲むのが、最高の体力回復となりますよ!しかもドイツの貴腐ワインは酸味もしっかりしているので甘さによるべたつきがなく、暑い時にもスッキリと気持ちよく飲むことができることもおススメできる点の一つです。この程よい酸と甘みのバランスは世界中探してもここ、ドイツでしか見ることのできない特徴なんです。

<当店でもおなじみの貴腐ワイン>

 

さてこの貴腐ワイン、いったいどうやって出来るのかご存知でしょうか?

貴腐ワインとはその名の通り、「貴腐菌」と呼ばれるカビの一種が付着したブドウから出来上がります。この貴腐菌、日本では灰色カビとも呼ばれるようですが、世界的にはBotrytis (ボトリティス) という名前が一般的です。国によってはワインの名前がそのままこのBotrytisである場合もあるくらいです。

このBotrytis、特別なカビというわけではなくて、いわゆる常在菌と呼ばれる、普通にそこらの空気中に浮遊している菌だったりします。なので、ブドウ以外にもイチゴなどの甘さが強く、果皮がそこまでしっかりしていない果物全般で感染の可能性があります。いくら貴腐、と言ってはみてもそこはやはりカビなので、特別なワインを造る場合以外では普通にやっかいな害病であることがこのカビの罪なところですよね。

Botrytisが付着したイチゴ。Wikipediaより 

<イチゴもBotrytisにかかります。Wikipediaより>

 

<Botrytisがついたブドウ。ここから高貴なワインが造られます。https://bawinetour.wordpress.com/2014/03/12/what-does-botrytis-cinerea-has-to-do-with-wine/>

Botrytisに感染した果実は、Botrytisが活動するための栄養源として実の中の糖分を使われてしまう一方で、水分も蒸発させられてしまいます。この結果、症状が進んだ果実はまるで干からびたような外観になってしまうのです。貴腐ワインのご説明をする時に、よく干しブドウのようになったブドウから、というフレーズが出てくるのはこれが理由ですね。

あれ、でもBotrytisに糖分を使われてしまったらその実は甘くないんじゃないの?という疑問、お持ちじゃないですか?実はそこがこのカビのすごいところなんです!

このカビ(もうそのままカビって言っちゃいますね (笑))、果糖のなかでもグルコースといわれる種類の糖分のみを栄養として使うんです。でも、果糖は実はグルコースとフルクトースといわれる二つの種類の糖分から成り立っています。なので、Botrytisが成長した果実の中には圧倒的に多くのフルクトースが残ることになります。そしてこのフルクトース、グルコースの数倍甘いんです。つまり、普段はグルコースと水分によって希釈されている甘さが、Botrytisによってフルクトースだけになることでぎゅ、ぎゅ、ぎゅ、ギューッと凝縮されるのです!!さらにさらに、フルクトースはアルコールになりにくい糖なので、絞ったジュースがワインになる過程でも甘さが減りにくいんです。しかもそもそも果実に残った水分量が少ないので、大量のブドウを絞らないといけません。そう、もうお分かりですよね。なんで貴腐ワインがあんなに甘いのか。

こんなにも凝縮に凝縮を重ねたワインが体力回復に効かないわけがない!

ぜひ皆さん、まだまだ続く暑い日々、残暑に悩む熱帯夜。身体が疲れてきてしまったな、と思った時にはこのワインを試してみてください。きっと疲れだけでなく、心まで軽くなると思いますよ!

ちなみにドイツの貴腐ワインはこちらの当店インターネットショップでも扱ってます。

那岐でした。

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