エミール・ガボリオ ライブラリ

名探偵ルコックを生んだ19世紀フランスの作家ガボリオの(主に)未邦訳作品をフランス語から翻訳。

IV 2

2020-10-22 14:15:16 | 地獄の生活

社交界の女性のような物腰、多岐に亘っているように見える教養、そして素晴らしい音楽の才能をどこで手に入れたのか? 彼女に関するすべては憶測の対象でしかなかった。彼女が名刺に印刷させている聖書とピレネー山脈のガイドブックから取られたかのようなその名前、リア・ダルジュレ、に至るまで。

ともあれ、人々は彼女の舘に殺到した。ヴァロルセ侯爵とフォルチュナ氏が彼女の名前を口にしていたまさにそのとき、六台の馬車と供回りの一行が彼女の門の前に停められ、サロンは人で一杯だった。時刻は真夜中の十二時半だったが、週に二度の集いに人々が続々と詰めかけ、絹の靴下を穿いた下男が大声で次々と客の到着を告げていた。

「ド・コラルト子爵様!……パスカル・フェライユール様!」

ゲームに参加している者たちのうちで、わざわざ顔を上げる者は少なかった。が、一人の老人が呟いた。

「よし、また二人来たな」

四、五人の青年たちが声を張り上げた。

「おい、フェルナンじゃないか! よく来たね、君!」

ド・コラルト氏はまだ非常に若く、素晴らしく見映えのする青年だった。彼の美貌はいささか不安を掻き立て不健全な印象を与えるほどであった。髪は濃い金髪、優しく大きな黒い目を持ち、女たちは彼の波打つ髪と青白い肌の色を羨ましく思ったに違いない。彼の服装は、殆ど媚態に近い類まれな洗練の度合いを示していた。折り返された襟もとから首筋が覗き、薔薇色の手袋が彼の繊細でしなやかな手にぴったり収まっていた。彼は暖炉のそばのソファにくつろいで座っているマダム・ダルジュレに近づいた。彼女は二人の重々しく威厳のある、上品な様子の禿げの紳士と話をしていた。

「まぁ、なんて遅くにいらしたこと、子爵!」と彼女は言った。「今日は一体何をしてらしたの? 森でお見かけしたような気がするんですけど。ヴァロルセ侯爵のドッグカート(軽装二輪馬車。背中合わせの座席が二つあった)でね」

ド・コラルト氏の頬に軽い赤みが射し、彼はそれを隠すためであろう、返事をする代わりに自分と一緒に入ってきてその名を告げられた男の手を取り、マダム・ダルジュレの前まで連れてきた。

「ご紹介いたしましょう、マダム。私の素晴らしい友人の一人、パスカル・フェライユール氏です。弁護士で、そのうち彼の名前をお聞きになることと思います」

「あなたのお友達でしたら、いつでも歓迎いたしますわ、子爵」とマダム・ダルジュレが答えた。

しかし深々とお辞をお辞儀したパスカルが頭を上げる前に、彼女は向きを変え、中断された会話を再開していた。この新参者はしかしほんのちらりと見ただけでその真価が分かるような男ではなかった。この男は二十四、五歳で、髪は褐色、背が高く、その身のこなしには、完璧に調和の取れた筋肉と並々ならぬ逞しさがもたらす自然な優雅さが表れていた。目鼻立ちは整ってはいなかったが、全体的に感じが良く、力強さと正直さ、そして善良さが発散していた。このような誇り高く秀でた額を持ち、きらきら光る目でまっすぐ人を見、赤くて形の整った才気煥発そうな唇の男が並みの人間である筈はない。10.22

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