それでもド・フォンデージ夫妻言うところの『可愛い大切な娘』がダイヤモンドを持参しないことを治安判事が彼らに伝えると、彼らの顔に隠しようのない渋面が浮かんだ。
「ふんっ!」と将軍は不満を思わず口にした。「こういうところにあの父親らしさがよく表れておる! 慎重に処すべきというわけだな。間違いない!まぁったく御丁寧なことだ。やりすぎだ、むしろ」
しかし治安判事が、おそらく裁判所ではダイヤモンドを返却する決定がなされるであろう、と話すと、彼の顔は晴れやかになり、自らマルグリット嬢のトランクや身の回り品などの荷物を監督するために階下に降りていった。そこではカジミール氏が邸の荷馬車の一台に荷物を積み込ませているところであった。
やがて出発の時が来た。マルグリット嬢は召使いたちの別れの挨拶に応えた。彼女から解放されることに召使いたちは皆大喜びだった。マルグリット嬢は馬車に乗り込む前、このド・シャルース邸という豪華な住居に、最後にもう一度ゆっくりと苦痛を伴う視線を送った。ここを彼女は自分の家と呼ぶ権利があると思っていたのに、今はここを立ち去り、おそらくもう二度と戻ることはないであろう……。
第一部 完
ここでしばらくお休みをいただきます。
第二部は「マダム・ダルジュレ」というタイトルです。どうぞお楽しみに。