「それが彼女の罪だなんて、私が言いましたか? いいえ、そんなことは言っていません。ああ神様、ただ祈るのみです。お前が決して明かされることのない秘密の過去を持つ娘を選んだことを後悔する日が来ないことを!」
パスカルの顔は蒼白になった。
「お、お母さん……」と言う彼の声は震えていた。
「私が言っているのはね」と母親は冷ややかな口調で言った。「お前はマルグリット嬢の過去を知ることは決してないだろうということよ。彼女がお前に話すこと以外はね。あのヴァントラッソンの下品で勝手な決めつけをお前も聞いたでしょう……彼女はド・シャルース伯爵の娘ではなく愛人なのだという……。これから邪悪な心を持つ者たちがどんな卑劣な罠をお前に仕掛けてくるか、誰にも分からない……。もしももしもお前に疑いの気持ちが湧いてきたら、お前は何に頼るの? ……マルグリット嬢の言葉?……それだけで済むの?……今のところはそうでしょうけれど……でももっと後になってからだったら! 私は自分の息子の妻が、変な疑いなど掛けられようのない人であって欲しいの……ところが彼女の人生は、どこを取っても悪質な中傷の格好の餌食になりそうなことばかり……」
「何だって言うんです! 僕は中傷なんか気にしませんよ! 彼女に対する僕の信頼はびくともしません。お母さんが言い立てるマルグリットへの非難は、僕の目には彼女への賛美としか映りません……」
「パスカル!」
「彼女が不幸な人生を歩んできたからという理由で、彼女を拒否せよと言うんですか。彼女が生まれてきたことが彼女の罪だと断罪せよと……彼女の母親が軽蔑すべき女だから、僕も彼女を軽蔑すべきだと! まさか!僕たちはもはや野蛮な偏見の時代を生きているのではありませんよ。母親の過ちの犠牲として生まれてきた私生児たちが、排斥される運命を辿るのは当然だなどと……」
しかしフェライユール夫人の頭に沁みついた考えは、いかなる論理にも揺るがなかった。
「私は議論をするつもりはありませんよ、パスカル」と彼女は息子の言葉を遮った。「でも、用心なさい……欲求に身を任せて出来た子供たちに責任はない、と言ってしまうと、女を義務に縛り付けている最も強い絆をお前は断ち切ることになるのよ。もし貞節と徳を守る女の息子が、淫らな女の息子に対して何の優位も持てないのであれば、子供のことだけを思って義務を守る側の女たちはこう言うでしょう。『義務など守って何になる!』と……」5.3
パスカルの顔は蒼白になった。
「お、お母さん……」と言う彼の声は震えていた。
「私が言っているのはね」と母親は冷ややかな口調で言った。「お前はマルグリット嬢の過去を知ることは決してないだろうということよ。彼女がお前に話すこと以外はね。あのヴァントラッソンの下品で勝手な決めつけをお前も聞いたでしょう……彼女はド・シャルース伯爵の娘ではなく愛人なのだという……。これから邪悪な心を持つ者たちがどんな卑劣な罠をお前に仕掛けてくるか、誰にも分からない……。もしももしもお前に疑いの気持ちが湧いてきたら、お前は何に頼るの? ……マルグリット嬢の言葉?……それだけで済むの?……今のところはそうでしょうけれど……でももっと後になってからだったら! 私は自分の息子の妻が、変な疑いなど掛けられようのない人であって欲しいの……ところが彼女の人生は、どこを取っても悪質な中傷の格好の餌食になりそうなことばかり……」
「何だって言うんです! 僕は中傷なんか気にしませんよ! 彼女に対する僕の信頼はびくともしません。お母さんが言い立てるマルグリットへの非難は、僕の目には彼女への賛美としか映りません……」
「パスカル!」
「彼女が不幸な人生を歩んできたからという理由で、彼女を拒否せよと言うんですか。彼女が生まれてきたことが彼女の罪だと断罪せよと……彼女の母親が軽蔑すべき女だから、僕も彼女を軽蔑すべきだと! まさか!僕たちはもはや野蛮な偏見の時代を生きているのではありませんよ。母親の過ちの犠牲として生まれてきた私生児たちが、排斥される運命を辿るのは当然だなどと……」
しかしフェライユール夫人の頭に沁みついた考えは、いかなる論理にも揺るがなかった。
「私は議論をするつもりはありませんよ、パスカル」と彼女は息子の言葉を遮った。「でも、用心なさい……欲求に身を任せて出来た子供たちに責任はない、と言ってしまうと、女を義務に縛り付けている最も強い絆をお前は断ち切ることになるのよ。もし貞節と徳を守る女の息子が、淫らな女の息子に対して何の優位も持てないのであれば、子供のことだけを思って義務を守る側の女たちはこう言うでしょう。『義務など守って何になる!』と……」5.3