「ええ、そうよ!」
彼女は一瞬怯んだかのように見えたが、ややあって言った。
「お前は私に言いましたね? マルグリット嬢の教育は幼少時に捨てられたことによって損なわれはしなかったって……」
「ええ、その通りです」
「彼女は勇気を持って一定の教育を受けることを選んだ、と?」
「マルグリットは高い能力を持った子女が四年間の教育で得られることのすべてを身に着けています。彼女の境遇が著しく不遇だったとき、勉強だけが彼女の唯一の避難場所であり、安らぎの場だったのですから……」
「彼女がお前に手紙を送ってきていたとしたら、それはフランス語で書かれたものでしょうけど、綴りの間違いが一杯あったのではないこと?」
「そんな、まさか!」とパスカルは叫んだ。
ある考えが閃いたので、彼は口をつぐみ、自分の部屋へと走って行った。やがてすぐ戻ってきて、手にした手紙の束をテーブルの上に投げ出し、言った。
「さぁ、お母さん、読んでください!」
フェライユール夫人はゆっくりした動作で眼鏡をケースから取り出し、束ねられた豊かな灰色の髪の下に差し込み、低い声で読み始めた……。それは長い時間だった。
テーブルに両肘をつき、顔を両手で挟んでパスカルは母の顔に浮かぶどんなに僅かな印象も逃すまいと全神経を集中させた。
明らかに彼女は驚いていた……。マルグリット嬢からの手紙の中にこれほどまでに高尚な感情が吐露されているとは思っていなかったのだ。彼女自身に引けを取らないほどの精神性、そして彼女自身の偏見のこだまさえ、そこには表れていた……。というのも、マルグリット嬢の考えはフェライユール夫人のそれと奇妙に一致するものだったからだ。何度も彼女は自分の出生と過去が、彼女とパスカルの間に大きな溝を作っているのではないかという悩みを打ち明け、かの老治安判事が彼女の身の上話を聞いた後に言ってくれた言葉に慰められたと書いていた。『もし私に息子があれば、貴女のような方に愛されることを誇りに思います』という。
やがてすぐに、フェライユール夫人が心を動かされていることは明らかになった。彼女の表情は優しくなり、一度など眼鏡を持ち上げ涙をそっと拭ったりしたので、パスカルの心は喜びに弾んだ。
「これらの手紙は素晴らしいわ」と彼女ははっきりと言い切った。「修道女様に育てられただけの娘がこれほどの気高い感情を表現できるなんて、かつてないことだわ……ただ……」
彼女は言葉を止めた。息子の気持ちを傷つけたくないと慮ってのことだったろうが、パスカルに促され、彼女は言葉を続けた。
「ただ、これらの手紙がお前に宛てて出されたという点だけが過ちね、パスカル」
しかし、これが彼女の手の施しようのない頑固さから来る最後の抗議であった。
「今度は、お前にちょっと待って貰うわ。母を裁く前に!」5.24
彼女は一瞬怯んだかのように見えたが、ややあって言った。
「お前は私に言いましたね? マルグリット嬢の教育は幼少時に捨てられたことによって損なわれはしなかったって……」
「ええ、その通りです」
「彼女は勇気を持って一定の教育を受けることを選んだ、と?」
「マルグリットは高い能力を持った子女が四年間の教育で得られることのすべてを身に着けています。彼女の境遇が著しく不遇だったとき、勉強だけが彼女の唯一の避難場所であり、安らぎの場だったのですから……」
「彼女がお前に手紙を送ってきていたとしたら、それはフランス語で書かれたものでしょうけど、綴りの間違いが一杯あったのではないこと?」
「そんな、まさか!」とパスカルは叫んだ。
ある考えが閃いたので、彼は口をつぐみ、自分の部屋へと走って行った。やがてすぐ戻ってきて、手にした手紙の束をテーブルの上に投げ出し、言った。
「さぁ、お母さん、読んでください!」
フェライユール夫人はゆっくりした動作で眼鏡をケースから取り出し、束ねられた豊かな灰色の髪の下に差し込み、低い声で読み始めた……。それは長い時間だった。
テーブルに両肘をつき、顔を両手で挟んでパスカルは母の顔に浮かぶどんなに僅かな印象も逃すまいと全神経を集中させた。
明らかに彼女は驚いていた……。マルグリット嬢からの手紙の中にこれほどまでに高尚な感情が吐露されているとは思っていなかったのだ。彼女自身に引けを取らないほどの精神性、そして彼女自身の偏見のこだまさえ、そこには表れていた……。というのも、マルグリット嬢の考えはフェライユール夫人のそれと奇妙に一致するものだったからだ。何度も彼女は自分の出生と過去が、彼女とパスカルの間に大きな溝を作っているのではないかという悩みを打ち明け、かの老治安判事が彼女の身の上話を聞いた後に言ってくれた言葉に慰められたと書いていた。『もし私に息子があれば、貴女のような方に愛されることを誇りに思います』という。
やがてすぐに、フェライユール夫人が心を動かされていることは明らかになった。彼女の表情は優しくなり、一度など眼鏡を持ち上げ涙をそっと拭ったりしたので、パスカルの心は喜びに弾んだ。
「これらの手紙は素晴らしいわ」と彼女ははっきりと言い切った。「修道女様に育てられただけの娘がこれほどの気高い感情を表現できるなんて、かつてないことだわ……ただ……」
彼女は言葉を止めた。息子の気持ちを傷つけたくないと慮ってのことだったろうが、パスカルに促され、彼女は言葉を続けた。
「ただ、これらの手紙がお前に宛てて出されたという点だけが過ちね、パスカル」
しかし、これが彼女の手の施しようのない頑固さから来る最後の抗議であった。
「今度は、お前にちょっと待って貰うわ。母を裁く前に!」5.24