それだけでなく、私の周りで話されているのは、いかにして全ての財産を兄に継がせ、誉ある家名を維持するか、それに、いかにして持参金なしで私との結婚を受け入れてくれるどこかの老貴族を見つけるか、あるいは、修道院に入りたいと私の口から言わせるか、ということばかりだった。そういう修道院は哀れな貴族の娘にとっての避難場所でもあり、牢獄でもありました……。
私は自分の許されざる過ちを弁解しようとしているのではありません。ただ経緯を述べているのです……。
私は自分が世の中で一番惨めな存在だと思っていました。実際、そうだったと思います、自分でもそう信じていたのですから。そんなとき私はアルチュール・ゴルドンに出会ったのです。あなたの父の……。
彼を初めて見かけたのは、ド・コマラン伯爵家で催された宴でのことでした。一介の遊び人である彼がどのようにして、あのような特権に固執する閉鎖的な集まりに入り込むことができたのか、私には今もって分かりません……。
ただ一つあまりにもはっきりしているのは、私たちの目が合ったその瞬間、私の心は底の底まで掻き乱され、私はもう自分が自分でなくなったように感じてしまったのです。
ああ、神様はどうして人間の顔にその魂が映し出されるようにお作りにならなかったのでしょう!
心の底まで腐りきっていて、どうしようもない偽善者だった彼の顔からは高貴さと正直さしか感じられなかった。悲しげな重々しさがあり、運命を甘んじて受け入れることをしない人間の魅力があった。それにどこか謎めいて悲劇的な雰囲気が全身から漂っていた。
それというのも、そのとき既に彼は荒れ狂う嵐のような経験を経て人間が変わってしまっていたからだった……。彼はまだ二十六歳にもなっていなかったけれど、奴隷船の船長をして、メキシコで戦い、政治の名のもとに略奪や殺人を犯すならず者集団の頭だったのです。
彼を一目見て私がどんな強い印象を受けたか、彼はすべてお見通しだった。それから二度、社交界の集まりで彼を見かけたけれど、彼は私と話そうとはしなかった。私を避けるような素振りも見せたけれど、離れたところに立って燃えるような目で私をじっと観察し、彼の欲望と意志の力で私の心の中に入り込もうとしているかのようだった……やがて彼は私に手紙を寄こしたのよ。ある日召使から見慣れぬ筆跡の手紙をこっそり手渡されたとき、それが彼からのものだと私はすぐに分かったわ。私は怖くなって、最初に浮かんだ考えは、それを誰かに見て貰うことだった。けれど、母のことは敵だと思っていたから、母ではなく父のところへ持っていった。でも父はいなかった。それで私はその手紙を取っておくことにしたけれど、それを読んでしまい、返事を書いた……そして彼は更に返事をくれた……。1.25
私は自分の許されざる過ちを弁解しようとしているのではありません。ただ経緯を述べているのです……。
私は自分が世の中で一番惨めな存在だと思っていました。実際、そうだったと思います、自分でもそう信じていたのですから。そんなとき私はアルチュール・ゴルドンに出会ったのです。あなたの父の……。
彼を初めて見かけたのは、ド・コマラン伯爵家で催された宴でのことでした。一介の遊び人である彼がどのようにして、あのような特権に固執する閉鎖的な集まりに入り込むことができたのか、私には今もって分かりません……。
ただ一つあまりにもはっきりしているのは、私たちの目が合ったその瞬間、私の心は底の底まで掻き乱され、私はもう自分が自分でなくなったように感じてしまったのです。
ああ、神様はどうして人間の顔にその魂が映し出されるようにお作りにならなかったのでしょう!
心の底まで腐りきっていて、どうしようもない偽善者だった彼の顔からは高貴さと正直さしか感じられなかった。悲しげな重々しさがあり、運命を甘んじて受け入れることをしない人間の魅力があった。それにどこか謎めいて悲劇的な雰囲気が全身から漂っていた。
それというのも、そのとき既に彼は荒れ狂う嵐のような経験を経て人間が変わってしまっていたからだった……。彼はまだ二十六歳にもなっていなかったけれど、奴隷船の船長をして、メキシコで戦い、政治の名のもとに略奪や殺人を犯すならず者集団の頭だったのです。
彼を一目見て私がどんな強い印象を受けたか、彼はすべてお見通しだった。それから二度、社交界の集まりで彼を見かけたけれど、彼は私と話そうとはしなかった。私を避けるような素振りも見せたけれど、離れたところに立って燃えるような目で私をじっと観察し、彼の欲望と意志の力で私の心の中に入り込もうとしているかのようだった……やがて彼は私に手紙を寄こしたのよ。ある日召使から見慣れぬ筆跡の手紙をこっそり手渡されたとき、それが彼からのものだと私はすぐに分かったわ。私は怖くなって、最初に浮かんだ考えは、それを誰かに見て貰うことだった。けれど、母のことは敵だと思っていたから、母ではなく父のところへ持っていった。でも父はいなかった。それで私はその手紙を取っておくことにしたけれど、それを読んでしまい、返事を書いた……そして彼は更に返事をくれた……。1.25