僕にはその財産が必要だし、手に入れて見せますよ。だから、僕の言うことを聞いて、一番手っ取り早いのは貴女が自発的に僕を認知してくれることなんです。というわけで、さぁ、そうしますか? しない?……一度、二度、三度、どうです? やはり駄目! はい落札! 明日には印紙を貼った書類を受け取ることになりますよ……では、これで、失礼します」
彼は実際別れのお辞儀をし、昂然と立ち去ろうとした。しかしドアノブに手を掛けたとき、マダム・ダルジュレが身振りで彼を押し留めた。
「最後にもう一言だけ、いいこと?」彼女は喉を締めつけられたような声で言った。
息子の方は振り返ることすらせず、苛立ちを隠そうともしなかった。
「何ですか一体?」
「最後に一言、警告しておくわ。おそらく裁判所はあなたの主張を認める判決をくだすでしょう。私は兄からの相続権を与えられるでしょうが……このことをよく覚えておきなさい。あなたも私もその財産を遣うことは出来ないということを」
「ほほう! どうしてそうなるんです?」
「遺産は私のものかもしれないけれど、その管理はあなたの父親がすることになるからよ」
ウィルキー氏は飛び上った。
「僕の父親!」と彼は言った。「そんな、あり得ない!」
「でも、そうなのよ。あなたも疑うことはできなかったでしょうに。あなたがお金欲しさに心を奪われて私に尋ねることを忘れたりしなければ。あなたは自分が私生児だと思っていたかもしれないけれど、ウィルキー、それは間違いよ。あなたは嫡出子なの。私は結婚していたのよ……」
「まさか!」
「そして私の夫、あなたの父親は死んではいません。夫が、あなたと同じように恫喝するためにここに来ていないのは、私が居所を知られないようにしていたからよ。この十八年間、私たちがどうなったか知らないでいるわ。でもどこかで彼は見張っている。それは間違いないわ。ド・シャルースの財産を巡る裁判の噂を聞いた途端、彼は馳せ参じるでしょう。自分の権利を主張するために。彼が一家の共同財産を掌握する家長よ。私じゃない。あなたでもない。ああ、それを聞いて不安になったわね。彼がどれほど激しい金銭欲の持ち主か見れば分かるわ。二十年間貧乏の中で待たされたために欲望が更に拍車を掛けられていることでしょう。運を天にまかせることね……貪欲さにかけては彼はあなたの敵じゃない……いつの日か、母親からのしみったれた二万フランが有難かったと思う日が来るかもしれないわよ……」3.15
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