その住所の一覧を見せて貰えないかと彼女は治安判事に頼んだ。そして嬉しいことに、Fの項目に次のような記載事項を見つけた。
『フォルチュナ(イジドール)、よろず相談屋、ラブルス広場二十八番地』
「ああ、これでパスカルが見つけられると確信が持てましたわ!」と彼女は叫んだ。
今一度判事にお礼を述べた後、心に生まれた大きな希望を隠し、出来る限り打ちのめされた様子を装って彼女は自分の部屋に戻っていった。
「まぁ何て長く掛かったんでしょう!」とド・フォンデージ夫人が言った。
「いろいろとご説明しなければならないことがあったものですから」
「辛い目に遭うわね、可哀想に!」
「ほんとうに酷いものですわ……」
この言葉はごく自然に、夫人の先ほどからの忠告へと話を戻すきっかけとなった。しかし、マルグリット嬢の方でもそう簡単には説得されず、さんざん異議を唱え、長いこと押し問答をした挙句、ついにド・フォンデージ夫妻の好意を有り難く受け入れ、その保護のもとに身を寄せさせていただきますと宣言した。
但し、いくつかの条件を主張した。まず経済的負担を掛けさせたくないので自分の滞在費を支払うこと……。それから自分付きの女中であるマダム・レオンと離れることは耐えられないので、彼女を引き続き身近に置いておきたい、と。
マダム・レオンは二人のやり取りをその場で聞いていた。一時期、マルグリット嬢が自分の素行に不審を抱いているのではないかと疑ったこともあったが、今やそんな疑いはけし飛んでしまった。彼女は内心、自分はうまくやってのけたものだと満足さえしていた。
すべての事項が了解され、決定され、接吻で締めくくられると、ちょうどそのとき、きっかり四時であったが、ド・フォンデージ氏が姿を現した。
「ああ、あなた!」と妻は彼に向かって叫んだ。「なんという幸せでしょう! 我々には娘が出来ましたのよ!」
この知らせを聞いてようやく彼は立ち直ることができた。墓地でド・シャルース伯爵の棺の上にスコップで土が被せられるその重々しい音を聞いたとき、彼は卒倒しそうになり、その恐ろし気な髭に似合わぬ気弱さは居合わせた人々を大いに驚かせたのだった。
「おお、そうかそうか! それは願ってもない幸せじゃ!」と彼は答えた。「じゃが言っておくが、わしは端からこの可愛い娘の気持ちは分かっておったぞ」