ショッピングの途中、お腹が空いて、アピア地下街のイタリアントマトに入った。
何か本でも持ってくれば良かったな~と、手持ち無沙汰に「チゲ味スープご飯」を待っていたら、お隣の席から覚えのある名が聞こえてきた。
それは結構珍しい名というか苗字で、私のご近所に一軒ある。
それで、ついつい私の神経がそちらに集中されたとしても、責められないよね
話していたのは70代と思しき二人の女性。
共通の知人の近況について話しているらしい。
内心ちょっと罪悪感を憶えながら聞き耳をたてると、
「ほら、〇〇さん、下の名前は××さんだったかな。△駅前の□マンションに住んでいたでしょ」
「ああ、あの〇〇さんね、息子さんが●●大学へ行った~」
あ、それなら、ご近所さんじゃないわと、ちょっとほっ
そのとき私にも連れがいれば、そこで自分達のおしゃべりに戻って、隣席のことなど忘れただろう。
でも、あいにく私は一人、寂しい一人ご飯の身だった。
そんな時、一度立てた聞き耳はそう簡単には戻せないのよ。
彼女達のおしゃべりは続き、話題に上っている知人のプライバシーが、更に年齢、勤めていた会社、今患っている病気まで、次々と明かされていく。
これで、電話番号がでてきたら完璧だ。
知り合いの中には、同姓の人や、似た境遇の人もいるだろうし、忘れていることも多いから、、あれこれ条件を照らし合わせて、お互いに同じ人のことを話していることを確認しているのだと思う。
だけど、ちょっと待ってよ~
そりゃ、札幌は広いから、その人の知り合いがたまたま近くにいるなんてことはそうないと思うけど、「壁に耳あり障子に目あり」というじゃない。
まして、お隣の席の私は、お耳をピンと立てているのよ。
人間長いこと生きていると、知り合いは数知れず、話のネタに事欠かないのだろう。
幸い電話番号までは出てこないで、お二人の会話は次のターゲットに移っていく。
三人分ほど聞いたところで、どっと疲れてしまった。
ちょっぴり自己嫌悪を感じながら、そそくさと店を出た。
それにしても、井戸端会議恐るべし。
個人情報保護法の何と無力なことよ。
だけど、他人のことは言えない。
他人の噂話はおしゃべりに欠かせない。
噂話と言うと聞こえが悪いけど、今風に言えば情報交換だ。
考えたことはなかったけれど、私たちも似たような会話を交わしているい違いない
気をつけなくては。
これからは、周囲を気にしよう。
それから、せめて、フルネームを出すのはやめよう。
固く自分を戒めた私だった。