ネイビーブルーに恋をして

バーキン片手に靖國神社

艦橋(PILOTHOUSE)〜空母「ロナルド・レーガン」見学

2016-03-03 | 軍艦

「ロナルド・レーガン」の艦橋てっぺんから海面までの高さは、
なんとビル20階分あるそうです。
前回甲板までを「ビルの5階」と書いてしまったのですが、
それならば少なくとも8階分はあることになりそうですね。

しかし、それほど高く見えないのは、とにかく甲板が広いからです。

武器としての原子力空母が恐ろしいのは、この巨大なものを動かす動力が
原子力であるため、「給油」は要らず、一旦港を出たら
理論上は20年間、海上を航行し続けることができるということです。


我が日本で、原発をなくせやれなくせそれなくせと騒ぐ人は(例:宮崎駿、坂本龍一)
それなりに「ひとりの地球市民として」思うところがあるのでしょうが、
その団体の後ろにどうして日本人でない「もの」がくっついてくるのかについては、
明らかにその正体が日本から力を削ぎたい「敵」だからだとわたしは思っています。

原子力は国の「力」であるからです。
たとえば原子力によって給油が全く要らない戦闘艦。
これが敵にとってどれだけ恐ろしいものであるか。

「ちょっと待て、先代のジョージ・ワシントンが接岸中給油をしているのを見たぞ」

とおっしゃる方、あなたの見たのは決して間違いではありません。
原子力空母も給油をします。
ただしそれは、船のためでなく、艦載機のための油です。
あたりまえのことだけど、今回改めてそれを知り、軽くショックを受けたわたしです。

ちなみにこの1140万リットルの油、(プリウスなら地球を4200周走れる量)
空母のあちこちの貯蔵場所にパイプで送られますが、このバランスが悪いと
船が傾いてしまうことになるので、それを制御する専門の部署まであります。



階段を何回も折り返してたどり着いたのがここ。
アイランドのどこかと言いますと・・・・、



調べたところ、三重塔は下から

プリフライ(プライマリー・フライトコントロール)

航海艦橋

空母打撃群の司令官部用のフラッグブリッジ

という順番に積み上がっています。(丸いブースは何かわからず)

ということは、我々は上から2番目の航海艦橋に上がってきたようです。

ちなみに、このプリフライは、例のエアボスとミニボスが勤務する所で、
航空作業が行われている時には甲板にいる450名もの乗員を
管制し統制する役目を担っています。

この際、一人一人の作業は非常に単純なものですが、それが450名となると、
各自動きが網の目のように組み合わさって、淀みない一つの目的、
ーこれは空母という戦闘艦の存在意義でもありますが、

「航空機を離艦させ、着艦させる」

という任務が初めて果たせるのです。

今回ちゃんと甲板が見られなかった分ここで話しておくと、
新型空母が出るたびに同型艦であっても大幅に仕様を変えることがあり、
たとえばRRの着艦フックは通常3本のところ2本しかないそうです。

2本でも十分、という意味なのだと思いますが、着艦するパイロットも
甲板はほとんど見ておらず、彼らは目の前のスクリーンに出てくる図形を、
停止線に合わせることだけに集中しているからあまり関係ないのだとか。


この時の乗員の説明によれば、やはり空から見る空母はこれだけ大きくても
まるでハガキのように小さく見えるそうです。

パイロットも実際の着艦はスクリーンで行うシミュレータや陸上での練習とは
全く違う緊張を強いられるものだそうですが、着艦前にタッチアンドゴーを行うなど
訓練方法の発達やなんといっても軍事技術の革新により、

空母の着艦事故率はいまや地上におけるそれと同じにまでなりました。

この日はもちろんのこと1機も見ることはできませんでしたが、
RRの艦載機は、F/A-18スーパーホーネット各種が44機、E-2Cホークアイが4機、
C-2Aグレイハウンドが2機、あとはSH-60などのヘリコプター。
全部で計85機となります。 




艦橋は艦首側から見ると、左舷側に大きく張り出した形になっています。
着岸のときに下に障害物なく、状況を確認することができます。
部屋全体は鍵字の型をしており、この椅子はその左舷側角にあります。

「ロナルド・レーガン」がまだ就役したばかりの写真で、
初代艦長がこの椅子に座っている写真を見たことがありますが、
その背もたれには「NRGN」と書かれていました。 
この椅子にはないようですが、なんの略語かはわかりません。 



「ホーネット」や「イントレピッド」との違いはその広さです。
全てに余裕があるだけでなく、RRの艦橋には遠い将来を見越して「予備のスペース」
まであるというから驚きます。
技術が進んでどんな設備が将来必要になっても、そのための場所は確保してあるんですね。

ところで原子力空母の寿命って、みなさんご存知でした?

なんと50年なんですよ。
この船が生まれたときに同時に生まれた人が、セイラーになって、
海軍を辞める頃まで現役であるということです。

まだ一隻も退役していないので、寿命のきた空母がどのように廃棄されるのか、
そのときは見ものというか大変興味深いですね。



シグナルボックスや電話など、通信関係のパネル。アラームもここです。
電話が見えていますが、艦全体の電話は1400台あるそうです。



電源が消えているのでなんだか全くわかりません。
画面の前にはコンピュータと全く同じキーボードがあるので、
これがコンピュータであることは間違いありません(小並感)



画面の電気は消してあり、チャートは裏返してありました。
ちなみにデスクの上の飲みかけのコーヒーは「世界一のバリスタ」です(笑)



単なる通路ですが、ここも船の中とは思えないくらい広さがあります。
炎の写真が貼ってあるので何かと思ったら、「燃えるゴミ」
つまり、奥の円筒形のゴミ箱のゴミを放り込むダストシュートみたいですね。
ゴミを持って階段を降りるなんて、アメリカ人がするとは思えません。

その奥にコーヒーメーカー(ポット2つ分)と、カップ置場があります。
金庫のようなものがありますが、これ冷蔵庫かも。

RRのなかにはゴミの処理専門の部署があって、ここでは燃えるゴミをパルプ状に溶かして
海に廃棄したり(日本ではそれだめだと思うけど)、プラスチックをプレスして
ディスク状にして貯めておき、上陸した時に処理をする専門職がいます。



これが鍵の字の角の部分。



この端っこにやたら充実した施設のコーナーと椅子がありますが、
この椅子の向こうの窓から接岸を監視することができるようになっています。



もうひとつあった、偉い人用椅子。
フラッグブリッジでこの椅子に座っていた艦長は、どこかに足を上げてかけていましたが、
本当にアメリカ人ってこういうところお行儀が悪いなあと思います。
嫌いじゃないですけどね(笑)

 

窓枠にある「PELORUS」とは方位儀のことです。
2003年、すなわちRRが就役する時に設定したということのようです。



そのジャイロには、護衛艦にあるような三角の上に立ってるものがないのですが、
(なんのこと言ってるかわかりますよね?)
あの仕様はアメリカ海軍では使わないタイプなんでしょうか。

上に乗せられた黄色い札には「エラー日時」などを書き込む欄があります。




窓ふきする前に読まなければならない注意。
窓ガラスにはプラスチックのコーティングがしてあるので、強アルカリ洗剤でなく
マイルドソープで洗って柔らかい布で拭いてください、ということと、
ご丁寧にも「使っていい洗剤」「だめな洗剤」の名前が書かれています。

「トップジョブ」「ミスタークリーン」はよくて、
「コメット」や「アジャックス」の研磨剤入りはだめだそうです。

この最後に「pilothouse」と書いてありますが、これは「操舵室」を意味します。 



XJAIとかX8Jとかのダイヤルは、周波数かなんか?


メインの電源盤がここにありました。
中央下のつまみがメインスイッチで、

PORT SIDE(左舷) STBD SIDE (右舷)
AFT (艦尾) STERN(艦首)FWD(前方)

という場所ごとにスイッチがあります。
左舷のつまみがなくなっているのはなぜ?
現在は電源は完璧にオフの状態になっています。



おそらくですが、艦橋のてっぺんからニョキニョキと突き出していた
各所を照らすライトのスイッチであろうと思われます。
箱型のスイッチボックスには「左舷」「艦橋頂上と右舷」などと書かれています。



警報のためのスイッチでした。
状況によってサイレンの音が変わるので、それが
パネルの右上に図解で説明してあります。
たとえば、ノーマルな場合の警報は、

WAIL(長く甲高いサイレン音)、上部のランプ点滅、下部ランプオフ

警報解除の場合

WAIL、上部ランプオフ、下部ランプ点滅

ランプとは、画面の赤い部分で、上下別々に点灯します。

案内の乗員がここでまたクイズを出しました。

「この部屋で働く乗組員の平均年齢は何歳だと思いますか?」

20歳とか22歳、と先ほどの例もあるので何人かが低めの年齢を答えたところ、
驚くことに正解は「19歳」。
19歳ってあなた、高校卒業したばかりじゃないですか。

「彼らは操舵を言われた通りに行います。
言われた通りのことをするのは19歳であってもできます。
船をどんな速度でどう動かすのかは、艦長始め幹部が意思決定するので、
彼らは何も考えなくていいからです」

とはいえ、彼らにとってはこの巨大空母が自分の操舵によって
動かされているという事実はやりがいを感じるものなのでしょう。



3200名もの乗組員が、一人として無駄に動いていないのが空母ですが、

一人一人のしていることはごくごくシンプルで単純です。
だからこそ、軍の命令系統が滞りなく機能して全体を統括することが必要となるのですし、
なんといってもシンプルであることが結果として
安全にもつながっているといえます。


続く。