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魚雷の上で見る夢は〜イントレピッド航空宇宙博物館

2016-03-20 | 軍艦

ニューヨークはマンハッタン、ハドソンリバー沿いにある
空母イントレピッド博物館の見学、艦内の乗組員居住区です。

冒頭写真は艦首のアンカールーム。

さすがに巨大空母のだけあってここだけでも広大です。



暗いのにちゃんと撮らないものだから何なんだかわかりにくいですが、
デスクのバーにかかっているものはスパナやバールのようなもの。
ここは「MACHINE SHOP」といいます。工作室ってところですか。



マシンショップの様子。

船の機械部分を修復したりメンテナンスする部門は

「self-sufficient community at sea」

つまりこのあいだの掃海艇ではありませんが、海の上で「自己完結」すなわち
自給自足できるコミュニティである船にとって不可欠です。
特に空母はどんな事態になっても生還できるように、どんな困難な修復も
行えるような充実した設備を持つマシンショップを持っていました。

空母のマシンショップの「リペアマン」は、空母だけでなく、行動を共にする
艦隊の他の艦艇にとっても必要欠くべからざる存在でした。

ここには旋盤、フライス盤(平面や溝などの切削加工を行う工作機械)、
ドリル、圧縮機、研削盤、電動ノコギリなど、工作に必要な全てが揃って再現されています。




ここで休憩されたり、下手すると椅子などが盗られるかもしれないので、
わざわざガラス張りにして通路と遮断したコーナー。

兵員食堂の一部が当時使われていたトレイが置かれて再現されています。

 

イントレピッドの乗員は総員3,000人はいたということです。
そのほとんどが若い男性の旺盛な食を支えるキッチンをギャレー(galley)といい、
イントレピッドには大きなギャレーが二つありました。

護衛艦もそうですが、こういうところの食事はウェイターが運ぶのではなく、
乗組員がセルフサービスでトレイに食事を取っていくことになります。
ごらんの厨房具は、左奥にあるのがトースター。
日本のホテルにも時々見られる、中でローラーが回っていて
焼けたら下からころんと出てくるタイプのあれです。

右側はおそらくこれはコーヒーか何かのディスペンサー。
アメリカのホテルなどでは、今でも飲み物はほとんどこの形です。

典型的な艦内食は、

チリマカロニアメリカ風、スモークハム、バーベキュービーフコーン添え」

みたいな感じ。
今でも、たとえば日本に駐留している在日米軍の空母もこんな感じでしょう。
空母の牛肉消費量は1日に牛3頭と聞いて呆れたことがあります。



赤と白のチェック柄のテーブルクロスがダイナー風。
先ほどのダイニングも椅子が赤でしたし、アメリカ海軍は何かと
赤を食事の際に使う傾向にあったようです。
わが海上自衛隊では何か色を使うとしても必ずブルーと決まっているようですが、
食欲が湧く色としての赤をつかうというのはいい考えかも知れません。

そして、各テーブルにケチャップが一瓶ずつ置いてあるのが(本物?)
いかにもアメリカの食卓であります。

アメリカ人のケチャップ好きは異常。
誰かが各国の学生が集まる場所で、アメリカ人は必ずケチャップを取って
テーブルに一つどんと置いたままにする、と書いていたことがあります。
日本人の醤油みたいなもんなんでしょうか。

ケチャップって砂糖が多量に入っているのですが、何にでもそれをかけ、
コーラを飲んでアイスクリームを食べるからアメリカ人は太るんだろうな。



ここは間違いなく士官室士官以上のテーブルであろうと思われます。
なぜなら、トレイではなく磁器のお皿やコーヒーカップが載っており、
テーブルが小さくて二人しか席がないものだからです。

アメリカの士官にも「従兵」がついて給仕をしていたんでしょうか。

これは「Second class mess deck」といい、戦後、1969年に
改装されたのだそうです。



兵員用ベッドは三段式。
まあとても広いとは言い難いですが、潜水艦のベッドよりマシかな。



ここもガラス越しの見学です。
ベッドが2段で、しかも通路に余裕があることから、
士官の居住区ではないかと思われます。

このベッドなら、起き上がった時に頭をぶつけなくて済むわね。



兵員用の寝室と違って、こちらには収納用の引き出しも結構たくさん。
士官はいざとなったら身につける制服がかさばるから?



ここも多分士官用洗面所。
一度にたくさんの人が洗面できるようにボウルがたくさんあります。
ここにもトイレがありましたが、イントレピッドは底を固定してあり波の動揺はないので、
もちろんわたしのリバーススイッチがオンされる気配もありませんでした。



BERTHINGというのは船や列車の寝台のことです。
ここはハンガーデッキで、本来居住スペースはないところなのですが、
見学者用に寝台などを再現して、ここだけは体験型にしつらえてあります。

この案内に書いているように、クルーはこのバンクベッドのことを「ラック」と
呼んでいました。(確かに棚である)

空母とはいえ決して平の兵員たちにとっては潤沢なスペースはなく、
一つの区画には大体10人かそれ以上が寝ていましたが、
もっとも普通でない寝台は、この写真のように魚雷の上に設えられたものでした。

「ここでは彼らのベッドを体験できます。
あなたは魚雷の上の寝床でくつろいで寝られますか?」




彼らはくつろぎまくり。
というか、今の米海軍軍艦もこんなベッドなのかしら。




クルーが与えられたユニフォームと私物を入れるスペースはこれだけ。
普通のアメリカの住宅に備えられた洗面所の薬だなくらいの大きさ。

ここがあなたに与えられたとしたら、あなたは何を持ちこみますか?


と書いてあります。



再現された「魚雷の上の」ベッドにはところどころ説明がついていますが、
ベッド中段の棚の横には「MEMENTOS」とあります。
この言葉からは「memento mori」(死を忘れるな)という言葉を思い出すのですが、
同じ語源で、「mementos」とは思い出の品とか形見といった意味があります。

写真がぶれて説明が読めないのが残念なのですが、どちらの意味なのでしょうか。



個室にたった一人で寝られるのは、艦長と司令官だけです。
どちらの部屋かは忘れましたが、さすが空母の特別室だけあって居心地良さそう。



空母なので他にも偉い人用の部屋はあります。
ベッドの頭の上に備え付けてあるラジオが何だか不安ですが、軍艦なので
そんなことは気にしねえ!といったところでしょうか。



体験コーナーでは信号灯を実際に付けてみることもできます。

写真でモールス信号を送っているのはQuartermaster 2nd classのトニー・エバンスで、
なんと彼のいるのはUSS「ブルーリッジ」なんだそうです。

第7艦隊の揚陸指揮艦「ブルーリッジ」は1970年の就役なので、
いま横須賀にいるのと同じ船でしょうね。



体験コーナーでは、「船の音」を聞くこともできます。

まず、一番左から、

BOATSWAIN'S WHITSLE

これを「ボートスワイン」と読んでははなりませぬ。
自衛隊でも普通に使う「ボースン」(掌帆長)の元々の綴りがこれです。

これを略して「BOS'N」とか「BO'SN」=ボースン、というわけ。
ボースンズコールというと、号笛、つまりサイドパイプ。
ホヒーホーとかヒーホーとか船に偉い人が乗ってきた時やなんかに鳴らされるアレです。

あとは「ジェネラルアラーム」とか「フライトクラッシュ・アラーム」(航空事故のとき)
「コリジョン・アラーム」 など、場合に応じて違う警報音を聴くことができます。


イントレピッドの渓流固定してある岸壁でずっとこんなスポーツをしていた人がいました。


続く。