平成30年度自衛隊音楽まつり、第3章のテーマは
飛翔、昇りゆく挑戦。
で、これから自衛隊指揮官という世界に挑戦すべく
飛翔せんとしている防衛大学校から、儀仗隊の登場です。
今年の音楽まつりに登場しているのは60期から63期まで。
防大儀仗隊のホームページはいつまでたっても鋭意工事中なので、
詳しいことは全くわかりませんでしたが(忙しいんだろうな)
出場しているのは全員ではなく、卒業生中心の選抜メンバーだと思われます。
63期は音楽まつりが終わったら引退して後進に道を譲ることになっています。
演技前、会場のアナウンスでは
「防衛大学校は国際士官候補生会議などを通じて国際的視野をも涵養しています」
と紹介されました。
国際士官候補生会議?
アナポリスやウェストポイントとも交流があるのか?
と興味を持ってHPを開いてみたら、それは防大内に設置された
International Cadets' Conference
通称ICCなる組織のことでした。
これは防大に諸外国の士官候補生を招へいして国際会議を実施し、
国際情勢及び安全保障に関する討議等を行い、各国と我が国の将来の
安全保障につながる相互理解と信頼関係の促進を目的とするものです。
(とHPに書いてありました)
この会議は
米、英、伊、印、インドネシア、豪、カナダ、韓国、シンガポール、
タイ、中国、チュニジア、独、仏、フィリピン、マレーシア
等の国の士官候補生を招へいし、8日間程度の日程で行われ、
その目的とは
1.学生に対する国際交流の機会の付与(国際感覚の醸成)
2.学生の国際的視野の拡大、
3、国際情勢認識
4、語学力の向上
4は特に日本の士官候補生には大事なことですよね。
さて、演技です。
始まるなりキビキビと隊形を卍に整え、しばしドリルを行ないます。
投げ上げた銃が完璧に地面と平行なのにご注目。
まず放射状となって回転するマーチング。
小さな十字はだんだん人を巻き込んで大きな十字となって回転します。
馬てい形のフォーメーション。
何年か前には近くに座ったおばちゃんたちの軍団が、彼らの一挙手一投足に
「かわいい」「かわいい」ときゃあきゃあしていたものですが、
こういう年頃の息子を持つ身になってみると、その気持ちがわからなくもありません。
年頃のお嬢さん方なら「かっこいい!」と目が❤️になるところ、
わたしどもはとにかく「かわいい!」となってしまうわけです。
高校野球の選手が「大人」から「お兄さん」になり、「同世代」、
「年下」となっていつの間にか息子の世代になるようなもんですね。
彼らが「孫」に見える日ももう目前です(しみじみ)
馬てい形となってからのドリルは、左から右、右から左と銃回しや銃投げ、
膝をついたりが目まぐるしく移り変わっていきます。
まあこれは文章など読んでいないで映像を見てこられるのが一番です。
最後に、一番端の隊員は一人で敬礼しつつ連続で銃を回し続けます。
これがまず会場を沸かせます。
この技のことを「夢幻」というそうですが、やはり
「延々と回し続ける」=「無限」
からきているのかな。
防大儀仗隊のドリルは彼らが主に米海兵隊のドリルを参考にして取り入れ、
名前をつけて代々受け継がれている技で構成されています。
前にも書いたことがありますが、防大に儀仗隊ができたのは開校して
3年後ということなので、初代儀仗隊だったOBはもう80代になっているのです。
無限を行う時、敬礼しながら会場をぐるりと見回すのもお約束。
この「美味しい役」はおそらくこれを最後に引退する
4年生に与えられるのでしょうね。
というか、演技をしているのは袖の桜を見ると4年生中心のようです。
第302保安警務中隊のと違いこちらは「ファンシー」なドリルなので、
動きが華やかで、銃を投げる動きは頻繁に行われます。
しかし、これも今までの音楽まつりで銃を落としたのを見たことがありません。
取り回しがしやすく美しいため儀仗に使われているM1ガーランド銃は
4.3kgとそれなりに重く(というか普通にかなり重いよね)特に
白い手袋をしていると取落すなど精度も下がると思われるのですが。
会場の隅に立っている二人の隊員が(おそらくこちら側にも二人)
銃を持っているのは、演技者に何か起こった際渡すためでしょうか。
しかしこの銃が実際に機能したことなど、過去の防大儀仗隊の歴史には
一度もなかったのではないかと思われます。
右端の隊員にも「見せ場」があります。
最後に思いっきりジャンプしながら銃を投げ上げて・・・、
高々と宙を舞う銃をしれっとキャッチ。
「今年は女子が多いですね」
リズムを担当するドラムラインを見て連れが呟きました。
言われてみると確かに。
大太鼓が女性だとすればメンバーのうち半数近くの四人が女子生徒です。
しかも皆さん楚々として可愛らしい方ばかり。
このお嬢さん方が自衛隊指揮官として将来護衛艦の艦長になったり、
これからは戦闘機パイロットとなる可能性だってあるわけか・・。
それどころか、この学年が将官を輩出する将来には、もしかしたら
すでに初の女性幕長だって生まれているかもしれません。
ところで余談ですが、うちのTOはよく最近の学生や若い社会人を評して
「みんなのび太君としずかちゃんみたい」
と言っております。
この意味は、なべて最近の青年はおっとりしすぎて覇気がなく、
出世したりのし上がってやるぞ!というギラギラした野心が見られない反面、
女子は皆きちんとやることをやり、優秀な人が多いという傾向だそうです。
一般的に優秀な女性が社会に出て頭角を現すため、こう見えるのは
最近に限ったことではありませんが、特に最近、
TOのいる業界でも男性の「総のび太君化」が著しいのだそうです。
一般論として自衛官になろうとする青少年に覇気がないわけがないので、
男性「のび太君化」は自衛隊には関係ない話だと信じたいですが、
一方これから自衛隊という職場に、しずかちゃん的女性が今まで以上に
増えてくることは間違いありません。
自衛隊が女性自衛官の登用を一層推し進めている理由の一つに
深刻な人手不足があるというのも厳然たる事実なので。
ということはどういうことかというと、これからは相対的に
真面目で優秀な女性自衛官が増え、そのいずれかは
自衛隊のトップにのし上がる可能性も無きにしも非ず、ということです。
おっと、話が逸れました。
儀仗隊演技の途中には、会場が真っ暗になった瞬間発砲する場面があります。
わたしは火花が出る瞬間を撮ろうと、待ち構えていて会場が暗くなった瞬間
シャッターを切ったのですが、タイミングが合いすぎて画面が真っ白になっていました。
ISO感度の下限を設定していたので露出オーバーになったんですね。
しかも次のチャンスに全く同じことをして、真っ白な写真をまた撮りました。
うーむ、全く学習しない奴。
ファンシードリル演技最後のクライマックスに行われる
「銃のトンネルくぐり」。
正式になんというのかは知りません。
HPのメンバー紹介によると儀仗隊への入隊動機のほとんどが、
「防大でないとできないことをやってみたかった」
そして
「かっこいいから」
この二つのどちらかです。
かっこいいといえば、ただ指揮刀を持ってまっすぐ歩くだけの
この時の指揮官ほどかっこいい存在はありますまい。
きっとこれがやりたくて儀仗隊を目指す子もいるよね。
隊長だけがつば飾りのついた佐官クラス風の帽子をかぶるのを許されますし、
何年か前の端正な容姿の儀仗隊長など、その年の音楽まつりの顔として
DVDのパッケージに大アップを飾ったというくらい目立つ存在です。
とにかく彼らの親御さんは嬉しいだろうなあといつも思いながら見てます。
音楽まつりの最終日最終回、このトンネルをくぐりぬければ、
儀仗隊長の儀仗隊生活は終わりを告げます。
他の儀仗隊メンバーの4年生たちにとっても、彼らの4年間は
これで終えて悔いのないものであったことを願って止みません。
全員が「夢幻」をしながら敬礼、隊長は抜刀し敬礼。
全ての演技を完璧に終え、防大儀仗隊退場です。
指揮官は松高諒典学生。
ドラムメジャーはシンガポールからの留学生、
ジョエル・ン・ジア・ジュン学生でした。
儀仗隊に留学生が加わっていることはたまにあるようですが、
ドラムメジャーとして名前を呼ばれたのは、わたしの知る限り
彼が初めてです。
彼は今回招聘バンドだったシンガポール軍楽隊の人たちと交流できたでしょうか。
続く。