あなたの快方を祈りつつ、
私も異国の地にて今秋の感慨深さは二度と味わうものではないことを、
すでに予感するの。
ごめんね、渡航キャンセルできなくて。
とはいえ、地方に住むあなたのもとへ東京から異性がお見舞いになど行ったら
すぐに町中の噂になるでしょうね。
あなたの仕事柄、特に。
不思議なものね、
私たち・・・・・・というよりも縁を考えると。
あなたを想うと、憎らしいのにそれを増す愛しさがこみ上げてくる。
だからといって私たちは付き合っているわけでもなく、
けれど、しっかりとした恋愛感情の上に関係は成立しているのね。
告白するならば、
私は今まであなたに抱きしめてもらうことで、
私の内側の空白または欠如部分を満たしてもらっていたの。
それが安心や平静や自立へと結び付いて、
私はしっかりと大地に根を張ることができるようになっていった。
あなたは私をすごく誤解していて、
私はあなたが思うほど強くはないし、自立した都会の女でもないのよ。
気まぐれなあなたからの電子メールを受信すると、
わがままにもなれたし、甘えることも、女にもなれた。
それはあなたが知らない普段の私ではないのよ。
強くも都会的でもない、自然な姿だったはず。
あなたにはきっと、私を私でいさせてくれる優しさがあった。
けれど、その優しさは強さよりも弱さが目立つため、
ときどき私を苛立たせもしたし、冷たい言葉を吐く原因にもなった。
そして、その優しさはとてもわかり難いもので、
時に誤解を生じさせる種を内包していたため、
私の優しさという水を与える隙がなく、
私を常に腹立たせたりもしたわ。
けれど、私にはあなたの優しさが必要だった。
そして、今、あなたは私の優しさを必要としている。
手術前の恐怖をどれほど感じているのか、
半身不随となったとき、
あなたがどのように生きていかなければならないのかという不安は、
私が経験してきた3年という月日と同様であるからこそ、
痛いほど伝わってくるの。
痛いほど、自分のこと以上に、それだけを感受してしまうの。
あなたへの手紙、
そして、あなたの人生を左右し兼ねない主治医への懇願は、
短い手紙としてまとめることが本当に難しいものだったわ。
私はそれに今日を捧げたの。
時間も、思いも、あなたの無事や成功を祈るだけのために費やしたのよ。
その思いが結果となって、
あなたに笑顔が戻ることを私は希っているわ。
またあなたのかわらぬ優しさを必要とする私でいさせて欲しいから・・・・・