この病院は患者ひとりに対して7人の看護師が必要な民間病院です。
もう、僕も外来マシーン化していますよ、
週3日の外来、救急、脳外科手術と爆発寸前です、と主治医は小声で言った。
実はね・・・と声をよりひそめ、外来担当の看護師全員がパートで、
家族がどうの、彼氏や恋愛が、残業は嫌だ、などの不平不満揃いで
結局優秀な看護師は皆、入院病棟へ。
私の紫色になった点滴痕の腕を眺め、ひどいもんだ、とため息を漏らす。
院長も看護師不足だから怒鳴ることもできないし、
怒鳴れば看護師がまとまって辞めてしまう。
けれど、看護師の身勝手を放置していることで医療の質は必然的に低下する。
悪循環だね、これ。
本来なら、患者ひとりに対して10名の看護師なら条件もよく勤務可能なのに、
うちは7名だから、経営的にもうまくいっていないんだよ、実は・・・・・
その差はなんだろうか、と思った。
患者ひとりに対し7名または10名の看護師、その差は何か?
明日、厚生労働省の担当者に連絡を入れて、その詳細をお聞きしよう。
あれでは医師が死んでしまう。
過労で、激務で、本来、医師の右腕となるはずの看護師の質低下に拍車が加わり
本末転倒では済まされない自体に陥るのは目に見えている。
時間の問題だ。
点滴をすることで体内液の調整を図る。
体調の底上げを徐々に推し進め、どうにか生きていける体にまで快復させる。
今日は医師も泣きが入っていた。
私が点滴をする以前に、医師の職場環境改善などを検討しなければ、
ここで指す医師とは私の主治医のみに限ることだが、
医療に関与してしまった役割として、
患者以外の環境もより深く知りたいと思った。
けれど、さすがに驚いたというか、
点滴の針が一発で刺せない理由がこれで判明した。
パートだからプロ意識がなく、
戦場と化している脳神経外科医師や患者とは相違するだらけた空気に
医師も患者も激怒することは当然のこと。
主治医も戦闘モードに突入したらしく、
温厚な性格のはずが今日は一変、意識が違うと連発していた。
患者である私はもう、彼にとって患者ではなくなっている。
医療と共に語る相手にすこしずつ、距離を縮めた証拠か?