風の生まれる場所

海藍のような言ノ葉の世界

空や雲や海や星や月や風との語らいを
言葉へ置き換えていけたら・・・

親切心が迷惑や相手を傷つける結果に・・・・・

2007年09月22日 23時57分53秒 | エッセイ、随筆、小説








病は気からなんだって。

だから、気の持ちようが不十分なんだから、これ読んだらいいんじゃない?

そう前置きをされリュックから3冊の本が取り出された。

見せるだけなのかと思ったら、私に読めと言う。

病は気からなんて・・・・・同じ立場になったときに言えるのかしら?

言える、と断言する男は、40歳、夢は金持ちになること。

だから、他人への気配りに欠けるのだと思った。






ある区が主催していたゼミの同期と1年ぶりに会うことになった。

場所が居酒屋であったため、化粧をせず、深々と帽子をかぶり出席した。

「随分と痩せたね?」とか「でも体調よさそうじゃん」とか

無神経な言葉を浴びせられるたびに、出席したことに後悔し苦笑を浮かべた。






その男は性懲りもなく、病は気から・・・だと繰り返す。

あのね、私は交通事故が原因で、

気の持ちようではどうにもならない毎日を過ごし、

相手の身になって考えてみたとき、勝手に押し付けるための本なら

相手の体調への負担や荷物になるとは思わないの?と思わず言い返した。

私の持参品は、小さなかばんに財布のみ、

この数キロにもなる荷物をどうやって持って帰れというの?

もう二度と、この人たちには会わないだろうと私は思った。







その本は某大学教授が書いているもので、

やはり売るためだろうが「治った」という文字が使われている。

本当にそれで治るのであれば、その大学に病院があること自体が不自然だし、

治せるというなら患者の取り組みのせいにだけせず、

医療側の姿勢やその教授にしてもライフワークとして真剣に取り組め。

何冊もの本を書く時間があるなら、

もっと他の分野で医療改革が必要である現実を直視し、そこに尽力注ぐべきだ。

おのずとその姿勢は患者へ伝わってくるはずだ。

医者や患者が本を書くパフォーマンスに私がうんざりしているからこそ、

そうしたことに強く反応してしまうのだろうけれど。








主治医が2名いる、と何度言っても、その男は言う。

その主治医だから治らないのであって、

この人に主治医をお願いしてみたら?と。

会ったこともない、診察を受けたこともない医者を、

よくそこまで信じれるものだと妙に感心する自分が可笑しかった。

また別の男は私の疾患の患者会に精通していて、

患者会の情報は馬鹿にできないからとの理由で、入会を強く勧められた。

裏を知っているだけに、ここでもまた苦笑を浮かべるだけで必死だ。

現実を知らないとはこんなにも恐ろしいことなのだ、と。








親切心で言っているのだろうが、そもそも医療への関与のレベルが相違するし、

生を温存することだけで精一杯な立場にならない者の言葉は甘く、また軽い。

私はあなたたちに相談する以前に、

相談者も主治医たちにも恵まれているので、と言って

やんわりとそれらへの拒否姿勢を示した。

すると、その凄まじさは何倍にもなり、

人の話を聞かないから治らないのだと脅しにも似た説教がはじまった。

百歩譲って彼らは酒が入っている。

が、だからといって聞き捨てならない発言に対し私は言った。

ゼミの同期ではあるけど、友人として信頼を寄せているわけではないから

私がもし悩みや苦痛を抱えているならば、

話せる友人がいるので心配はご無用です、と。








なんで強引に押し売りのように、

ただ本を読んだだけなのに、さもその医者が神様のように思える人がいるのかと

私は不思議でならない。

本を持って帰るための袋もなければ、それが荷物となることも想定せず、

重いものを持ってはいけないとの主治医からの言いつけを訴えても、

彼らには何も伝わらず、理解できないのだと思った。








うんざりするのだ。

点滴の痛みだけで七転八倒している姿を見に来るか?

体調が悪化した際、どうなるのか見たいのか?

それでも同じことが言えるのだろうか?

元気そうだね、とか、病は気から、などと、

悪気はないにしろ程度の低い言動を浴びせられるたび、

なった者にしかわからない世界があることを知らされるのだ。








自己満足のための親切なら、しない方がましなのだ。

自分で体験をしていないことについての発言は

慎重でなければ相手を知らずうちに苦しめ、

ストレスを与え、負担の原因にしかなりえないのだ。

医療者ですらそれがわからない今日において、

素人にそれを求めても無理ということか?









強引で傲慢な人間が私はやっぱり苦手だし、

棲む水が違うのだと痛感して帰宅する。

本・・・・・・・・

すこし経ったら読んだことにして、送り返そうかな。