ベトナム上空でみた竜の化身が東京にやってきた。
ここで子供を産み落とすのかをためらっているものの、
私は上空のそれを眺めながら、
とうとう日本にも・・・・・・と思った。
夕方の秋風が強まる時間帯と
工事で使う鉄板板上をバスやトラックが
ごとごとというものすごい音を立て行き交う振動や爆音、
駅から吐き出される人間という汚泥、
普通の人にとってみれは平日のごく当たり前の光景が、
私には違った景色にしか映ってはこない。
毎日殺人事件が起こっていかに残忍で凶悪で冷酷だとしても、
それは一瞬のごくわずかな時間を灰色に染めるだけに過ぎない。
けれど私にとってそれはドクマチールが肝臓に一週間も残留するのと同様に
他の人がすぐに忘れてしまう類、
楽しいことを追いかけていく様のようには容易くはいかない。
竜は怒っているのだ。
そして、ベトナム上空からインドネシアへ移動し、
今度は日本へやってきた。
何をしにきたのかは、私の口から今は言えない。
※ドクマチールとは薬名です。