風の生まれる場所

海藍のような言ノ葉の世界

空や雲や海や星や月や風との語らいを
言葉へ置き換えていけたら・・・

龍の子供

2007年09月26日 21時17分27秒 | エッセイ、随筆、小説







ベトナム上空でみた竜の化身が東京にやってきた。

ここで子供を産み落とすのかをためらっているものの、

私は上空のそれを眺めながら、

とうとう日本にも・・・・・・と思った。







夕方の秋風が強まる時間帯と

工事で使う鉄板板上をバスやトラックが

ごとごとというものすごい音を立て行き交う振動や爆音、

駅から吐き出される人間という汚泥、

普通の人にとってみれは平日のごく当たり前の光景が、

私には違った景色にしか映ってはこない。

毎日殺人事件が起こっていかに残忍で凶悪で冷酷だとしても、

それは一瞬のごくわずかな時間を灰色に染めるだけに過ぎない。

けれど私にとってそれはドクマチールが肝臓に一週間も残留するのと同様に

他の人がすぐに忘れてしまう類、

楽しいことを追いかけていく様のようには容易くはいかない。

竜は怒っているのだ。

そして、ベトナム上空からインドネシアへ移動し、

今度は日本へやってきた。

何をしにきたのかは、私の口から今は言えない。







※ドクマチールとは薬名です。

 

 





 


魅惑の月夜

2007年09月26日 09時39分41秒 | エッセイ、随筆、小説

 

 

 

ある方のお父様が月夜の美しい夜、

天に召された。

月と会話していると、その時空を超越した輝きに見蕩れていると、

この世のすべてが可笑しく、俗世であることを思い知らされる。





人はなぜ求めるのだろう?

異性も、生活も、金銭も、医療も、今よりもいいものとを希求する。

それが人生にとって潤滑油の役割をすることは当然であるし、

質の低下に向上を・・・・・と声高く叫ぶことは必要なことなのだ。





けれど、ときどき疲れてしまう。

点滴が終了した確認をせず、管を逆流した緋色に染まった管をみると、

刺す場所のなくなった穴だらけの変色した右腕に視線を落とすと、

かわいそうに・・・・・と自分で自分の頭を撫でてやりたくなる。





点滴の必要性も投薬もなにもかもを、

知識のあるはずの医師に患者側が高度な情報を与え、

そのとおりに指示書に記入してもらい、今後の経過観察方針が決まる。

それができるようになったのは二名の主治医を持ち、

看護師の資格を有する友人のお陰で、

1名の主治医しか持ち得なかったら、おそらく私の主張が通っていたかどうか。






ある方のお父様が月夜の美しい夜、

天に召された。

月と会話していると、その時空を超越した輝きに見蕩れていると、

この世のすべてが可笑しく、俗世であることを思い知らされる。

俗世とは、天国も地獄、

人間の面をつけた鬼も悪魔も、神も仏も存在する世界の呼称だ。






ひとつひとつ問題を片付けた後、

俗世からは距離を置き、ひっそりと暮らそう。