風の生まれる場所

海藍のような言ノ葉の世界

空や雲や海や星や月や風との語らいを
言葉へ置き換えていけたら・・・

バイブレーション

2007年09月24日 00時44分23秒 | エッセイ、随筆、小説








それはあのときも感じたことだった。

祖母が亡くなったのは去年の今日、

秋の彼岸を選ぶように、静かに息を引き取ったと聞いた。

昨日は私の夢に出てきて、

祖母は家に迷いこんだねずみを心配している様子だった。

あの子は悪さなどしないから、殺生せずに逃がしておやり。






不思議なことだった。

朝の気だるさもなく目覚め、

祖母が私の体から痛みを吸い取ってくれたように

快適な一日を過ごすことができた。

つながっているのね、私たち。

ずっとずっとつながっている。

細胞も魂も目に見えないものばかりだけど、

私と祖母は繋がっている。

そして、祖父とも先に亡くなった友人たちとも自然とも。







秋のせいか、感慨深く祖母を思う。

夢でいつでも会えるわ、と祖母は微笑むけれど、

私は祖母の手打ちうどんが食べたいし、

お茶には野沢菜をつまむ風習の信濃の縁側で語りたい。

そして、子供のように頭を撫でてもらいたいし、

一緒にお風呂で背中を流してあげたい。

祖母は、今夜の夢で叶えてあげるわ、と容易く言った。

そして、私は2日連続で祖母の夢をみて、

祖母のいうとおり、夢の中で希求したすべてを満たしてもらえたのだ。

目覚めると、歯を磨いて寝たはずの前歯に、

祖母が雑に切ったねぎが証拠として残されていた。






私の細胞の中で生きている人たち。

それはときにバイブレーションとなり、

私に嗅覚を与え、未来に手が届くように手解きを加えてくれるらしい。

茶香炉の火を絶やさなかったわりには、

懐かしいニオイが部屋に充満し、

祖母の命日に相応しい祖母のかつての匂いが細胞に染み込んでいく感触。





祖母が以前手作りしてこしらえた半纏を着て、

今日は娘が祖母の夢を見たいと言った。

祖母に会いたい・・・・・・

もう一度、祖母に抱かれてみたい・・・・・