ゆずりは ~子想~

幼い葉が成長するのを待って、古い葉が譲って落ちることから名付けられた「ゆずり葉の樹」。語りつがれる想いとは・・・

病院VSわたし

2006年08月23日 | 愛ある辛口
実家にある、とある耳鼻咽喉科とバトルした。
バトルせざるを得なかった理由は、治療の請求額が、予想以上に高かったことである。

事故は、私の愛娘エリーが、朝食を食べている時に起こった。
この日、ずいぶん体調の良くなっていた私は、早起きしたサーヤと一緒に朝食を食べたあと、エリーの起きる前に!と、食卓でサーヤの宿題を見ていた。すると、そんなサーヤとの少ない二人っきりの時間を遮るかのようにエリーが起きてきた。いつもこんな感じだ。サーヤとの時間を持てた時にかぎって、エリーが起きたり、エリーが邪魔に入ったりする
仕方がないので、エリーが朝食をとる横でサーヤが宿題をし、私が二人同時に見ることになった。
エリーは、ご飯をぱくぱく、合間に軽くほぐしておいた焼き鮭をぱくぱく食べていた。この日は珍しく、一人でフォークですくって食べてくれていた。それに安心して、私はサーヤの宿題にあれこれ言っていた矢先のことだった。エリーがいきなり咳き込んだ。ゴホッ!ゴホッ!その咳き込み方が、食べ物を詰まらせた感じとはちがって、変な感じだった。
「エリー、大丈夫?どうしたの?」と顔を覗き込みながら、私は直感した。
骨だ!魚の骨が刺さったんだ!!!
・・・そういえば、さっき鮭をほぐしていた時、白い骨が覗いていたのを頭の端で発見していた。でも、いつもエリーは上手に骨だけを口から出しているから大丈夫だろう・・・、と安易に考えていたことも思い出したのだ。あああ、失敗!大失敗!!ごめん、エリー!!!
非常に痛がるエリーに、サーヤもあわあわ慌てていた。宿題も手にはつかない。つくはずもない。母である私が動揺し、じたばたじたばたしているのだから。

口を大きく開けて泣いているエリーを覗く。白い骨が、左のノドに真横に刺さっているのが見えた。浅い箇所だ。長めのピンセットがあれば、取れるかもしれない、という近さだ。ご飯を飲み込むように促すが、2歳になろうとする幼な子が、ノドが痛いのに食べ物を食べるわけがなかった。首を横に振って余計に泣き叫ぶ。母親にピンセットがあるかどうかを聞き、探すが見当たらない。毛抜きを持って、エリーの口の中に入れてみたが、届かない!毛抜きで傷をつけてしまうかもしれない。もしかしたら、毛抜きまで誤って飲んでしまうかもしれない。私の頭の中は、どうしたらいいのか途方にくれていた。横でサーヤがお祈りをささげてくれている。

「おかあさん、病院に行ってくる!」
市内の近くの耳鼻咽喉科へ急いだ。調べている暇もなく、出かけついでになんとなく見かけた看板を頼りに、そちらの方向へ車を走らせてもらった。
病院に着くと、お盆明けにもかかわらず、患者さんはあまりいなかったので、すぐに診察室に入ることができた。医師は、少し不潔そうな小太りの男の人で、回転椅子の座席が少し狭そうだった。目は小さく、お盆休み明けの気だるさを残しているような感じだった。だが、私はそんな冷静な判断よりもまず、エリーのノドに刺さったままの骨を一刻も早く取ってほしくて、急いで症状を説明した。医師は、
「じゃぁ、お母さんに抱っこしてもらったまま、お口を大きく開けてみてねぇ。」と言い、看護婦さんがエリーの両腕をがっしり捕まえるのを待って、ノドの奥を覗いた。
「あああ、刺さってるねぇ。ちょっとまってねぇ。」
と言いながら、医師は長いピンセット(そうそう!私の探してたのはそんな感じのピンセットよ!!家にあったらよかったのに・・!!と心の中で思いながら)を手に持って、エリーのノドからやすやすと鮭の骨を取ってくださった。
「わー!ありがとうございます!!!よかったねぇ、エリー!」
エリーはまだ泣いていたが、母の安心した言葉に少し落ち着いてきた。
医師は、「まぁ、恐らく他には刺さっていないでしょうし、炎症も起きないだろうと思われますので。」と言いながら、カルテを書いていた。
「すみません、私の不注意です。ありがとうございました。」とお礼を言い、私は診察室を出た。

待合室に戻って程なくして、窓口で名前を呼ばれる。
「本日は、6210円です。」キレイなおねえさんが言う声にそのまま「はい」と言いそうになったが、いや待てよ!?今、なんつった!?「ろくせん???」って言ってなかった???
「す、すみません。おいくらですか?」再確認。
「6210円です。」おねえさん。
ろくせんにひゃくじゅうえんですか?」再々確認。
「はい、手術扱いになりますので。」おねえさん。
「しゅ、しゅじゅつですか?」再々々確認。
「はい、そうです。」おねえさんも、少々困惑した表情になった。ごめんね、ちょっぴり高くって。って顔つきだ。ちょっぴり、じゃあないですってば!高額、Expenciveだってばさ!
「はぁ。」仕方なく、私は支払った。泣く泣く、支払った。そして、一応お礼を言って、しかも憔悴ぎみのお礼を述べて帰った。
「エリー、ろくせん、だって。鮭の骨一本取ってもらうのに、六千・・・。」エレベーターを使わずに、階段を下りながらつぶやいた。

自宅に戻っても、どうにも納得がいかなかった。「おかしいやろ!?」だんだん頭に血が上ってきた。「どう考えても、人の足元見すぎやろ!?」気が落ち着くまで、言いたいことを声に出して言っていた。実家のリビングで、時には大きな声で、時には鎮めた声で。そして、「少し落ち着こう。落ち着いてから考えよう。」とも、声に出して言っていた。
10分~15分ほど経っただろうか。冷静になっていく自分の頭の中で、この病院に、この医師に、自分の気持ちをどのように伝えると一番伝わるかを組み立て始めていた。まず、取った行動は、これだ。
他の耳鼻咽喉科に金額を聞いてみること
他の医院に電話をして聞いてみたところ、今回の金額の半値が主だった。
それから、次。
日本医師会函館支部に相談する
電話をしてみたところ、金額が確かに高いとは思うが、医師会では何も言うことができないので、直接そこの医院に相談してみてください、とのことだった。もし、それでも納得がいかなかった場合はどうしたらいいかを聞いたら、そういう場合は渡島保健所の方で相談窓口があるので相談してみてくださいと言われ、電話番号を聞いた。丁寧な対応に感謝した。
そして、いよいよ。
その耳鼻咽喉科へ直接電話する
電話をすると、しばらく待たされた後、さっきの医師が電話口に出た。他の医院での金額のこと、医師会へ電話をしてみたことを話したが、医師は「うちの診察では、喉頭手術扱いにありますので、その金額なんです。」の一点張りだった。「手術といっても、手術台に上がったわけでもなく、私のひざの上での処置で、麻酔をするわけでもなく、難しい場所の処置でもないのにですか!?」何度説明しても、何度も同じことを返してきた。そして私は声を少し落として言った。
「・・・私はここの出身者なので、このような病院があるのは残念です。ほんとに、悲しいです・・・。」
すると、医師は「まぁ、処置の種類を変えることはできますが。」と言った!!聞き逃さんよ!!!
「手術には2種類あるので、もう1種類の方に変えることはできますが。」

私は、再度医院を訪れ、そのもう1種類の方に変えてもらった金額を支払いに行った。金額は、半分以下の2千円台だった。窓口で、おねえさんが「医療関係の方ですか?」と聞いてきた。関係者だったらなんなんだ!?と思いながら、いえ違います、と答えた。一般人をなめんなよ!!
そして、おねえさんは分厚い本を出してきて、処置の点数の違いをあてつけがましく見せてくれた。すると、喉頭手術の中にも簡単と複雑の2種類あって、その点数は4倍近くも違うのだった。
処置の種類を変えてくれることに、感謝の意を表しようと、医師に会いたい旨を伝えた。そして、25分待った。待ちくたびれて、帰ろうかと思った。その待つ時間にいろいろ考えた。きっとお礼なんかじゃなくて、苦情を直接言いにきたのだと思われているんだろうな。だとしたら、了見の狭い医師だなぁ。もったいないなぁ。あほだなぁ。15分経つと、だんだん腹が立ってきた。いい加減にしろよ!と。

ようやく中に通されると、すかさず医師は私の姿をちらりと見て、またすぐに前に向き直ると、こう言った。
「あれは、喉頭手術の部類に入りまして、うちでは2歳児は複雑の方に入れています。」
もうあまり話したくなかったが、私は「処置の内容を変えることは、医師として大変なことだったと思います。心の広さに感謝します。」と言い、最後にもう一度「ありがとうございました。」と深々と頭を下げて、診察室を後にした。
もう、来ることはないだろうと思った。回転椅子に、左片足を乗せた医師の元には、行かないだろうと思った。

医療は、技術だけじゃない。医療現場は、病気を治せるだけでいいのではないと思う。ましてや、地域に密着している開業医に関しては尚更のことだ。病気を治すのは最低限のこととして、精神的にも温かく迎えられる方が、安心感を生み、永く付き合いたいと思える病院となるはずだ。こんな枯渇した人間関係の現代ならなおさら。
心と心の通う病院が、地域にたくさんあることを望む。

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2 コメント

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分析・・・ (あゆみ)
2006-08-29 21:48:25
住所が地元ではなかったため、一見さん扱いになった可能性が高いことと、この市では小学6年生までが医療費全員無料(!)なために、医療費の点数を日常的に高めに設定しているのではないか・・、との分析。(解析:我が家)
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ナイスファイ! (sora)
2006-08-29 07:23:55
あったまくる病院でしたね。評判の悪さからお盆明けでもガラガラだったのかも・・・

お盆休みでそれじゃなくても診療日数減ってる上にもともとも患者が少ないんじゃ、点数稼ぎたかったのかもしれないね・・・。

まさにぼったくり診療所
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