都立美術館で開催されている「日本の洋画家たち・二科100年展」を見てきた。
正直言ってあまり期待はしてなかった。というのも、僕は本当に食わず嫌いで、音楽にしてもなんにしても自分の好きなジャンルや作家の作品だけを集中して楽しむという悪い癖がある。
大変失礼にあたるかもしれないが、日本にはそれほどの洋画家はいないだろうと勝手に思っていた。
ところが今回、この展覧会を見てそれがいかに間違っていたかを思い知らされた。
上の絵を描いた岸田劉生がまずその一人。
いままで彼の代表作といわれている「麗子」をみただけであり、正直に打ち明けさせてもらうと…う~んという感想しかもっていなかった。
今回この展覧会でこの「静物」をみて、考えが180度変えられた。
剣術で言えば相当の手練れである。
この絵に描かれている陶器を見て、すぐに想起するのはフェルメールの絵に描かれている陶器である。
残念ながら僕の表現力では、この神秘を表現するすべを持たない。ただただ見て感じてもらうしかない。
そしてもう一人
この絵を描いた佐伯祐三である。
残念ながらこの写真からは、本物の絵を目の前にした時の感動の100分の1も伝わってこない。まるで別の絵を見ているかのようだ。
こればかりは百万言を費やすよりも、この本物を見て味わっていただく以外にない。
すぐれた作品を美術展で見るときはいつもそうなのだが、その絵だけが浮き上がって見えてくる。
一瞬彼自身が影響を受けたといわれるユトリロの絵を思わせるのだが、ユトリロの絵のような静けさがない。
激しい、さまざまな情念が渦のようにぐるぐると渦巻いているのが絵から伝わってくる。ユトリロを装ったゴッホ、とでも言えようか。
しかしながら、そこにはユトリロにもある寂しさがやはり漂っている。絶望…も。
彼は結核が悪化してパリで自殺未遂をはかり、最後は衰弱死したそうだが、やはりこの絵を見ていると、そのような運命をたどった人の筆から生み出された作品だなと感じた。
とにかく、第1級品である、この絵は、芸術作品として。
上の岸田の作品とこれは、世界のどこに出しても恥ずかしくない。
西洋の超一流の巨匠の絵と比較しても、いささかの遜色もない。ほぼ同等か、ある意味ではそれ以上の域に達している。
三島由紀夫が芥川龍之介の作品を評して、「この精巧なカメラは、本場のライカをさえしのいでいる」という言葉を残しているが、それをそのままこの二人に捧げてもいいと思う。
この二人だけは世界レベルの画家といっていい。
友達に連れて行かれなかったら、日本が生み出したこの二人の巨匠の作品に出会えなかっただろう。ありがとう。