前回記事を書いてからさらにコロナウイルスの状況は悪化している。しかもそのスピードは僕の予想をはるかに超えて。
しかも一番驚きなのはイタリアの感染者の急増と死者数がウイルス発生の地である中国を追い抜いて世界一位になったことだ。
中国の発表する情報が信じられないという向きもあるが、感染者の数はごまかしたり、つかみきれないことはあっても、死者の数はごまかしにくい。
これはおそらく真実であろうと思う。とすると、どうしてなのかという疑問が生じてくる。
イタリアの医療システムそのものに何か致命的な欠陥があると考えるのが自然ではないだろうか。ニュースなどで聞くところによると、この国では財政赤字から医療に携わる人々の数を減らしてきたという。そこへもってきてたぶん軽い症状の患者でもすべてウイルスのテストをし、陽性だとわかると自宅待機などの処置をせず、その患者をすべて入院させるなどの処置をしてきたのではないだろうか。
そのためもともと医療従事者が少ないところへ、爆発的に増え続ける患者に対応できずに医療崩壊が起こっているのではないか。
これは3月17日ぐらいまでの各国の感染者数をグラフにしたものだが、日本の低さが目立つ。(一番下の線)死者数はその国の人口によっても持っている意味が全然違ってくる。人口の多い国と少ない国の死者数を単純に比べてみても意味がない。
そこで1億人当たりの死者数を比較している動画を見つけた。
この動画の14分40秒あたりから見えるグラフを見ると、人口1億人当たりの死者数が一番多いのが4925人のイタリアで、突出している。興味深いのが発生地の中国が233人で7位なのだ。もちろん捏造されたデータである可能性も排除はできない、が、いくら中国でも真実の数字からあまりにもかけ離れた数字を出すことはためらうだろうと思う。今も述べたように、感染者数は正確につかみきれないことや、捏造の可能性も否定できないが、死者数の場合はこの動画主も言っているように、捏造しにくいはずだ。
とすると、中国の医療システムもあながち劣ったものではないことがこの数字から想像できはしまいか。
そしておどろくべきは日本の1億人当たりの死者数が24人で3月19日の時点で17位にあることだ。当初、感染者の数が中国に次いで世界2位だったこともある日本でこの数字に抑えているということは、日本の医療システムの優秀さを物語ってはいないだろうか。
この動画をアップした人のことは僕はよく知らない。しらないが、このひとの論理の組み立て方を見る限りかなりの知的水準を持った人ではないかと感じる。すくなくとも、やたらめったら恐怖をあおったり、日本を自画自賛する自慰的、自己耽溺的な人ではないと思う。
それから、この動画をみると、日本で完治している人の数を述べている(この人は厚生労働省のデータだといっている)。
9日から13日までの間に新たにわかった感染者の数と完治された方の数がほぼ同数であるとのことだ。この動画を出した人の身元も厚生労働省のデータも僕は確かめてはいないが、これが本当だとすればやはり日本の医療システムの優秀さを示しているのではないか。
いまはどちらかというと悲観的な報道や動画がおおくて、恐怖感にとらわれている人々も多いのではないかと思う。ただ、この二つの動画にもあるように日本や大部分の先進国では多くの場合治癒しているという事実は知っておいたほうがいいだろう。
ただし、現在(3月20日ごろ)の世界の死者数を見ると致死率はだいたい4%台後半である。まだ感染していることがわかっていない人々を加味するとたぶん実際の致死率は1%前後(分母が増えるので)ではないか。とすると、普通のインフルエンザの致死率が約0.1%であることを考えると、コロナウイルスの致死率はインフルエンザの約10倍ということになり、先日アメリカの専門家が発表した数字とやはり一致している。
なので、楽観視はできない。とくにハイリスク層に属している人々は用心が必要だろう。たとえ自分がこの層に属していなくても、同居している家族にこの層に属している人がいる場合は、感染しないように注意しなければならない。
この前の世界的パンデミックが20世紀の初期にあったスペイン風邪だったので、それからちょうど100年たっている。だから現在100歳以上の人でなければこのようなパンデミックというものを経験していないので、今現在ほぼすべての人が未経験のことが起こっているわけである。
いろいろ報道されているものをみていると、イギリスのジョンソン首相の提唱した集団免疫という考え方がもっとも現実的だし、また、このウイルスの感染力の異様な強さ、速さを考えると、どんなにレストランや集会を禁止しても完全に感染の拡大を防ぐことができないのは明らで、ハーバード大学の教授が予測しているように最終的には全人類の70%は感染するだろうと僕も思う。
だからといって放っておけということではもちろんなく、今は隔離政策によって感染のピークをできるだけ先に延ばして時間を稼いで医療崩壊を防ぎつつその間にワクチンの開発を急ぐ。このウイルスはたしかに危険なウイルスではあるが感染しても治癒する人が圧倒的に多く、またそれらの人には抗体ができるのでもう命を脅かされることはない。その事実を体感的に知る国民が増えていき人口の大多数になることによって、このウイルスに対する心理的恐怖感が薄まっていき、人々は普通の生活に「徐々に」戻っていく。
そしてそのことでお金、人の流れも徐々に以前のように戻っていき、経済状況も改善されていく。僕はこういう過程をたどるだろう、というか、こういう過程を望むと望まざるにかかわらずたどらざるを得ないと思う。それが結果として集団免疫という呼び名で呼ばれることになるだろう。
問題はこの過程でハイリスク層にいるひと人をどうやって守るかで、そこは国、自治体、個人が最大限の対策を打っていくほかはない。
一つ個人がやれる有効な策は、同居しているハイリスク層の家族が一人暮らしができるなら、どこかアパートでも借りてその人を一人で生活させ、一切外出もさせず他の人と接触させないという方法もありだろう。
もちろん入居する前にその部屋を綿密に殺菌する、できれば専門の業者に殺菌してもらえれば完璧である。食料や日用必需品は家族の誰かが届けるが、渡す時も必ずマスクを着用して、絶対に直接触れないように注意すれば、感染のリスクを下げることができる。逆隔離である。
そして……このウイルスがもたらすもうひとつの懸念点である世界経済の今後がどうなるかだ。
このような地球規模のパンデミックは100年前のスペイン風邪以来人類が経験したことがないわけだが、これがもたらすかもしれない世界的な経済不況(恐慌と呼んでもいい規模のものになるのではないかと思っている)もいまだ人類が経験したことがないものになるかもしれない。
いうまでもないが、100年前と今では世界経済の規模とそれにかかわる人類の数が圧倒的に違う。今回のほうが圧倒的に、絶対的にそのインパクトが大きい。これからくる世界不況はいまだ人類が経験したことのない人跡未踏の領域、アンチャーテッドウォーター(海図のない航海)になるだろうとおもう。リーマンショックも第二次大戦前の世界恐慌もいわば一国の小さな領域の問題を起源として生じた、しかも、その主な原因は金融問題だった。
ところが今回はちがう、実際の売買、お金の流通、実需がストップすることから生まれる全地球的、全世界的規模の世界不況になる。この差は大きい。
小さい車輪は減速しても、少し力を加えればまた以前のような勢いを取り戻してすぐに回り始める。だが、その車輪が大きくなればなるほど再び回すためのエネルギーは大きなものでなければならないし、時間もかかる。今回は世界という巨大な車輪が大きく減速しているのだ。