2020年1月のブログです
*
東直己さんの『後ろ傷』(2006・双葉社)を再読しました。
昨年末に、東さんの『半端者』を久しぶりに読んで以来(ブログがありますので、よかったら読んでみてください)、不覚にも東ワールドにすっかりはまってしまい、年末年始はススキノ探偵シリーズにどっぷり浸かってしまいました。
探偵シリーズの姉妹編(?)で札幌南高の秀才を描く『ススキノ、ハーフボイルド』(2003・双葉社)(すみません、まだ、感想文が書けていません)も面白く、当然(?)、続編の本書も読んでしまいました。
主人公は北大合格が間違いなしと思われていたところが、まさかの不合格。
やけになって偏差値最下位の道央学院国際グローバル大(略してグロ大)に進学しますが、そこで自他のさまざまな偏見に気づかされ、青春の悩み(!)と直面します。
学友との交友などで新たな発見もあったりして、少しずつ精神的に成長をするわけですが、そこにススキノ探偵らの素敵なおとながからんできて、物語が展開します。
社会問題や歴史、さらには、東さんの専門だった哲学のお話なども出てきて(東さんは北大哲学科中退です)、なかなか教養あふれる(?)いい小説です。
主人公のガールフレンドとの交際も初々しく、青年の成長のお話でもあります(今どき、こんな男女はいなくなったかもしれませんが…)。
蛇足ですが、裁判所の法廷の場面も出てきて、裁判所で働いてきたじーじにはとても面白く読めました。
切ない小説でもありますが、ところどころにユーモアが散りばめられていて、ドキドキしながら読み進められます。
読後感は悪くありません。
いい小説を読めて、いい年末年始だったなと思います。 (2020.1 記)