ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が公園カウンセリングやメールカウンセリングなどをやっています

大平健『食の精神病理』2003・光文社新書-拒食、過食、孤食と「二人の自分」を考える

2025年02月03日 | 精神療法に学ぶ

 2024年2月のブログです

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 精神科医である大平健さんの『食の精神病理』(2003・光文社新書)を再読する。

 先日の能登半島地震で崩れた本棚の本の中から発掘した(?)一冊。

 ずっと読みたかったが、出版社品切れで、古本屋さんでも見つからなかった本。

 その本を、実は20年前のじーじが購入して、読んでいたらしい(?)。

 じーじ、すごい(!)。すっかり忘れていた(!)。

 購入していたことを忘れていたくらいだから、中身も当然、忘れていた(!)。

 新鮮に読ませてもらう。じーじの特権だ(!)。

 「食」に関する大平さんのさまざまな考察が、童話や昔話を例に挙げて並ぶ。

 すごく刺激的だ。

 あの童話がこう読めるのか、あの昔話はこんな意味があるのか、とびっくりさせられる。

 そこから、現代の拒食や過食の考察につながり、孤食という社会現象の理解に至る。

 大平さんの著書『豊かさの精神病理』や『顔をなくした女』などとの関連も明示されて、わかりやすい。

 大平さんはさらに、これらの先に、「本当の自分」と「身体の自分」に別れてしまっているらしい「二人の自分」について考える。

 そして、それらと新型うつとのつながりも考察する。

 その治療の一端が、早寝早起きというありふれたことであるという指摘は、楽しい。

 楽しく読めて、いろいろと考えさせられる良書だと思う。         (2024.2 記)  

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松木邦裕『摂食障害というこころ-創られた悲劇/築かれた閉塞』2008・新曜社-患者さんの健康なこころと対話する

2025年02月03日 | 心理療法に学ぶ

 2020年2月のブログです

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 精神科医で精神分析家の松木邦裕さんの『摂食障害というこころ-創られた悲劇/築かれた閉塞』(2008・新曜社)を再読しました。

 何回か読んでいるのですが、レポートは初めて。

 ようやく、少しは自分のものになってきたのかもしれません。

 松木さんが、自分が摂食障害について書くのは最後の本、というだけに、摂食障害という病いの成り立ち、病態、治療などについて、精神分析的な立場からかなり細やかな理解を示されていて、とても参考になります。

 じーじが今回、特に勉強になったのが、摂食障害の患者さんへの精神分析的な面接についての章。

 摂食障害の人との面接で留意すべき点がたくさん示されていて、勉強になります。

 たとえば、患者さんの話をよく聴くだけでは不十分、という点。

 話をよく聴くだけでもかなりの努力を要しますが、それだけでは面接は深まらないので、聴ききれない点や不思議に思う点を聴き返すべきだと説明されます。

 そうすることで初めて、患者さんが本当に考え、面接が深まり、治療が進む、といいます。卓見です。

 このことは摂食障害の患者さんだけでなく、他のパーソナリティ障害の患者さんなどにも大切なことがらだと思われました。

 これに関連して、患者さんのこころの中には、健康な部分と病気の部分があるという見方。

 患者さんの病気のこころに引っ張りまわされずに、健康なこころと対話をしていくことが大切といいます。

 その他にも勉強になることがたくさん、まるで宝箱のような章です。

 もっともっと読み込んで、いい面接ができるようになりたいと切に思いました。       (2020.2 記)

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シェイクスピアさん・中野好夫さん・松岡和子さん-じーじのじいじ日記・セレクト

2025年02月02日 | じいじ日記を書く

 2019年2月の日記です

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 このところ、シェイクスピアさんにハマっている。

 先日、『ハムレット』を読んだので、今は『リア王』(松岡和子訳・1997・ちくま文庫)に挑戦中。

 なかなか重厚な物語だが、「道化」の存在が面白い。

 『海辺のカフカ』のホシノくんみたいな感じ(ホシノくんはもっと純朴だが…)。楽しみである。

 他に、並行して読んでいる本として、

  河合隼雄・松岡和子『怪読シェイクスピア・増補版』(2011・ちくま文庫)、

  中野好夫『シェイクスピアの面白さ』(2017・講談社学芸文庫)、

  松岡和子『深読みシェイクスピア』(2016・新潮文庫)などなど。

 中野さんのエッセイには、東大で同僚だった渡辺一夫さん(渡辺さんは仏文学者で、戦争中、フランス語とラテン語で日記を書いていたというかた。加藤周一さんや大江健三郎さんの先生でもある)が出てきたりして、とても楽しい。

 また、河合さんは、あいかわらずきれのいい分析を披露していて、やはりすごいな、と感心させられる。 

 河合さんお得意のだじゃれも健在で、やはりだじゃれが好きだったらしい(?)シェイクスピアさんに負けじと頑張っておられる。

 窓の外の雪を眺めながら、毛布にくるまって読む(?)シェイクスピアさんもいいものだ。

 新潟でも冬の寒さはもう少し続きそうだ。        (2019.2 記)

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村上春樹『辺境・近境』2000・新潮文庫-その場に立って、触れて、はじめてわかることがある。

2025年02月02日 | 村上春樹さんを読む

 2024年1月のブログです

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 村上春樹さんの『辺境・近境』(2000・新潮文庫)をかなり久しぶりに再読する。

 じーじにしてはめずらしく、少し内容を覚えているような気がしていて再読が遅れたが、いざ読んでみると、やはりほとんど覚えていなくて、またまた新鮮に読んでしまった(?)。

 本の帯に、その場に立って、触れて、はじめてわかることがある。とあるが、村上さんの言いたいことは、ずばりここなのだろうと思う。

 今は、テレビやSNSなどで、なんとなくわかったような気になってしまうことが多いが、やはり本物や本当のところは、現場に行って体感しなければわからないものなのだろうと思う。

 もちろん、現場に行ったからといって、本当のところがどれだけ理解できるかは、その人のちからや知識や出会いや時期などにも左右されるのだろうが、すべてがわからないにしても、現場に立って、現場の空気を吸うことは大切なようである。

 さて、本書で、村上さんは七つの旅をする。

 メキシコやノモンハン、アメリカ、といった海外の旅や、なぜか、村上島という無人島や讃岐うどん、そして、神戸などの国内の旅。

 シリアスな旅やユーモラスな旅がいっぱいで、深刻に考えたり、笑ったり、となかなか忙しい本だ。

 個人的には、讃岐うどんの旅に出てくる雑誌「ハイファッション」の担当のマツオさんという女性が面白かった。

 すごい美人ちゃんだったら困るが(?)、どうなのだろう。

 そして、一番印象に残ったのはやはりノモンハンの旅。

 ノモンハンの事件は、日本史ではあっさりと通りすぎてしまった記憶しかないが、ご存じのように、太平洋戦争の少し前に、モンゴルのノモンハンで、満州国とモンゴルの国境争いから、日本とソ連が戦った事件というか戦争で、日本が大敗した。

 日本はこの結果を直視せず、中国侵略やアジア侵略をさらに進めて太平洋戦争に突入するが、ノモンハンの戦争は本当に悲惨で、それが刺激の一つになって、村上さんは『ねじまき鳥クロニクル』を書いたようだ。

 この旅行記も戦場の様子などが詳しく書かれていて、参考になるし、村上さんの国家の冷酷さへの糾弾と、庶民の哀しさへの共感がすごく感じられる旅行記だ。

 正月早々、いい旅行記を読めて、幸せである。         (2024.1 記)

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成田善弘『精神療法面接の多面性-学ぶこと、伝えること』2010・金剛出版-真摯な精神療法家に学ぶ

2025年02月02日 | 精神療法に学ぶ

 2019年6月のブログです

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 精神科医で精神療法家の成田善弘さんの『精神療法面接の多面性-学ぶこと、伝えること』(2010・金剛出版)を再読しました。

 この本も何回目かの再読で、付箋とアンダーラインが賑やかです。

 しかも、忘れっぽさには自信のあるじーじが、めずらしくところどころ読んだ記憶が残っていてうれしくなりました(?)(自慢になりませんね)。

 例によって、印象に残ったところを一つ、二つ。

 一つめは、精神分析について語っているところ。

 成田さんは、治療が簡易な精神療法で済むならそれでいいし、患者さんのためにもそうすべきとしながらも、精神分析の魅力について、当初、予想もしなかったことを患者と治療者の双方が知ることになる点にある、と述べます。

 精神分析をすることで、患者さんがより深く、自己と他者の関係を知ることになる、と説明されていらっしゃいますが、本当にそう感じます。

 じーじの行なっている精神分析的心理療法では、それほど深い展開にはならないのかもしれませんが、それに近い貴重な体験を積んでいきたいと思いました。

 もう一つは、治療から援助関係への変化ということについて。

 成田さんはいろいろな精神療法を行なっているうちに、治療をするというより、患者さんが一所懸命に努力していることを援助するという姿勢に自身が変わってきた、と述べます。

 上から目線の治療ではなく、患者さんとの協働関係、患者さんの頑張りを援助するという感じがいいようです。

 成田さんの患者さんにより添う姿勢が伝わってきました。

 また、本書では書評も取り上げられていて、じーじがブログでご紹介した精神科医で精神療法家の下坂幸三さんの『フロイト再考』や精神科医で遊戯療法家の山中康裕さんの『深奥なる心理臨床のために』なども紹介されています。 

 成田さんはこう読むのかと、大家の読み方が学べて、勉強になります。

 さらに勉強をしていこうと思いました。        (2019.6 記)

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 2022年5月の追記です

 改めて思うのは、心理療法はクライエントさんの自己理解、対人関係の理解の作業に根気強くつきあうことではないかということ。

 カウンセラーができることは、どんな事態が生じようとも、そういうクライエントさんの努力につきあい続けることなのかなあ、と思います。      (2022.5 記)

 

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ハムレット・文学のちから・組織人-じーじのじいじ日記・セレクト

2025年02月01日 | じいじ日記を書く

 2019年2月の日記です

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 シェイクスピア(福田恆存訳)『ハムレット』(1967・新潮文庫)を読了。

 緊張感のあるすごい物語。

 文章がすばらしく(翻訳のうまさもあると思うが…)、行間にただよってくる雰囲気がすごいと思う。

 じっくりと味わう物語。

 いろいろな感想を持ったが、今どきの世相のせいか、組織人のことを考える。

 出てくる家来たちのうちで、王様にへつらって死んでしまう者もいれば、最後を看取る者もいる。

 連想をしたのは国家公務員。

 いい大学を出て、いいお役所に入ったのに、出世のためか、言いなりになって、不正をしてしまう者。黙って見ている者。 

 地方公務員も、市民や弱い者、子どもを守れずに、悪しきおとなに負けてしまう者。

 時代は変わっても、人は変わらないのか。

 いや、今のほうが節操がないというか…。

 どっちを向いて仕事をしているんだろう、と思う。

 権力か、暴力か、それとも、弱い立場の人々か。

 公務員は採用の時に、国民のために、あるいは、住民のために働く、と宣誓をしたはず。

 組織や権力に振り回されるあわれな人々の姿をシェイクスピアさんはすでに描いているが、それを糧にできないのは悲しい。

 こころして読んでいきたい。          (2019.2 記)

 

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能登半島地震より、自民党のキックバックより、大谷くんの英語かい(?)-じーじのじいじ日記・セレクト

2025年02月01日 | じいじ日記を書く

 2024年1月の日記です

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 夕方、ニュースを見ていると、某テレビ局のトップニュースが、大谷くんの英語のスピーチがうまくなった、というもの。

 オイ、オイ、オイ。

 それでいいんかい(?)。

 能登半島の地震や自民党のキックバックはどうなったんだい?

 大谷くんのニュースを流せば、それは視聴率が上がるだろうが、マスコミがそれでいいのだろうか(?)。

 能登半島地震で苦労をしている人々のことは人ごとではないし、自民党のキックバックがどうなるのかは政治の大きな問題だ。

 それが後回しにされている。

 それがマスコミの姿なのか、とがっかりする。

 じーじだって、大谷くんは嫌いではないが、それより今の日本では、地震や自民党の問題だろうと思う。

 辺野古やマイナ保険証、原発問題、その他もろもろ、問題は山積だ。

 マスコミは視聴率より、もっと大切にしなければならないことがいっぱいあると思う。

 頑張れ!マスコミ。          (2024.1 記)

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 2024年2月の追記です

 能登半島地震から1か月。

 復興はなかなか進まない。

 そんな中、政府が打ち出した、北陸応援割。

 お金での応援も大事だが、それより仮設住宅や街の再建、そして、生活全般の回復のほうが先ではないか。

 精神分析では、悲しみをきちんと悲しまないと、こころは躁的防衛を経て、鬱になるという。

 悲しみを十分に受け容れないで、上っ面な応援などをしていると、こころは壊れてしまうだろう。

 お金での応援は大切だが、それ以上に地元の人々の大変さを思い、考え、できることを少しずつ応援することが重要になると思う。      (2024.2 記)

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成田善弘さん・フロイトさん・下坂幸三さん-じーじのカウンセリング日記

2025年02月01日 | じいじ日記を書く

 2019年2月の日記です

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 精神科医で精神療法家の成田善弘さんの『精神療法面接の多面性-学ぶこと、伝えること』(2010・金剛出版)を再読した。

 ここのところ、成田さんの本を続けて読んでいて、境界例や強迫症、解離などを中心としたクライエントさんの面接について復習をする。

 さらに、ケースカンファレンスのあり方も学び直し、実践と理論の磨き方についても勉強させられる。

 成田さんが精神科医で精神療法家の下坂幸三さんの『フロイト再読』(2007・金剛出版)について書いているところがあり、何日か前に偶然、本棚でこの本を見かけて、さろそろ再読をしようと思ったことを思い出す。

 こういう偶然はやはりユングさんの世界なのかな、と思ったりする。

 こうやって、どんどん本の世界が広がっていくのは楽しい。

 そういえば、精神分析のビオンさんやメルツアーさんから詩人キーツさんに、キーツさんからシェイクスピアさんへという広がりも体験中で、現在、この年になって初めて『ハムレット』(福田恆存訳・1967・新潮文庫)を読んでいる。

 なかなか緊張感のある物語で、もう少し若い時に読んでいたらな、と反省をする。

 しかし、今からでも十分、面白そうでもある。

 楽しみ、楽しみ。

 そして、読書のあとのビールも楽しみ、楽しみ。          (2019.2 記)

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