長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

あの3日間、彼女は何と闘っていたのか  映画『スケバン刑事 コードネーム=麻宮サキ』の研究

2012年04月12日 22時31分40秒 | ふつうじゃない映画
 春だは~る~だ~よ~。どうもこんばんは、そうだいです。みなさま、今日も一日お疲れさまでございました!

 いや~、本日は平日だというのに、わたくしは休みをいただいて花見こみの東京散歩としゃれこんでしまいました。
 中目黒。ちょっとふつうの木曜日とは信じられないような大にぎわいでしたよ!? 暑いぐらいの陽気だったし最高でしたね~。

 そして、新宿に行って観てきたぜ。あの映画『篤姫ナンバー1』を。

 なんだか、しご~くまっとうな娯楽映画でしたよ。そんなにひどくもないし、職業的にわかりやすく作られた作品とお見受けしましたので、メッセージみたいなものもすっきりと伝わってくるクライマックスでよかったと思います。

 ただ、しいて言うのならば……映画にするまでのこともなかったような。ウヒョー根本的!!
 物語全体のサイズが非常にTV 的だというかなんというか。きれいにまとまっていても、まとまった全体像がものすごくこぢんまりしてるんですよ。

 でもさぁ、いまや堂々たるオッサンとなった私ででさえものごころのついていなかった、やたら元気のあった昭和戦後の日本の映画界って、こういう「あぁ~、おもしろかった。」っていうだけのプログラムがドバドバ作られてたわけだったんでしょ? エノケンだのクレイジーだのドリフだのっていう、偉大なる喜劇映画の系譜ですよ。

 それにくらべたら、21世紀のいまどきはずいぶんとせちがらい世の中になっちゃいましたよねぇ……
 こういったベタベタの喜劇映画をやってくれる会社も芸人さんも役者さんも少なくなっちゃったし、やったらやったで観てもいないような輩から「どうせつまんねぇだろ~」とか「大コケ必至~」とか「終わってる~」とか言われちゃうんですから。
 哀しいことよ……それを知っててあえてやる勇気を見ろってんだよ。こんな、単純に楽しんでもらうためだけに作られた作品をよってたかっていじめるなんて、大人げないとか言う以前に人としての格の問題よ。

 1800円かけて映画を観ることの「たのしみ」って、必ずしも「世間的に『あたり』の映画をチェックする」ってことだけじゃないですよね。

 要するに、「日本円1800円」というものの価値は時代によっても人によっても、それを払うタイミングによっても大きく変動するものなんです。いちがいに「高い!」とも「安い!」とも言えないわけでして。

 大事なのは! 「自分が1800円はらった分以上に楽しんだぞ!!」という手ごたえを回収することなんです。これはもう、どんなに無理やりにでも一命を賭してふんづかんでから鼻唄まじりで家に帰らなければなりません。作品の絶対的な価値じゃなくて、自分自身との戦いの問題ですよ。大げさな言いかた!!

 そういうことで言いますと、この『篤姫ナンバー1』は非常に親切設計な作品であるわけなんです。良くも悪くもわかりやすい。
 夜の蝶の世界を舞台にしてはいるのですが、それこそ、お子さんといっしょに観てもまったく問題ないくらいに、味が「カレーの王子さま」級にまっきっきのマイルドさに仕上がっております。ホメて……る、うん。

 こういったものって、「かわいくてちょっとばかな小動物のくせ」を見たときと一緒で、「その時の自分のコンディションがわかる格好のリトマス試験紙」になるんですよねぇ。調子のいいときは「おぉ~、意味がなくていいねぇ。」となるし、余裕のないときは「てめぇ、すぐに消えねぇとショットガンでどたまぶち抜くぞ!!」となるわけです。カルシウムとらないとねぇ。

 だから、この映画にダンディ坂野さんが出ていることの慧眼っていったらないんですね。いい役柄なんだ、坂野さん。

 と、まぁいろいろ言ってはいるんですけど、どうやらこのまんまでいくと本題に入れないまま終わりになっちゃいそうですねぇ……
 よっしゃ、ここで一発、ドカンと『スケバン刑事』のほうのケリをつけちゃいましょう!! 『篤姫ナンバー1』については、またあらためて次回ということで。

 単刀直入に言いますと、『スケバン刑事 コードネーム=麻宮サキ』の悲劇は、あらゆる面で『篤姫ナンバー1』とはまったく対極にある問題が発生していたことに起因していました。

 も~とにかく、今回はいろいろとくっちゃべっていきますよぉ~。いつもですけど。

 以下、前にもあげた項目ごとにぶつぶつつぶやいてまいりたいと思います。

 あっのっころっはぁ~、ハッ!!


1、「アイドル映画」にしたくなかった単独上映形式
 通常の全国上映プログラムの3分の1の公開規模だった

 なんてったって2006年当時の松浦さんが主演なのですから、製作した東映の系列映画館、全国300館規模で大々的に展開してもよかったはずの『スケバン刑事』だったのですが、実状は東映系のシネコンだけに限定したせいぜい100館前後での上映になっていました。
 これはおそらく、それまでのハロプロ陣営が得意としていた1時間前後のアイドル映画の2本立てで全国上映する形式の踏襲を「あえて」避けて、深作健太監督と「女優」松浦亜弥がタッグを組んだ純然たるアクション映画をつくりたいという強い意気込みが作り手側にあったからなのではないでしょうか。その結果、作品は99分の長編映画として独り立ちしなければならなくなったのです。
 また、そもそも松浦さんの映画初出演作『青の炎』(2003年)からして、ハロプロとジャニーズとの豪華競演でありながらもアイドル色を極力排除した『太陽がいっぱい』っぽい犯罪劇に仕上がっていたのですから、松浦さんがアイドル色のない演技に挑戦するというスタイルはさほど冒険的なものでもなかったのだと思います。まぁ、今になって考えれば、そういう「アイドルあやや」主演のハチャメチャ映画も観たかったような気はするのですが、松浦さんは「アイドル歌手」と「映画女優」との仕事を混同させることはいっさいなかったのです。

 ただし、「アイドル映画ですよ~☆」の方向を捨てたために上映規模が小さくなってしまったことは回避しようのない必然だったと思います。それをさして「興行的に失敗!」ってけなすのはおかしいですよねぇ? もともと公開当初から他の大作映画とはベースが違うんですから。
 むしろ問題は、映画を観に来たお客さんの多くが「う~ん、なんか観たかったあややの映画とちがう。怖い!」といった印象を持ってしまったことなのではないでしょうか?


2、「あやや主演映画!」のイメージと内容とのギャップ
 異常に硬派な「スケバン刑事」シリーズの正式続編

 この映画は、前回の物語タイムスケジュールをざっとごらんいただいてもわかるように、かつて日本全国で熱狂的なブームを巻き起こした「スケバン刑事」シリーズ、特に1985年4~10月に放送された TVドラマ『スケバン刑事』第1シリーズ(主演・斉藤由貴)のものすんごくストレートな続編となっています。
 ご存知の通り、もともとは昨年2011年の急逝が惜しまれる和田慎二先生の手によって1976~82年に白泉社『花とゆめ』で連載されていたバイオレンスアクション少女マンガだった『スケバン刑事』は、1985~87年に3つの TVシリーズが放映されて大人気を博し、映画も2本製作されるという活況を呈していました。
 この一連のシリーズの主人公は鋼鉄製のヨーヨーを自由自在に操って学園にはびこる犯罪をうちやぶる警視庁「裏公認」のスケバン刑事・麻宮サキなのですが、この「麻宮サキ」という名前はスケバン刑事の「継ぎ名」になっており、TV第2シリーズでは南野陽子、第3シリーズでは浅香唯が「麻宮サキ」を名乗る少女を演じていました。
 ちなみに、わたくしそうだいが記憶しているスケバン刑事は3代目浅香唯さんの最終回付近がかろうじて……っていうていたらくです。だって、アクションばっかで怖かったんだもん!

 さて、そんなスケバン刑事の歴史の中で、我らが松浦さんが演じた「少女K」は4代目麻宮サキということになっており、その母親を初代だった斉藤さんが演じていて、しかも彼女も「かつてスケバン刑事だった」という経歴が劇中で語られており、この映画『スケバン刑事 コードネーム=麻宮サキ』が、1985年の最終回で行方不明になっていた「初代麻宮サキ」のその後を語るものになっていることは明らかです。

 つまり、本人そのものはチラッとしか出てきていないのですが、この物語はトータルでながめれば、突然の事情で4代目にならざるをえなくなった松浦さんよりも、その母親のほうが大きな存在感を持っている作品になっていて、母親の代わりにエッチラオッチラがんばっている松浦さんの姿を「特別の感情」をもって見つめている、吉良警部こと竹内力アニィのほうがよっぽど主人公らしい顔をしているわけなのです。

 要するに、これは出演者も観客もひっくるめて、大人の方々が「1980年代は遠くになりにけり……」としみじみ実感するために作られたような『その後のスケバン刑事』であり、この作品の中で松浦さんが演じている主人公自体は、言ってみれば「まぁ~がんばってテキトーに事件を解決してくれたらいいよ~。」的な、カヤの外に置かれたきわめてど~でもいいお飾り的ポジションにあるといっても過言ではないのです。

 これじゃあ松浦さんの努力もむくわれねぇよ。自分のことを子ども扱いする大人ほど、子どもの逆鱗に触れる存在はありません。
 出演者も観客もひっくるめて、この映画ではじめて「スケバン刑事」シリーズに触れる若い人たちがなんとな~く「すっきりしない気分」になる理由のひとつが、まずこの置いてきぼりな作品構造にあるわけなのです。「いや、知らねぇし!」みたいな。


3、松浦さんが出ずっぱりになれなかった内容
 当時の過密スケジュールがわざわいした?

 こりゃあもう読んで字のごとくなんですが、2006年の松浦さんはまさしくそのキャリアの中でも最も忙しい時期の渦中にあり、「ソロ歌手・松浦亜弥」としての活動はもちのろんのこと、映画公開の3ヶ月前にあたる6月には、当時のモーニング娘。第5代リーダー・藤本美貴さんとのデュオユニット「GAM (ギャム)」も結成していて、しかも前年の2005年にできた安倍なつみ・後藤真希・石川梨華との4人組スペシャルユニット「DEF.DIVA (デフ・ディヴァ)」の活動も続いていたため、「3足のわらじ」の上にさらに「映画の主人公!」という1足をつけたしてケンタウロスのごとき非人間的なスケジュールに身を投じていたのです。これを20歳の娘さんがやるんだぜ!?

 これで、99分のアクション映画で出ずっぱりの主人公をやりきるのはなかなか至難の業なんじゃないでしょうか。
 実際、結果としてこの『スケバン刑事』の中では、物語中盤、開始44分から58分にかけてのくだりが、「松浦さんでない人物が主人公となっている」決定的な空白ゾーンとなってしまっているのです。この部分での松浦さんは、完全に物語の聞き手にまわっていて存在感がびっくりするほど希薄。実にわかりやすい「挿入歌が流れて登場人物たちが無言で街をさまようシーン」なんかが入っちゃうし、典型的な「休憩タイム」ですね。
 んでもって、そこが松浦さんだけの休憩タイムだったらいいんですけど、と同時にどうしようもないレベルで「観客の集中力も休憩タイム」になってしまっているので、そこまで松浦さんが引っぱってきていた緊張感のあれこれが「ブッツン!!」と、それこそ早朝の剣道稽古で武道館内にその音がひびきわたったというコーチの塚口さん(48歳、酒屋経営)のアキレス腱断裂のようにぶっちぎれてしまうわけなのです。塚口さん?
 人間はけっこうな労力をもちいて集中力を上げなければならないので、こういった局面におちいってしまうと、そこからまたエンジンをあたためなおして復活させるのはそうとう厳しいものがあります。
 「あれ~、で、この映画なにやってんだっけ?」みたいなことになっちゃうんですよ。これは実にキツい。

 え? たった14分じゃないか、そんなのたいしたことないだろって?

 それはそうです。10~20分のあいだ主人公が消えるなんていうことは、世界に名だたる傑作映画の中ででも、調べてみれば意外とけっこうあることなのかも知れません。それ自体は決して、映画がダメになってしまう要因そのものではないはずなのです。

 ただ、それは、「主人公に代わって観客の興味を引っぱってくれるストーリーや登場人物」が他にちゃんといたら、のお話!


4、主人公が入れ替わって物語の軸がぶれてしまった中盤
 「スケバン刑事」シリーズでありながらまったく関係のない話が展開

 前回のタイムスケジュールを見てのとおり、問題の14分間の主人公になってしまった人物は、松浦さんが潜入した学園でいじめられていた生徒・今野多英を演じていた岡田唯さんでした。
 岡田さんは言わずもがな、アイドルユニット「美勇伝」のメンバーだった方なのですが、天下のハロー!プロジェクトの一員である以上、その基礎にどうしようもない「かわいさ」はあったものの、同時にいじめの対象にならないこともない「もっさり感」があったために、このいじめられっ子の役に大抜擢されたものと思われます。このキャスティングは非常に的を得ていてすばらしかったですね。

 なので岡田さんの演技自体は問題ないのですが、松浦さんが追いかけている「連続爆弾事件」のかげに「陰湿ないじめ」があり、それをひた隠しにしようとする「学園の体質」があったり、いじめられる側の復讐心につけこんだ「謎のカリスマ」の存在があったり……といううんぬんが始まったあたりから、明らかにストーリーが「スペックオーバー」の感をあらわすようになってきます。

 わかりやすく整理しますと、それまでは、

「突然『スケバン刑事』になっちゃった少女が奮闘する物語」

 だったものが、中盤に入って一気に、

「現代のいじめの構図やインターネットにはびこる無数の悪意の存在に警鐘を鳴らす物語」

 に拡大しちゃったんですね。
 そんなもん、きのうきょうスケバン刑事になった松浦さんにつきつけられても、ねぇ!? アメリカから来たばっかなんだぜ。


5、「物語上の時間が『3日間』」と非常にタイト
 たった3日間でヨーヨー達人になれ!?

 問題の中盤に入るまでの約45分のあいだ、映画は「ヨーヨーのあつかいがからっきしダメな主人公」といったあたりを比較的ていねいに描写しています。基本に「半人前にもなれていない松浦刑事の成長物語」という骨格があるんですね。
 ところが、映画の物語は「3日間以内に事件を解決しなければならない」設定なので、とてもじゃないですがその時間内に松浦さんが歴代のスケバン刑事に匹敵する技量を会得することなんてムリです。

 その結果、前半の成長物語路線はどうなったのかっつうと……うやむやになっちゃった!

 結局、時間を追っていけば2日目まで鋼鉄ヨーヨーもうまく操作できず、男に後ろから殴られてなにもできずに気絶していたような娘ッコが、3日目になったとたんに自分よりずっと昔からヨーヨーを得意武器としていたはずの公安のチャーミー石川刑事に伍するテクニックを駆使するスケバン刑事にしあがっているという、それまでのあれやこれやを製作陣みずからが紙切れのように破り捨ててしまうあきれた展開になってしまったわけなのです。

 「3日間」というスリル要素を強引に入れてしまったために、せっかくおもしろくなるはずだった松浦さんの成長物語がまるごと「ないもの」に。「主人公だからなんでもアリ!」という、ど~しようもない脚本の甘さが露呈してしまっていますね。これじゃあわざわボンデージ姿にまでなって奮闘したチャーミー刑事の努力も浮かばれねぇよ。ぜってー勝てねーんだもん!

 主人公の圧倒的なパワー差っていうのは、『ジョジョの奇妙な冒険・第3部』のように、主人公キャラクターに確立された魅力と説得力があって初めて観る側も納得するんであってね……「なんとなく気分で最強になった。」じゃあ応援する気にもなりゃしません。


6、タイムリミットサスペンスでありながら終盤がグダグダ
 「具体的に時間期限がきてなにが怖いのか」という緊迫感がぜんぜんわかない

 これは最低ですよ……
 だって、序盤からひっぱりにひっぱっていたタイムリミットの正体が、序盤とまったく同じ「爆発」だったうえに未遂に終わっちゃうんだもの。しかも、真犯人はへらへら顔で「そんなものはおとりだったんだよ~ん。」という展開に走り、物語はタイムリミットの話なんか最初っからなかったかのように残り20分ほどのクライマックスに突入していくのです。

 ここで真犯人が提示した「真の犯行計画」が、観客の誰もが想像だにしなかったものすごいものだったら納得もいくんですけど……アレでしょ? も~アホらしくて怒る気にもなりゃしません。

 後半のグッダグダぶりについていろいろ言いたいことはあるのですが、はっきり言ってすべての責任は役者でも監督でもなく「脚本」に起因しているとしか思えません。

 みんな~、「いじめっこ」と「いじめられっこ」と「いじめを無視している教師たち」が仲良く一緒に集まってガヤガヤやっている集会って、いっくらフィクションの世界だとしても、あっていいと思う~?
 親友が爆弾の事故で廃人同然の身体になったというのに、他人を説得する手段に「爆弾」を選択するひとって、いると思う~?

 そうなんです……脚本をやった人物は、クライマックスに起こるすべてのありえないほど都合のいい展開を「頭のおかしな真犯人」と「若者をすべからく思考停止にしてしまうインターネットの魔力」のせいにしてしまい、松浦さんの敵になる存在を全部ごった煮にしてしまっているのです。学園内のいじめが世間にもれることさえビビリまくっていた先生一同が、警察が封鎖してまで止めようとしている非合法の集会にふんぞり返って出席するわけねぇだろ、ボケンダラ!!

 これはライムスターの宇多丸さんの必殺技なのであんまり言いたくはないのですが、この映画の脚本を書いた人は「インターネット=若者の思考能力を完全停止させて犯罪の道へとひた走らせてしまう悪魔の機械」というコッテコテのテンプレートを信じきってしまっている典型的な「話の通じないオジン」です。信じていないものをあえて自分の作品に投入しているのなら、ウソをつくのが絶望的にヘタな「世間をナメきったひと」。

 脚本の人が昔に松田優作の作品を手がけていたっていうのも、なんとなくわかる気がするような。つまりはこの人、優作さんのようにきれいに舞台を去ることができなかった「自由を愛する昭和の一匹狼」が、その後21世紀に入っていったいどんな感じに老いさらばえていくのか、というところを身をもって体現しているんですね。「無差別犯罪」も「いじめ」も、自分の理解できない問題はまるっと「ぜ~んぶ敵!」にしてしまって勝手に安心するかわいそうなご老人なのです。いたわってさしあげましょう。


7、「アイドル映画」は「男優」が命!!
 竹内力さんを除いた男たちがのきなみパッとしない

 そんなお人が脚本を担当しているのですから、物語の中でも比較的「人間らしく描かれている」キャラクターは、自然と世代の近い、かつてやんちゃをして今は不自由な片脚をひきずって苦い顔をしまくっている吉良警部こと竹内力アニィとなります。

 ところが! アニィと特別出演の「暗闇警視」こと長門裕之さんをのぞいた男俳優の皆さんが演じている役が、そろいもそろって軒並み全員アホ。いや、そんな言い方をしたらアホの方々に失礼にあたるくらいに脳細胞がない「デクのバー」ばっかなのです。
 私、この映画に出演している俳優の仁科貴さんなんかけっこう好きなのですが、よくぞまぁ~その仁科さんをこんなにくだらない役にあててくれました。これほど俳優さんを湯水のように無駄遣いする映画も珍しいですよ。

 私は無論のことプロの俳優ではないの大きな口をたたくことはできないのですが、もし事前に台本を読んでいたとしら、たとえ松浦亜弥さんやチャーミー石川さんが出演していると言っても、この『スケバン刑事』への「吉良警部役以外での出演」だけは丁重にお断りするのが「正しいプロ意識」なんじゃないかと思うんですけど。

 悪役だとしても悪役なりの魅力を持たせてあげるのがいっぱしの脚本家だと思うんですけど、そんな手間さえかけなかったこの作品での男優陣は、「魅力ゼロ、出た甲斐ゼロ」の最悪ヤローばっかになっているところがあまりにも哀しいですね。
 とどのつまり、この脚本に登場した「わるいやつら」は、悪役としてのちゃんとした人格さえ作者からさずかっていないのです。なんでかって? 書いた人がハナっからそういう人たちを理解しようとしてないから。
 こうなっちゃうと、物語の中でいじめを隠蔽しようとする教師陣でさえなんとなくかわいらしく見えてきます。もっと救いようのない「大人の皮をかぶった無責任ボーヤ」がこの映画の舞台裏にいるんですもん。教師陣はくさっても学園を経営してますからね。

 特にひどいのが他ならぬ「真犯人」役の窪塚俊介くんなのですが、こいつはも~、「世間なんかつまんない、社会なんかバカばっか。」と景気のいいタンカをきってカリスマきどっている犯罪者であるのにもかかわらず、いざ実際に自分で計画を実行してみると、そんな社会で毎日のように起こってニュースで流れた翌日にはきれいさっぱり世間の記憶から忘れ去られてしまうような、実にファッキンどうでもいいベタプランしか思いつかない典型的な「くちばっかしクン」です。

 この人ねぇ、考え方といい「爆弾」といい「真の犯行計画の正体」といい、実はさまざまなポイントで、『スケバン刑事』の2年後に公開されて世界的な支持を得たあのハリウッド映画『ダークナイト』で、ヒース=レジャーが命がけで演じきった 00年代最高の悪役とも言われる「ジョーカー」に通じるものを持っているキャラクターで、

「人間なんてもろいよね。みんなすぐにバランスを崩してくずれ落ちる。ぼくは後ろからちょっとみんなの背中を押してみるだけ。」

 という劇中での発言なんて、まんまおんなじことをジョーカーが自身の最後の決めゼリフとして言い放っているんですよ。

 ところが!! だからと言って、この『スケバン刑事』の騎村時郎(きむらじろう)というキャラクターが『ダークナイト』のジョーカーのさきがけになっている! な~んてことはお尻の穴が裂けても言えないダメっぷりをいかんなく発揮しているのです。そういう意味では、その小人物ぶりが実に日本的ですばらしいです。1ミクロンも印象の残らないカスですけど。

 これはねぇ~、当時、俳優業を始めて2年しかたっていなかった俊介くんの演技力がつたないとかが原因なんじゃありません。全面的にこんなカッスカスの人間、穀類にたとえると「イヌビエ」くらいの栄養価しかないやつしか思いつかなかった物書きの責任です。えっ、ジョーカーは? ジョーカーはバリバリの「ひとめぼれ」ですよ!!


 なんかじょじょ~にヒートアップしちゃったんですけどね。

 この映画は私そうだいに、「老害とはなにか。」という、日本が現在直面している大問題を如実につきつける、すばらしい経験をさずけてくれました。これには感謝しなければなりません。

 そして、そんなとばっちりを受けてしまったがために、さまざまな成功要因があったはずの映画『スケバン刑事 コードネーム=麻宮サキ』はみごとにドンガラガッシャ~ンと「残念な結果」に終わってしまったのです。

 要するに、「アイドル映画」というパッケージかなぐり捨てた以上は、ちゃんとした映画としての「中身」が伴っていなければならないということなんですな。たいした勉強もしていないくせに「昔はよかった。今は悪くなった!」ばっかりしか言うことがない99分なんか丁重にあんたの脳内にお返しします、今をがんばって生きている人たちにカラむのはやめていただきたいというお話なんです。


 映画『スケバン刑事』のあれこれは、以上でございます!!

 また今回も長くなっちゃったし、なんだか異様に鼻息が荒くなってしまいました。
 松浦亜弥さんの今後の活躍を心から応援させていただきつつ、牛乳とにぼしでカルシウムを補給しながら眠りにつきたいと思います。


 じゃあ次回は、そんな『スケバン刑事』の中でも、体当たりのボンデージ姿で実に狡猾に「ひとり勝ち」に近い収穫をもぎ取っていったチャーミー石川梨華さんがその6年後に再び銀幕に返り咲くことになった、現在公開中の映画『篤姫ナンバー1』についてのあれこれを、少しだけやりましょうか。

 ちょっと、感心したところもあったのよねェ。『スケバン刑事』よりはよっぽど俳優さんが幸せそうな映画でしたよ~!
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おひまな~ら~、見てよね~  映画『スケバン刑事 コードネーム=麻宮サキ』捜査調書

2012年04月11日 02時07分49秒 | ふつうじゃない映画
 春もたけなわ~。どうもこんばんは、そうだいでございます。みなさま、今日もいい日になりましたか?

 新たな出逢いがあり、人生の新章が開幕することも多い季節なのですが、わが『長岡京エイリアン』はあいも変わらず同じ話題が続いております。

 ギャ~、ごめんなさい! ほんとはこの回できっちりおしまいにするつもりだったんですけど、わかりやすくするつもりで準備したもろもろの分量が異様に多くなってしまったので、具体的なあれこれはまた次回ということで……

 もう、いったいどんだけ松浦さんのことが好きだと言うのでしょうか。
 必ずしもそればかりではないんですけれども、ど~も、この映画は私の心の闇のなにかを強く掻き立てるサムスィングを持っているのであります。

 にしても長すぎ……もともとこの企画、満を持して公開が開始された映画『篤姫ナンバー1』を観に行くための助走として軽くあつかうつもりで始めたものだったんですけど、もう映画を観るつもりの日が間近に迫ってきてるよ!

 ……え? もっちのろん!! ちゃんと映画館に観に行きますよ、わたくしは。
 こういう作品がちゃんと興行として成り立っていてこその平和! 2012年の春の醍醐味だと思うんですよねぇ~。
 小川麻琴さんは出てこないのか。吉澤さんが出るのならちゃんと隣に小川さんがいなきゃあ!!



映画『スケバン刑事 コードネーム=麻宮サキ』にかんするあれやこれや

あらすじ
 爆発物をめぐるうわさで揺れる私立聖泉学園高等学校に潜入した特命刑事が渋谷の雑踏で爆死した。アングラサイトにアクセスした生徒たちを追跡した矢先の殉職だった。サイト上では不気味に時を刻むカウンターが。
 そのころ、ニューヨークから1人の凶暴な少女「K」が日本に強制送還される。「K」はアメリカで逮捕された母親を救うため、警視庁の特務機関の指令を受け、「スケバン刑事・麻宮サキ」として聖泉学園に潜入することになった。 


キャスト(年齢は映画公開当時のもの)

K          …… 松浦 亜弥(20歳)
秋山レイカ     …… 石川 梨華(21歳)
吉良和俊警部   …… 竹内 力(42歳)
神田琴美      …… 三好 絵梨香(21歳)
今野多英      …… 岡田 唯(18歳)
騎村時郎      …… 窪塚 俊介(24歳)
暗闇警視      …… 長門 裕之(72歳)
K の母       …… 斉藤 由貴(40歳)
前任の特命刑事 …… 大谷 雅恵(24歳)


人生の役にたつ可能性のはなはだ低い『スケバン刑事 コードネーム=麻宮サキ』タイムスケジュール

(実際の上映時間)
00:00~02    前任の特命刑事が渋谷の交差点で爆死する

00:02~04    シルエット演出のカッコいいオープニングタイトル

00:04~10   (作中の時間は冒頭の爆死事件のだいたい1週間後くらい)
        CIA の手によりアメリカから強制送還された不法滞在の少女「K 」が警視庁・吉良警部の保護に置かれる
        K は収容時に11人の警察官を病院送りにしている筋金入りの暴力不良少女
        K は母親とともに13年間アメリカに不法滞在しており、母親は現在、スパイ容疑で逮捕されている
        CIA の捜査官と吉良警部との会話から、K の母がかつて日本で「非正規の警察官」として活動していたことがわかる
        K はスキをついて脱走をはかるが、吉良警部の機転をきかせた作戦で再び拘束される

00:10~18   (前シーン・K の帰国の翌日)
        吉良警部は目覚めたK に、唐突に「警視庁特務機関『K (くらやみ)機関』特命刑事」任命の辞令をくだす
        K 機関とは、少年犯罪の解決を目的に、「未成年の特命刑事」を学校などに潜入させて捜査する極秘の警察機関だった
        K 機関はかねてより東京・渋谷の「私立聖泉学園高等学校」で、非合法の爆発物情報アングラサイトにからんだ不穏なうわさを捜査の対象としていた
        だがしかし、そのために潜入していた前任の特命刑事が爆殺されていた
        アングラサイトでは特命刑事の殉職直後から「意味不明のカウントダウン」がはじまっており、このやり取りの時点では「残り62時間35分」がきざまれていた
        吉良警部はこのカウントダウンがなんらかの犯行予告であるとにらみ、K に3日間の聖泉学園への潜入捜査を指令する
        突然任命されたK は当然拒否するが、「事件を解決したらアメリカの母親を司法取引で釈放する。」と言われ、母のためにしぶしぶ承諾する
        K は潜入のためのセーラー服と携帯電話と「麻宮サキ」という偽名を受け取り、非常用の武器として警視庁特製ヨーヨーももらう
        ※この時点ではK はヨーヨーをまったくあつかえない

00:18~22   (前シーンの翌朝・潜入第1日目)
        サキはさっそく聖泉学園に転入するが、聖泉の制服がブレザーだったために初日から思いっきり目立つ
        サキは同じクラスで苛烈ないじめの対象となっている今野多英と、いじめグループの中心人物である秋山レイカの存在を知る
        サキは学園の廊下で謎めいた雰囲気をはなつ用務員の青年に出会う

00:22~32   (前シーンの数時間後・1日目の放課後・カウントダウンは「残り43時間54分」)
        サキは多英をいじめるグループにさっそくガツンといわして一気にかたづける
        サキは助けた多英から、殉職した特命刑事が化学部の部員2名と接触した直後に爆死したことを聞かされる
        サキはくだんのアングラサイトにアクセスして自作の時限爆弾を作っていた部員の1人・東山をショッピングモールで確保する
        ※この時点ではサキはヨーヨーをあつかえないことはないが、操作をあやまって失敗するレベル
        が、化学部のもう1人の部員・天木は校舎で爆弾を爆発させたあとに行方不明になる

00:32~38   (前シーンの数時間後・1日目の夜)
        吉良警部がコンビニでサキに接触し、取り調べで東山がアングラサイトで「ロメオ」と名乗る人物から爆発物の材料を受け取ったと語ったことを伝える
        と同時に、少年犯罪担当のK 機関とは別に、テロ対策の公安警察からも特命刑事が潜入しているらしいという情報をサキに教える
        サキは帰り道のバスの中で用務員の青年と出会い、なぜかバロックのオルガン曲のはいった iポッドを無言でわたされる

00:38~42   (前シーンの直後・1日目の夜22時)
        アングラサイトで突然「イベントの生中継」がはじまり、廃工場におびき出された公安の刑事2名が謎の集団に虐殺される映像が流される
        謎の集団はアングラサイトのカリスマ「ロメオ」を信奉する武装グループであり、ロメオの正体はサキに接近した用務員・騎村時郎だった
        また、学園に潜入した「公安の特命刑事」の正体は秋山レイカだったのだが、時郎に心を奪われたレイカは任務を捨てて完全に時郎の奴隷になっていた
        生中継の直後、サキは取り調べのあとに開放された東山の安否を危惧して東山の自宅に急行するが、東山を拉致する武装グループの攻撃にあえなく敗れる
        ※この時点ではサキは武装グループのクンフー使いに軽くあしらわれており、ヨーヨーを使うひまもなくノビてしまっている

00:42~58   (前シーンの翌日・2日目・カウントダウンは「残り27時間15分」)
        「前日の放課後に校舎で爆弾が爆発し、さらに生徒が2名行方不明になっている」にもかかわらず聖泉学園は普通に授業をやっている
        サキは登校していない多英を心配し、授業をフケて街に出て多英をさがす
        ※ここでGAM による挿入歌『蜃気楼ロマンス』が1コーラスしっとりと流れる
        多英はサキに、ケータイのメールで「1年前に学園で爆弾を爆発させた」親友・神田琴美の話をかたる

       (ここから、多英と琴美をメインにすえた1年前のあれこれ回想シーンがはじまる)
        多英と琴美はともに連日の厳しいいじめに耐える仲間だったが、全国のいじめにあう生徒たちと想いを共有するためのサイトを立ち上げていた
        予想を超えたアクセス数の多さから、全国の学校でいじめが起きていることに憤った琴美は学園の教師に直訴するが、教師たちは「いじめなどない。」と否定する
        おもいあまった琴美は自作の爆弾を職員室に持ち込んで爆破させるが、学園はこの騒動をもみ消していた
        それ以来、多英と琴美のサイトは閉鎖されていたが、ある日突然に「ロメオ」によって、その跡地にくだんのアングラサイトが開かれてしまった

       (ここで時間はサキのいる1年後の現在にもどる)
        レイカがサキに接触し、琴美が持っていた爆弾は「琴美が好きだった男性」から受け取ったものだと発言する
        サキは見つけた多英につれられて病院のリハビリセンターにおもむき、爆破騒動いらい心を閉ざしきっている琴美に面会する
        サキは琴美と会話することはできなかったが、琴美が持っていた iポッドの形状・収録曲と「じろう」というつぶやきに着目する

00:58~01:07 (前シーンの半日後・2日目の夜)
        サキが吉良警部の自宅にあがり、「カウントダウンの終了にあわせて明日、ロメオが聖泉学園で集会をおこなう」という情報をつげる
        同時に、学園の用務員の時郎が真犯人ロメオであり、はからずも自分は時郎に惚れてしまったと吉良警部にうちあける
        吉良警部はサキに、サキの母親もまた若き日にK 機関に所属して駆け出しの自分とともに活躍していた「スケバン刑事・麻宮サキ」だったことをはじめて語る
        吉良警部の家からの帰り道にサキは時郎に連れ出され、武装集団によって廃工場に監禁されてしまう
        ※ここでもサキは背後からの頭部への一撃で失神してしまっており、ヨーヨーをまるで使えていない
        時郎は多英に接触し、翌日の集会について「集会が嫌なのだったらお前が爆弾を爆発させて阻止すればいい。」とそそのかす

01:07~16   (前シーンの翌日・3日目・カウントダウンは「残り2時間00分」)
        吉良警部の指揮によって警察が動いて聖泉学園は閉鎖されるが、体育館ではロメオに賛同してやってきた全国の信者による集会が始まろうとしていた
        ※集会の参加者は全国のいじめ被害学生と爆発物マニアと学園のいじめグループと学園の教師陣(!?)
        サキは監禁されていた廃工場を命からがら脱出して学園にかけつけるが、爆弾を身につけた多英によって集会は大混乱におちいる
        時郎とレイカは多英を連れ去って学園を去り、学園の騒ぎに乗じて武装グループとともに「真の犯罪計画」を発動させ、まんまとそれを成功させる
        ※このゴタゴタのあいまに、カウントダウンの話はいつのまにか「ひっそりと」終わってしまっている

01:16~31   (前シーンの直後)
        「ぜんぶまやかしだったのか!!」怒りに燃えるサキはスケバン刑事特製のパワードスーツを装着して時郎グループのいる廃工場に向かう
        サキとなぜかボンデージファッション全開のレイカとの熾烈な「警視庁レッドヨーヨー VS 公安ブルーヨーヨー対決」
        ※この時点では、サキはレイカには劣るもののヨーヨーをしっかり操作できており、最終的にはパワー押しでレイカに勝利する

        サキと武装グループ6人衆との「ヨーヨー VS サブマシンガンなど対決」
        ※ヨーヨーというよりは防弾スーツにまかせて(頭は無防備です)全力疾走で相手に突進して体当たりをかますサキの肝っ玉の勝利

        ラスト! サキと時郎との「ヨーヨー VS 日本刀対決」
        ※防弾なのに日本刀でいとも簡単に切り裂かれるスケバンスーツ。劣化してしまったのか? ともあれヨーヨー最終奥義で勝利
        満身創痍になりながら、多英と化学部の東山・天木を救出したサキ。しかし、その瞳にはむなしさが……

01:31~36   (前シーンの数日後)
        闘いによるケガの治ったあと、釈放されたアメリカの母親と電話で会話を交わすサキ
        母親と吉良警部とのただならぬ過去を知ってか知らずか、さわやかに笑って警部のもとを去るサキ
        多英と元気になった琴美とで、3人いっしょに学園に戻っていく姿でエンディングテーマ



 ……とまぁ、こんな感じなのでございますよ。
 ここまで読んだあなた、あんたは、エライ!!

 そして、そんなあなたならば、この映画における最も大きな病巣のようなものを、なんとなくでも察知することができていらっしゃるのではないでしょうか。
 そうなんです……私も次回は、そのあたりをちゃんと主張していきたいと考えているのですよ。

 すなはち、この『スケバン刑事 コードネーム=麻宮サキ』の最大の失敗要因は、脚本なのだ~!!

 タイムスケジュールを自分でまとめてみて再認識しました。
 この映画、わけわかんねぇにもほどがあるわ……

 いでよ、もったいないお化け!! 降臨してそのあわれみの翼の音をこの映画の頭上にひびかせたまへ。
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青野武さん、今までほんとうにありがとうございました

2012年04月10日 16時56分00秒 | すきなひとたち
 われらが心の父なる青野武閣下、おん歳75にしての新たなる世界への旅立ちに、敬礼!!

 ご唱和をお願いいたします。


「おぬぅぉおれぇえエ、きたるぅおオオオオ!!!!」


 その魂よ、やすらかに。
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2012年の春に映画『スケバン刑事 コードネーム=麻宮サキ』。 なぜ!?

2012年04月06日 14時42分25秒 | ふつうじゃない映画
 すぷり~んぐはずか~む。どうもこんにちは、そうだいでございます。
 今日も千葉はいいお天気です。なのに、私は当面、花見に行くヒマがないんですよねぇ。忙しいのはすてきなことなのでいいんですが、ちょっとだけでもいいから、何の目的もなく満開の桜の花の下でボヤ~っとする時間がほしくなる。そんな季節がやってまいりました。
 しっかし毎年思うんですけど、やっぱり満開の桜って、こわいですよね……夜なんか特に! あんなの、何人もの人たちといっしょにワイワイやるから楽しいんであって、1対1で桜の大木と向かい合ったら、たいていの人なら桜の「生命力」みたいなものに圧倒されてしまうんじゃないでしょうか。植物なんだから襲ってくることはないんですけど、そのオーラにおいては、満開の桜はライオンかヒグマみたいな「猛獣性」をはらんでいるような気がするんですよ。まさしくフォービズム! こえぇ~。


 桜の花を見て思うんですけど、その一季節におのれの生涯の中の大部分を賭け、その時期が過ぎたら、また再びの季節の到来を待ってひたすらエネルギーをためる。この様子はまさしく、ある時期にしか生まれない「時分の花」を見せて多くの人々を魅了してくれる、芸能界の「アイドル」という人々のあり方にも通じるものがあるんじゃないでしょうか。

 ……えっ? あぁ~強引ですよ!! 強引に本題に入っちゃいますよ! いいじゃないっすか、ぽかぽかしてるんだから。


映画『スケバン刑事 コードネーム=麻宮サキ』(2006年9月公開・99分 主演・松浦亜弥 監督・深作健太)


 出ました~。天下のあやや大先生! 松浦亜弥さん主演の大迫力アクションサスペンス映画でございます。
 なつかしいですか? う~ん、やっぱり「なつかしい」っていう印象を与えることになるんでしょうか。それはちょっと寂しいことです。

 松浦亜弥さんはハロー!プロジェクトのオーディションに合格したのち、わずか14歳にしての2000年10月の TVドラマ主演が芸能界最初のお仕事となっておりまして、歌手としては半年後の2001年4月のデビューですので、実は「女優」というところからキャリアをスタートさせたということになります。
 それ以来、松浦さんはハロー!プロジェクトのつんく♂プロデュース歌手として長年にわたり、ソロでありながらもグループのモーニング娘。に伍する国民的人気を誇っていくこととなります。とにかく彼女を物マネする人が多かったことが、彼女本人のパフォーマンスの影響力の絶大さを如実にあらわしていましたね。主に男のお笑い芸人さんたちにマネされてましたけど。

 このあたりのことはすでに去年の「ざっくりすぎるアイドルグループ史」でも触れたかと思いますので詳しい経歴は省略しますが、松浦さんはもちろん2012年現在も現役活動中。ただしソロ歌手としては2006年以降はつんく♂プロデュースを離れており、2008年ごろからは病気療養のためにコンサート活動などを大幅にセーブせざるを得ない状況になっていたため、まさしくこの映画『スケバン刑事』が公開された2006年という年が、松浦さんにとって非常に重要な転換点になっていたことは間違いありません。

 ところで、松浦さんはソロ活動と並行して、他のハロー!プロジェクトのアーティストと期間限定ユニットを組んでいたことも多く、『スケバン刑事』の主題歌『Thanks!』を歌唱したデュオ「GAM (ギャム)」もまた、松浦さんとモーニング娘。第5代リーダーだった藤本美貴さんによるスペシャルユニットでした。

 そのため、ソロとしては2005年が最後なのですが、松浦さんが本当の最後につんく♂プロデュースを受けて歌唱した現時点でのラストシングルは、GAM としてのラストともなっている3rd シングルの『LU LU LU』(2007年3月)となっています。
 ちょっと『スケバン刑事』からは離れるのですが、これは名曲ですよ……しっとりしすぎだし、あんまりおぼえやすいメロディもないので流行歌としてはいまいちなのかもしれませんが、はっきり言って「アイドル」という枠を余裕で飛び越えてしまっている松浦さんの「歌声の演技力」をまざまざとみせつけてくれるものになっています。
 ともあれ、松浦さんが全力疾走した2000年代前半の5年間というものは、確実に「あやや時代」として日本芸能史に刻まれるべき内実を持っていたと、私は声を大にして主張したいです。「かわいい子が歌もうまい」んじゃなくて、「まごうかたなきプロの歌手がしかもかわいい」という事実こそが、松浦亜弥さんという不世出のエンターテイナーの本質なのです。そして、その貴重さは今現在も変わってはいないでしょう。

 さて、そんな松浦さんが「歌声でなくセリフで演技をする」とどうなるのか!? そこらへんにクローズアップした映画がくだんの『スケバン刑事 コードネーム=麻宮サキ』だったのであります。

 ただ、松浦さんのキャリアがドラマ主演で始まっているということは言いましたが、その他にも彼女は、映画出演という点ではすでに2003年公開の『青の炎』(監督・蜷川幸雄、主演・二宮和也)でういういしいヒロイン役を演じきっており、「女優」としての評価は「歌手」なみに高いものとなっていました。つまり、主演の松浦さんの演技力のせいで『スケバン刑事』が失敗するという可能性は低いと見られていたわけだったのです。

 と・こ・ろ・が。この映画『スケバン刑事 コードネーム=麻宮サキ』は失敗しています!!

 残念ながら、ひっじょ~に残念ながら! 映画としては口が裂けても「おもしろいよ~、オススメ!」とか、「スケバン刑事、サイコ~☆」などと、映画館の入り口みたいな場所で友達と一緒にならんでカメラに向かって裏ピースをきめながら叫ぶようなことはできない出来になっていると言わざるを得ないのです。
 上映時間は99分ということなので、「2時間半」だの「3時間」だのとぬかす昨今の映画よりも物理的には短いはずなのですが、体感時間がまぁ~長い長い!
 「松浦さんはやっぱり目の演技がいいなぁ!」「アクションも派手でいいなぁ!」と自分に言い聞かせつつも、どォ~しても時計で残り分数をしきりにチェックしちゃう自分がいるんですなぁ~。


 ということで! 今回の本題としましては、「検証! 映画『スケバン刑事 コードネーム=麻宮サキ』はなぜつまんない?」というあたりを、わが『長岡京エイリアン』独自のスローペースでじっくりと考えていきたいと思います。

 ついてきてくれるお方は……いらっしゃる? そこのあなた。ついてきていただける?

 なぜ2012年の春に『スケバン刑事』なのか。前回の『数学♥女子学園』まででよかったじゃないかと思われる方もいらっしゃるでしょう。
 しかし、それでもわたくしはやりたいんです。自分の納得できるところまで、「なぜつまんないのか?」という問題を明らかにしてみたいんですねぇ。

 「おもしろいかつまんないのか」という判断は、やっぱり最終的には「ひとそれぞれの価値観」の問題ですし、「あの映画おもしろかったよねェ~!」という話題でかろうじて他の人たちと意見をすり合わせることはあっても、「つまんなかったよねェ~!」というあたりで議論する機会はかなり少ないような気がします。
 周囲で議論するほどの人数が観ていないことも多いですし、ましてや当時の人気アイドルが主演しているという派手な看板の作品だったりすると、その時期を過ぎたとたんにあっという間に「語ることすらはばかられる」扱いになってしまうこともあるんじゃないでしょうか。「黒歴史」だって。ヤ~な言葉ですねぇ!

 そして嫌な連鎖は続くもので、そうなっちゃうと数年後にその映画の存在をはじめて知った人は、実際に観る前から「つまんないぞ~。」「観なくてもいいぞ~。」という情報だけを知ることになってしまうのです。これじゃあ観て「おもしろい!」と感じる可能性があったかもしれない人だって観なくなっちゃいますよ。特にネット上の無名の言葉の数々は、かんたんに見られるわりに強烈なフレーズが多いですから。

 私だって、こうやってネット上のブログでくっちゃべっている人間ですので「ネットの危険性」だのなんだのとデカい口をたたくわけではないのですが、「出逢いの可能性を踏みにじってしまう言葉」に耳を貸すのは、貴重な人生の時間のムダ! これは、ネットも現実もどっちでも言えることだと思います。

 つまんない? つまんないのなら、「なんでつまんないのか?」を考える有意義なひとときを過ごせばいいんですよ! それはそのまんま、「あぁ~、オレはこういうところをつまんなく感じるのかぁ。」とか、「あぁでも、あそこはおもしろかったねぇ。」とかにたどりつけるわけなんですよ。「つまんねぇ!」だけで忘却のかなたに追いやるのはもったいないっすよね。

 まぁそういった感じで、とにかく私としましては、この『スケバン刑事 コードネーム=麻宮サキ』は、

「まぁまぁ、そこまで言わずにちょっと考えてみようじゃないの! 確実にいいところがあった上で失敗してるなんて最高のお題よぉ~コレ。」

 と言いたくなる「惜しい!」感をふんだんに盛り込んだ失敗作になっていると思うわけなんですよ。


 ところで、ネット上ではこの『スケバン刑事 コードネーム=麻宮サキ』をさして、公開時期が2006年の秋だったことから「あややも落ち目でヒットしなかった。」などと指摘した、なんともお寒いレビューとも言えないレビューを目にすることが多々あります。

 言うよね~! いるよね~、こういう「未来から目線」で語りたがる人!!

 それを2006年の公開当時から言ってんのなら別にかまいませんけど、どうせ数年後の未来から言ってんでしょ!? 気楽なもんだよねぇ。
 「いろんな条件がかさなりあった結果そうなったこと」を、「そうなったことのたったひとつの原因」と勘違いするのは、歴史とそれを築いた偉大なる先人たちを極端に矮小化するたいへん失礼な行為ですよ。同時に、そう考える人の想像力もまずしくするもったいなさすぎる思考法だとも思います。

 たとえるのならば、「石田三成は関ヶ原合戦で負けた。」と言う情報にほとんど価値はありません。そんなものはちょっと日本史の教科書かマンガを読んだりパソコンを検索したらわかることです。
 結局それは「テストで何点かとれる」というくらいしか人生に貢献する意味はなく、むしろ「どうして勝てなかったのか?」「どうすれば勝てたのか?」「もし勝ったとしたらその後の日本はどうなっていたのか?」「ほんとのところ淀殿との関係はどこまでいっていたのか?」「圧倒的に知名度が低い兄貴の石田正澄はくやしくないのか?」といったあたりに想いをはせるほうがずいぶんと人生をうるおす楽しみになると思うわけなんですよ。

 結果論を鬼の首でも取ったかのようにふりまわすのはちっともカッコよくないし、ましてやそれで歴史を知って先人たちの上に立ったような気になるなんてダメ!ゼッタイってことなんですね~。かえって自分を小さく見せるだけ。

「明智光秀は有名だが、明智光秀を殺した百姓の名前は歴史には残っていない。」

 こういうことなんです……勢いを失った者を追い討ちする行為に、人々の記憶に残る資格は、ない。


 えーと……なんでこんな話になったんだっけ?

 あの~、話もでっかくなったし文章もかさんできちゃったんで、具体的なあれこれは、また次回にしちゃおっか!?

 とりあえず今回は、私から見た「映画『スケバン刑事 コードネーム=麻宮サキ』の失敗」を考える上でのポイントをいくつか挙げるとこまでやってみましょ。次回はそれらを軸に展開させていくっつうことで。
 こんな感じっすかね!


1、「アイドル映画」にしたくなかった単独上映形式
 通常の全国上映プログラムの3分の1の公開規模だった

2、「あやや主演映画!」のイメージと内容とのギャップ
 異常に硬派な「スケバン刑事」シリーズの正式続編

3、松浦さんが出ずっぱりになれなかった内容
 当時の過密スケジュールがわざわいした?

4、主人公が入れ替わって物語の軸がぶれてしまった中盤
 「スケバン刑事」シリーズでありながらまったく関係のない話が展開

5、「物語上の時間が『3日間』」と非常にタイト
 たった3日間でヨーヨー達人になれ!?

6、タイムリミットサスペンスでありながら終盤がグダグダ
 「具体的に時間期限がきてなにが怖いのか」という緊迫感がぜんぜんわかない

7、「アイドル映画」は「男優」が命!!
 竹内力さんを除いた男たちがのきなみパッとしない


 興味のある方、次回もよっといで~。ほんじゃバハハ~イ。


《どうでもいい余談ですが》

 この『長岡京エイリアン』、リアルタイムで読んでいただいている方ならばご存知かと思うのですが、ひとつの記事をいったん公開させてから完成させるまでに、およそ半日~1日の時間がかかることがありまして、完成したら消してしまうのですが、文章が途中までしかできていない状態で公開している時には、文末に「途中です~」とか「途中になったーりゃボンダルチュク」といった言葉を置いておくことがしょっちゅうあります。
 ほんで、今回は『スケバン刑事』にかんする記事だったので、松浦さんの敵役を華麗にふてぶてしく演じきったチャーミー石川梨華さんの劇中での名ゼリフの、

「テメェの全存在がうぜぇんだよ!!」

 をうける形で、

「わたくしの全存在が途中です」

 という書き置きにしたんですね。

 そしたら、その文章だけパッと見たら思いのほかズシーンとくる言葉でさぁ!!

 いや、そりゃ確かにそうなんだけどさぁ! なんかいろいろ自分で受けとめちゃいましたよ。

 ねっころんで自分の上にピンポン玉を投げてはキャッチ投げてはキャッチしてたら、何投かめにボーリング玉が落ちてきたよ!

 言霊はほんとにおもしろいですねぇ~。
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むりやりアイドル対決!! 『数学女子学園』 VS 『スケバン刑事 コードネーム=麻宮サキ』  前口上

2012年04月03日 14時18分31秒 | ふつうじゃない映画
 どうもこんにちは~、そうだいでございます。
 いやぁ、つい何日か前に「風が強くてこまったこまった」って言ってたばかりなのに、どうやら今日は、私の住んでいる関東地方は夕方以降にそれを大きく上回る暴風が吹き荒れるのだとか!? 空はすでに今からそうとうあやしげな雰囲気になっていますし、時折きこえてくる「びよおおおぉ……」といった風のとどろきもなかなかいい感じに不安な気分にさせてくれます。
 そういえば、こういう怖い天気の日は、私も小学生だったころはテンションあがってましたねぇ! 意味もなく。台風とか雷雨とか、無責任なことに直接の被害者にならないかぎりは大好物だったものです。今日も、これから巻き起こるであろう荒天の被害者にならないように祈りながら、そのあとにやってくる春の陽気を待つことにいたしましょう。もうすぐそこまで来てます!

 っていうか、昨日なんかは天気もよくて春そのものでしたねぇ。
 そういえば、夕べにお風呂からあがったら思いのほかあったかくて、着替えても汗がとまらなかったので、押入れから扇子を引っぱりだしたんですよ。秋から冬にかけてはまったく必要なくて片づけていたので、今年はじめての登板ですね。
 んで、私の押入れには何本かの扇子や扇がほっぽり入れてあるんですけど、その中から無造作に選んだ赤い扇子をパラパラと広げてみたらあ~らビックリ。

 小早川秀秋が使用していた紋様として有名な「違い鎌」がドンと印刷されてある扇子だったんですよ。

 すっかり忘れてた……こんなの買ってたわぁ、何年か前に! どっかの歴史グッズ店で。
 この『長岡京エイリアン』でつい最近に小早川秀秋のことを扱ってたばっかりだったもんで、「これも縁なのかしら……」と、しみじみ感じ入ってしまいました。いや、それを買ったのも私だし、忘れてたのも私なんですけどね。

 この、「鋭利に研ぎ澄まされた2本の鎌が交差している」紋様の「違い鎌」は、小早川秀秋が愛用していたという陣羽織「猩々緋羅紗地違い鎌模様陣羽織(しょうじょうひ・らしゃじ・ちがいがまもよう・じんばおり 現在は東京国立博物館所蔵)にでかでかとあしらわれていることでつとに有名で、非常にヴィヴィッドな真紅の布地とあいまって鮮烈な印象を残すデザインになっています。
 やっぱり、こんなものを戦場で着込んでいた武将が「ヘタレ」なわけないって! 意外にまっとうだった領主としての側面もあわせて、小早川秀秋像のプラス面への修正を切に願いたいものです。

 ちなみに、この「秀秋=違い鎌」のイメージが強烈すぎるために、今に至るまで小早川秀秋の「家紋」が「違い鎌」だと勘違いしておられる方が多いようなのですが、この「違い鎌」は「敵をなぎ払う」という意味をこめたエンブレムとして秀秋が陣羽織に採用したというだけであって、彼が「家紋」として常用していたわけではありません。秀秋が当主となった小早川家の家紋はきわめてクラシックな「右頭三つ巴(みぎがしらみつどもえ 三つ巴が右に回転している形)」ですし、秀秋本人は豊臣家が朝廷から使用を認められた有名な「五七桐(ごしちのきり)」か、実家・木下家の家紋である「木下沢潟(きのしたおもだか)」を使用することがほとんどだったようです。


 さてさて、こういった戦国ロマンのなんたらかんたらとはまぁ~ったく!! 関係のない話題を今回はやってみたいと思います。「ロマン」という点では通じるものがあるのかもしれませんが、小早川秀秋の「違い鎌」の直後にこんなお題にシフトすることができる個人ブログをやっている、この身に余るしあわせ……それを読んでくださるあなたがそこにいらっしゃるマキシマム・ハピネス!! イィイ~ッヒッヒッヒ。


 先週の水曜日深夜に、今年の1月から放送されていたモーニング娘。を筆頭とするハロー!プロジェクトのアイドルグループがほぼ総出演する夢の連続コメディドラマ『数学♥女子学園』が無事、最終回を迎えました。

 1エピソード30分で全12話。放送途中の段階で、2月の『長岡京エイリアン』でもいちど扱ったのですが、内容はこういったものでした。

『数学♥女子学園』 .... 脚本・山浦 雅大、演出・河合 勇人
 主演 .... 田中 れいな(モーニング娘。)、道重 さゆみ(モーニング娘。)、桜田 通

《あらすじ》
 手続き上のミスで「私立町田数学専門高等学校」に転校してきてしまった、数学が大の苦手な男子生徒・佐藤一樹(桜田通)。
 しかしこの学園は、数学に関しては天才的なセンスを発揮するが自由奔放・天真爛漫な性格で破天荒な行動が目立つ博多弁の女子生徒・町田ニーナ(田中れいな)や、2人のクラスメイトで自意識過剰な性格の立川さゆり(道重さゆみ)らが、「数学番長」の称号を目指して日々ハイレベルな数学バトルを繰り広げる恐怖の地だった....

第1話メインゲスト …… 道重さゆみ(そのままレギュラー入り)
第2話メインゲスト …… ℃-ute(キュート)のリーダー・矢島舞美(そのままレギュラー入り)とモーニング娘。第10期メンバー4名
第3話メインゲスト …… Berryz工房の須藤茉麻とモーニング娘。第9期メンバー(他の役で準レギュラー出演している鞘師里保以外の3名)
第4話メインゲスト …… 吉川友とBerryz工房の清水佐紀(キャプテン)と徳永千奈美
第5話メインゲスト …… ℃-uteの鈴木愛理
第6話メインゲスト …… Berryz工房の嗣永桃子
第7話メインゲスト …… 田辺奈菜美らハロプロ研修生(旧・ハロプロエッグ)3名
第8話メインゲスト …… ℃-uteの中島早貴・岡井千聖・萩原舞
第9話メインゲスト …… 俳優の牧田哲也(唯一、女性でないゲスト)
第10話メインゲスト …… 真野恵里菜とハロプロ研修生の宮本佳林
第11話メインゲスト …… ドリームモーニング娘。の飯田圭織と保田圭
最終話メインゲスト …… ドリームモーニング娘。の石川梨華

※全話にわたり、ストーリーにまったく関係のない「赤塚不二夫作品のうなぎいぬ」のようなポジションでスマイレージのメンバー3名(リーダー和田彩花・福田花音・田村芽実)が出演している


 こういった陣容でお送りしていたわけなんですが、なんといってもモーニング娘。を含めたハロー!プロジェクトのアイドル「モベキマス」がほぼ全員登場しているというポイントが最も大きかったものの、私がこのドラマで一番好きだったのは、そこに安住しない「数学バラエティ」としての側面もちゃんと別に用意していた「二段構え」の魅力をかねそなえていた部分だったのです。ただアイドルが集まってワーキャーやってるばっかじゃないってことなんですね。


 ……と、2ヶ月前に第6話までを観た時点で私は語っておったんですけれども、ね……


 なかなか難しいものであります。3ヶ月にわたる放送の中で、全話を楽しむというわけには、正直なところいかなかったのよねェ~!

 簡単にかいつまんで言いますと、私がこの『数学♥女子学園』にたいして不遜ながら申し上げさせていただきたい苦言は2点ありました。


苦言その1、「数学バラエティ」の側面が弱いエピソードが後半になるにつれて増えた

 何度も言いますが、このドラマがかわいいアイドル総出演で魅せてくれることは大前提にあるとして、私はそこだけに頼らない「攻め」の姿勢を観るのが大好きだったわけで、数学にまったく明るくない私でもいい感じに「あぁ~、そういう解き方があるんだ!」とスッキリさせてくれる問題が毎週出てくるのがたまらなかったんです。

 ところが! 私の個人的な観点から判断させていただきますと、そういう「数学バラエティ」方面で楽しめたエピソードは「12話中、6話」でした。最後は第8話の「道重さんがいる部屋を当てる問題」! それ以降、最終話にいたるまでの4話ぶんはすべて、あんまり数学的には楽しめないエピソードになっていたような気がするのです。
 もちろん、数学要素がまったくないエピソードばかりということではなかったのですが、第11話のように「視聴者が考える時間が用意されていない」演出だったり、最終話のように「問題が難しすぎて説明が省略されている」扱いになっていたため、大すじのストーリーの進行にほとんど影響がない程度に存在が縮小されていたエピソードが多かったのは非常に残念でした。第11話の中盤の問題は、「数学」っていうよりも「暗号なぞなぞ」だったし……最終話で黒板に「Q.E.D.(証明終了)」とでかでかと板書されていたのはちょっとよかったです。オマージュ?
 すべてのエピソードで数学的な問題をミステリー小説のように物語の根幹に取り入れる一貫性があったら、もっとおもしろかったのにナ~!! と感じたんでございますよ。
 だって、「閉鎖された学園」なんて、物語のシチュエーションとしては最高じゃないですかぁ! あそこはふつうの通学制でしたけど。

 ところで、これは苦言ではないのですが、第5話と8話に共通して見られた「確率を上げること=自分の思いのままに事象をコントロールすること」って、私は個人的にはけっこう興味深い問題でした。あぁ、そういう考え方もあるんだぁ、みたいな。
 確率の「80% 」と「100% 」って、似てはいても「イコール」では決してないですよね? ただし、「80% 」は「30% 」にくらべたら「100% 」に格段に近いわけです。
 つまり、第5話と8話の展開は出題者側も解答者側も仲良くいっしょに「あっれぇえ~!?」とズッコケる失敗パターンの可能性もゼロではなかったわけで、ストーリー的にはそうなっちゃいけないんですけど、そこらへんを妄想して数学の奥深さを感じるいいきっかけになりました。それはとってもよかったですね。


苦言その2、終盤のゲストキャスティングで「ハロプロ総出演!」という色合いがぼやけてしまった

 これは「その1」にもまして非常に気になった点で、なんといっても全12話に共通して語られる「物語最大の謎」となっていた「主人公・町田ニーナの姉のゆくえ」の真相がついに明らかとなる最終話まわりの2話ぶんに、満を持して登場したゲストがそろって「ハロプロの人じゃなかった」!! ここにつきます。

 『数学♥女子学園』に出演していた、名前のある役を持った女性アイドルは全員アップフロントエージェンシーに所属しており、そのほとんどが現在のハロー!プロジェクトを構成している方々だったわけです。
 つまり、逆に言うとすでにドラマの中で、「正確に言うとハロプロではない」第4話ゲストの吉川さんや第7・10話ゲストのハロプロ研修生のみなさんといった面々は出演していた前例はあったわけなんですが、それにしても! 終盤に「ハロプロだった、しかもモーニング娘。メンバーだった」お3方がズラズラと登場したのは非常によろしくなかったのではないかと。

 だってなんか、「ハロプロよりも重要な位置にドリームモーニング娘。がいる」みたいな構図になっちゃったじゃないですか……

 いや、そりゃあキャリアでいったらそうなのかもしれませんけど、せっかく「モベキマス中心でお送りするファン待望の連続ドラマ!」って銘打ってあるんですから。せめてこの12話ぶんくらいは「お姉さんがたのお世話にはならない新しいハロー!プロジェクト」っていうカラーを強調してもよかったのではないかと!

 この『数学♥女子学園』を第10話まで観て、「やっぱり昔のメンツのほうがよかったなぁ~。」などと感じる不逞者はそんなにいなかったはずですよ!? そもそも、そういった比較の対象からいい加減に脱け出すためにつくられるべき創世記になるはずだったのです、この『数学♥女子学園』は。

 ドリームモーニング娘。のお3方をさして非難するつもりは一切ないのですが、ついに登場した第10話のラスボス感満点の真野さんをさっさと退場させてしまったスタッフさんの采配には強い疑念をいだかずにいられませんでした。もったいねぇ~!! エピソード自体の数学テイストも極薄だったし。

 あと、非常に心残りだったのが、結局「ハロプロ全員出演」がかなわなかったことね。これは残念ですよ。

 Berryz工房の残り3名が出演していなかったのは残念……というか激しく「?」でした。
 そりゃああなた、スケジュールの問題が大きかったのでしょうが、せっかくなんですから、ねぇ!?
 特に個人的には、先月にリリースされた新曲の『Be 元気・成せば成るっ!』でも大いにその存在感をアピールしている「ミス・絶妙すぎる角度の眉」菅谷梨沙子さんの演技が観られなかったのは実に無念。
 スマイレージの3名も、たった半年前の2011年10月に正式メンバーに昇格したばかりという事情とはいえ、同じキャリアの田村さんがレギュラー出演しているしねぇ。
 だいいち、モーニング娘。の光井愛佳さんだって、怪我の療養という事情はあったとはいえ、ちょっと顔だけでも出してくれなかったもんかしらと。

 スケジュールの問題はわかります! わかりますけれども、ここはなんとしても「全員集合」という記録と気合いを世間に打ち出す姿勢が必要だったのではないでしょうか!? いろいろある昨今のアイドル業界の中で「モベキマスここにあり」という乾坤一擲の大攻勢をかける旗頭にしなければならなかったんですよ、この『数学♥女子学園』はァ!! おうっ、け、血圧が。

 ともあれ、モベキマスを前面に出していく上で「最もその距離に細心の注意を払わなければならなかった」ドリームモーニング娘。の面々を、おそらくは「絵的に豪華だから。」という理由だけで無造作に、しかもよりにもよって最終エピソード付近にゲストに招いてしまったキャスティングは、私としては「それまでの努力がほぼまるごと台無し!」という結果しか残さなかったのではないかと考えています。
 「ニーナのお姉さん」とは言っても、そんなに「年上感」を出す必要もなかったんじゃなかろうかと。


 まぁそのぉ~、ねぇ! いろいろ言わせていただきましたけど、ともかく以上の2点をのぞきましては、私はこの『数学♥女子学園』を大いに楽しませていただきました。

 はい? 演技力? そんなもの、ど~でもいいっすよ! とにかく、それぞれの見せる表情やしぐさの端っこにチラッとでも「そのアイドルが現時点で到達している生きざま」の輝きが見られる瞬間があったらそれで充分なのでございますよ。もともと土台が女優さんじゃないんですから。

 そういった点から観ると、やっぱり最初っから最後まで堂々と「主人公らしい疾走感」を持続させていた主演の田中さんはご苦労様でしたね。「奇行の天才」というキャラクターに思いのほか相性が良かったのが非常に新鮮でした。グループの中では常に中心にいる「まっとうな元気者」という印象があったので、個人的には彼女の新境地を見た気がします。

 あとはやっぱり、そんな主人公にぴったり寄り添っていた道重さんと桜田さんのペアね!
 桜田さんがただの「イケメン要員」じゃなくて、物語の中で貴重な「ツッコミ役」の重責をしっかりと担っていたのが実に心強かったです。この人のセリフのテンポのおかげでシーンがタルくならずに済んでいるっていう局面、けっこうありました。

 道重さんは……やっぱりこの方、頭がいいっていうか、「現場の適応スピード」がものすごく早いんじゃなかろうかと。
 序盤は演じている役の性格を説明することで精一杯だったみたいなんですけど、回をおうごとに演技に余裕が出てきていろんな魅力や人間らしい弱さをあらわしていく手数がどんどん増えていったのには驚きました。こんなこと言ったってしょうがないんですけど、この『数学♥女子学園』が終わったあとにすぐ別のドラマの撮影に入って、それが終わったらまたすぐあとに次のドラマ、っていう手法を繰り返したら、最終的にはすごい女優さんになりますよ、この人!? とにかくポテンシャルが他の方々とケタ違い。

 道重さんが最終回のあるシーンで言いはなった「パンダじゃなくなっちゃったぁ……」というセリフには、現時点での彼女の全身全霊、全経験を振りしぼりきった演技と魅力がこめられていました。道重さゆみさんにとっての『数学♥女子学園』とは、まさにこの一言を発するための作品だったといっても過言ではないでしょう。オンリーワン、代替不能の言いまわし。


 さてさて! こうやって『数学♥女子学園』は12話を無事完走しきったわけだったのですが、このドラマを通じて、私はいろんな「アイドルの出ているドラマ」的なものの味わいを感じることとなりました。女優さんの闘い方とはまるで違う部分からくるアイドルの演技の魅力とかもそうだったんですけど、出演者に起因するものの他に、もしかしたらもっと大きな影響を作品全体にあたえているかもしれない「スタッフ側の事情」に起因している「アイドル出演作品ならではのつくり方」のようなものがちらほら垣間見えるような気がしたのです。

 たとえばわかりやすい点でいいますと、『数学♥女子学園』はシーンによって、会話している集団全体がカメラの中におさまるショットが使われていなくて、「しゃべる人」の顔カットだけがポンポンと多用されているために誰が誰と会話しているのか、誰が誰の発言にこたえているのかがわかりづらく、そこに流れる時間がなんとなく遅く感じられてしまうカメラワークがよくありました。

 実は『数学♥女子学園』を見始めた当初は私も「あれっ、な~んか変だなぁ。ここ、ワンカットでやりとりを撮るだけでいいんじゃないの?」みたいな違和感だけしかなくて、その作り方にする理由なんかはさっぱりわからなかったんですけど、先日に同じく『数学♥女子学園』を楽しんでいたさるお方と話をしていたときに、それは解明されました。


さる方 「あれ、同じ場面でも『別撮り』になってるシーンが多いからだよ。お互いの顔のカットの切り返しだけで進むから変な感じなんじゃない?」


 あぁ~!! そういう事情があったからなんだ。しゃべる相手がその視線の先にいないっていうのはよくあるって聞いたことはありましたけど、スケジュールの都合で「そのシーンにいるはずの人がそろってない」ってこともあるってことなのねぇ、特にアイドルの集合する現場は。
 なるほど。アイドルの出るドラマの時間の流れ方が遅いっていうのは、出演者の演技の問題のほかにもそういう特有の事情があるからなんですねぇ。


 そこまで思い至ったとき、私の脳裏には『数学♥女子学園』をさかのぼること6年のむかし、同じ「ハロプロ勢が制服を着て出演していた学園もの」でありながらも、今年の町田数学専門高等学校でのあれこれとはまるで温度の違う地獄絵図のような物語を現出せしめていた、「偉大なる先輩」たるある映画のことが浮かびあがりました。

「じゃあ、あれもたぶん、現場は大変なことになっていたんだろうなぁ……アイドルが出ているからこその苦難があったからああいう作品になっていたのに違いない。」


 言うまでもなく、2006年9月に公開された、当時一世を風靡していたトップアイドル・松浦亜弥の主演によるアクションサスペンス映画『スケバン刑事 コードネーム=麻宮サキ』(監督・深作健太 脚本・丸山昇一)のことです。

 ちょっと今回は字数がかさんできたので、毎度おなじみのパターンで続きはまた次回にしたいのですが、この『スケバン刑事』もまた、松浦さんの渾身の熱演を筆頭とする絶賛すべきポイントは多々あったものの、演者とは関係のあまりない「作品のリズム」の点でどうしようもない致命的な欠陥をかかえた作品でありました。
 作品を観てもらえればおわかりのように、製作当初から深作監督は「これはアイドル映画ではない。」という点を強くアピールしていたわけだったのですが……

 映画『スケバン刑事 コードネーム=麻宮サキ』における作品テイストと「アイドルが出ている」ことによる問題との熾烈な闘争。その結果や、果たしていかに!?

 そして、『スケバン刑事』と『数学♥女子学園』のどちらにもかなりおいしい役で出演したチャーミー石川さんは、次なる衝撃作『篤姫ナンバー1』で、いったいどの地平へ飛び立とうとしているのだろうか!? これも、気が向いたら気にしてみよう。


 ぜんぜん関係ないんですけど、私は個人的には、『数学♥女子学園』で鞘師里保さんが演じていた「数学バトルジャッジ役」の何代かまえの先輩には、間違いなく松浦さんがいたと確信しています。

 あの動きのキレは絶対にそうだよ、うん。
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