長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

久々に下北沢に行ったら……お芝居2本に、インタビュー1本

2014年01月16日 23時01分45秒 | 日記
 ライリ~ライリ~ライラ~っとぉ! みなさんこんばんは、そうだいでございます。いやぁ、まだまだ寒い日が続きますなぁ~。
 正月くらいは妙にあったかくて、あぁこりゃ楽チンだな~、なんて思ってたんですけど、10日くらいからググッと寒くなってねぇ。

 できれば、せっかくいただいたお休みは一日中のんびり家んなか、出費もなるたけ省エネルギーモードでいきたいところなんですが、そう言ってたら、ただでさえ加速化しているオッサン化がさらに激化するということで、本日はあえてがっちりと予定をつくってお出かけすることにいたしました。

 行った先は、わこうどの町、下北沢! 久しぶりだなぁ~。
 目的は例によって、観劇。下北沢だもんねぇ。


東京シェイクスピア・カンパニー「ヴェニス連作・同時公演」(2014年1月8~19日 下北沢・劇小劇場)
『鏡の向こうのシェイクスピア ポーシャの窓』(作&演出・江戸馨)
『ヴェニスの商人』(作・ウィリアム=シェイクスピア、演出・江戸馨)

 今回、この公演を観に行く直接のきっかけとなったのは、私が劇団の俳優をしていた時期に一緒の舞台に立っていたこともある女優さんが『ヴェニスの商人』のほうに主演していることだったのですが、まぁそれだったら、同時上演になっているもう片方のオリジナル続編も観ておかなきゃいかんかなぁ、と思ったので、一日まるまる休みをとって2本とも観ることにしました。
 なんてったって、演出している方が『鏡の向こうのシェイクスピア』というシリーズとしては約10年ぶりに発表する新作だというんですからね! これをついでに楽しまない手は無いんじゃなかろうかと。

 さて、ここらで早々に、今回の公演を観に行くにあたって私が胸に抱いていた本音を包み隠さずバラしちゃうんですけど、実はまぁ~、行く気がしなかったしなかった。なんせお芝居2本なもんですから、仕事の合間に久々にいただいた休日をほぼ全部使ってわざわざ下北沢に遠出するわけでしてね、たいして若くもないのに。
 言い訳をのべさせてもらえば、シェイクスピア作品って、普遍的に上演される不朽の名作なだけあって、逆に言うと「今観なきゃいけませんかね、それ!?」っていう億劫さが前に立っちゃうのよね! しかも『ヴェニスの商人』なんでしょ!? 筋もだいたい知ってるし。
 しかも、年末年始のバタバタもあいまってか、今回は主演している女優さんから特に観劇をプッシュされたわけでもなかったので、チケットを予約するかなり直前まで「しれっとスルーしちゃおっかな……」という気分も大勢を占めていたのでしたが、ここは雄々しく! 2本どちらも観るという賭けに出たわけでした。まだまだ若いんだぞ!と。

 そして、これがけっこういい目に出たんだよなぁ~、今回は! 楽しかったんだ、いろいろと。

 いちおう、チラシのふれこみによると新作『ポーシャの窓』は、『ヴェニスの商人』の主要登場人物たちの「およそ10年後」を描いた続編となっているということだったのですが、私が予約した本日16日にかぎって、「未来」の『ポーシャの窓』をまず昼間に上演したあとに、夜から「過去」の『ヴェニスの商人』を上演するというさかしまなタイムスケジュールになっていたのです。

 これも、観劇する前までは「なんかおかしな日に予約しちゃったなぁ。」と居心地悪く感じていたのですが、これがまた、けっこういい順番だったんだ! 「未来」のあとに「過去」を観て見えてくるものがあったわけです。


 まず、午後2時に開演した『ポーシャの窓』のほうだったのですが、かつて『ヴェニスの商人』でスーパーヒロインのような八面六臂の活躍をして、悪役たるユダヤ人の高利貸しシャイロックをギャフンと言わせた女傑ポーシャが、好青年バッサーニオとめでたく結婚した後に「どうなったのか?」というあたりに空想の翼を広げた内容になっています。

 これは作品の内容そのものになってしまうので詳しくは言いませんが、ポーシャとバッサーニオの生活は、それはそれは平凡で、『ヴェニスの商人』の華々しい活躍がはるか遠くのことと思えてしまう淡白なものになっていました。しかも、2人の間には明確に「不幸」と言い表す他ない「ある事実」が横たわっており。
 もうひとつ無視できないのは、『ヴェニスの商人』であれほど完膚なきまでに失意のどん底に叩き落されたはずの高利貸しシャイロックが、キリスト教徒に転身した事実を利用してさらに利益を増やしてポーシャやヴェニスの商人アントーニオ以上に世間に認められる富豪に栄達し、10年前をピークにゆるやかに没落しつつあるポーシャたちを完全に「庇護する」立場になってしまっている、という皮肉な設定でした。この『ポーシャの窓』におけるシャイロックは、表面上は棄教しつつも、半世紀以上にわたる地道な生活の連続によってその身にしみこんだ、ユダヤ教の「無心に耐え、生き抜く」という摂理をかたくなに捨てずに生き続けている実直堅実な老紳士になっているのです。

 これは恐ろしい未来ですよね……キリスト教至上主義の単純明快な勝利はまったく勝利ではなく、結局ヒーローも超人もいない「淡々とした現実」しか残っていない未来。勝ったはずの人間は理不尽ともいえる不幸におびえ、負けたはずの人間はその負けさえをも利用して、さらに強く生き続けているという。この作品でのシャイロックの異常な聖人君子ぶりは、ちょっと芥川龍之介の『神々の微笑』(1922年)をほうふつとさせる不気味な堅牢さがありました。演じる原金太郎さんの、アクの一切ない清廉きわまるたたずまいが印象的。


 そして、こういった小津安二郎のような静寂とした作品を観た「あと」で、あの能天気な喜劇『ヴェニスの商人』を観ると、いったいどんな感慨がわきおこるのかといいますと!?

 なんか、「そうそう、昔の自分たちの思い出って、こういう感じに輝かしいよね……やってたことはバカそのものなんだけど。」という、古いアルバムの写真かホームビデオの映像をのぞいたようなざわざわした感動に包まれるワケなのよ!

 あんときは、いろいろ後先のことも考えずにムチャクチャやってたんだよな……『ヴェニスの商人』に登場する、シャイロック以外のキャラクターたちの無計画で楽天的な、しかしそれでいてやたらエネルギッシュな行動の数々は、半分うらやましくもあり、半分こっぱずかしくもあり。自分自身のいろんな過去さえも連想させるバカバカしさに満ちていたのでした。

 『ポーシャの窓』は作者の思い入れがふんだんに炸裂した、メッセージに満ちた作品だったのですが、そのいっぽうで『ヴェニスの商人』はまったくもってオーソドックスな喜劇らしい喜劇に徹しており、高利貸しシャイロックも、古畑任三郎みたいな猫背で聞こえよがしにイヤミたっぷりな独り言を朗々と語る紺野相龍さんが好演していました。典型的な悪人でしたね、こっちでは。

 でもまぁ~、今回観て再認識したんですけど、シェイクスピア作品はセリフがなげぇなげぇ!! 会話も独り言も長い上に、ぜんぜん実感の湧かないイタリアの物語で、宗教ネタとか人種ネタが満載なわけでしょう? それを極東のアジア人が21世紀に演じてるんですから、他ならぬシェイクスピア御本人が泉下で「え、なんでやんの!?」とびっくりされるんじゃないんでしょうか。

 ただ、こういうアウェーばっかりの条件だからこそ、演じる役者の技量ってものがハッキリ見えちゃうんですよねぇ。つまり、おもしろい俳優さんはいつまでも聞き続けていたい長ゼリフの洪水を活き活きと泳ぎぬく輝きを見せてくれるけど、目先の難しさにアップアップする程度の人は、見るも無残な過呼吸演技でお客さんをうんざりさせることしかできなくなる。実際、今回の『ヴェニスの商人』も、かなり残酷でシビアな現場になっていたと思います。若い人があからさまにヘタだと本当にがっかりしちゃいますよね。

 そういう意味で、シェイクスピア作品というものは、その底流に時代を超えた「愛」だの「野望」だのという人類共通のテーマがあるからこそ、役者さんの実力を試す定期テストのような意味合いで常にどこかで上演されるニーズがあると思うんです。それが素晴らしい俳優さんだけが大集合する公演になるんだったら、これ以上なく観客を楽しませてくれる「オールスター感謝祭」になるわけでね。

 完全に思い出話になってしまうのですが、私もかつて俳優をやっていた時期に、シェイクスピア作品のいくつかに役者として出演したことがありました。そして、それはまぁ~楽しい公演だったんですよ、どれも演じていて。上演中の観客のみなさんの返してきてくれるエネルギーみたいなものも、他の公演よりもずっと直接的に感じることができていたような気がします。笑い声とかいう単純なものじゃなくて。

 よくわかんないですけど、シェイクスピア作品の特に有名なものって、やっぱ有名になるだけの特別な「祝祭性」があるような気がするんですよね。俳優として日常的に演じている作品とはちょっと違う「特別公演」になると思うんだよなぁ、どれも。
 「しゃべりまくり」だからなんでしょうかねぇ。うまくまわればサービス過剰な世界がテンションを上げてくれるんだろうなぁ。役者と観客の、どっちも。


 とまぁ、いろんなことを感じさせてくれる「静」と「動」の2本立て公演だったのでした。
 いやぁ、これはホントに、ケチってどっちか片方だけ観てもしょうがないお芝居企画でしたわ! ましてや、シェイクスピア作品だからといって、なんとなく敬遠して行かないなんて、問題外!! ふつうの現代劇もいいですけど、シェイクスピアは定期的におりを見て観たほうがいいですね。だって、扱ってるテーマが「人間が一生考えても解決できない問題」なんだもんね! 明るく深いね~。


 さて、そんな感じでそれだけでも十二分に行った甲斐のあった本日の下北沢行だったのですが、実は個人的に、いっちばん「行ってよかった。」と思ったのは、お芝居とはまるで関係のない出来事だったりして……

 今回、昼間の『ポーシャの窓』が終演したのが夕方4時半ごろで、夜の『ヴェニスの商人』が始まるのが7時半だったんですね。
 だもんで、3時間の空きをどうしようかということで、ラーメンを食べたり久しぶりのマックでコーヒーを飲んだりしていたんですが、結局ほとんどの時間を、かの「なんでも雑貨店」ヴィレッジヴァンガードで過ごしたわけだったのです。ベッタベタでごめ~んねっと!

 そんでま、おもしろいけど買うのはどうかしてるよな~、なんていう品々をながめているうちに書籍のコーナーに入っていって、太宰治とか三島由紀夫とかの新潮文庫版がぞろっと並んでいる「若いねェ……」という感じの棚を見ようとしたわけ。寺山修司とか夢野久作とか、中井英夫とかねぇ。たしか、辻村深月さんとか宮部みゆきさんはあったけど、京極夏彦はなかったですね。いかにもありそうなのに……あの商売のあざとさが鼻につくのかな。

 そんなこんなをモヤモヤ考えながらつっ立っていたら、なんか棚の一角ででっかい撮影用カメラをかかえている人と、こっちのほうをしげしげとうかがっている店員さんらしい青年がいて、その視線に思わず、「そんなに万引きしそうに見えてるのかな……」といい加減に自分の風体を気にしだしたところで、おもむろにその店員さんが近づいてきて、

「ちょっとすみません、もしお時間があったらインタビューに答えていただきたいのですが。」

 と言われてしまいました。

 ええ、今ヒマなんでいいですが……と承諾したところ、

「今、こうやって若い人むけのお店で三島由紀夫とか太宰治のコーナーを置いているんですが、そのことについて質問をさせていただきたいと思います。そういう昔の作家さんの本は読んだこと、ありますか?」

 と事前の確認をとられました。

 いや、読んだこともなにも、家の私の本棚には新潮文庫版太宰の黒の背表紙と、三島の朱色の背表紙に染まっている一角がありまして、あと安部公房の水色と春陽堂文庫版の乱歩の……と言いたかったのですが、ここは手短に、

「えぇ、いちおう、ざーっとは……」

 と答えました。

 それで、5分に満たないくらいの時間、カメラの前で愛想笑いを顔に浮かべながら、太宰治の『人間失格』と三島由紀夫の『金閣寺』についてどう思うか、というインタビューに答えるという、なんとも摩訶不思議なひとときを体験してしまいました。

 そりゃまぁ、ひととおりもっともらしいことをくっちゃべって「ご協力ありがとうございました。」ということになったのですが、よくよく考えてみたら、その映像がいつどこで公開されるのかも聞いてませんでした。TV 番組の撮影のようには見えなかったし、もしかしたら店内放送もされずに、文豪コーナーを開いてみた営業記録として客の反応をリサーチした非公開資料用だったのかも知れませんね。公開されないのがいちばんいいです!! バカ面さげて言いたいことの100分の1も語れなかったし。

 だいたいさ、私は太宰治も三島由紀夫もいちおう、好きよ!? 好きだけどさ、『人間失格』と『金閣寺』限定でクエスチョンされてもさ~ってところ、あるじゃないっすか!! これってつまり、

「モーニング娘。の『 LOVE マシーン』とBerryz工房の『ジンギスカン』のいいところを教えてください。」

 って聞かれてるようなもんよ!? いやいや、私の本領は『泣いちゃうかも』と『胸さわぎスカーレット』だからさぁ、そんな最大公約数なあたりをツッコまれてもなぁ~、っていう感じになるわけです。

 だって、こっちのシミュレーションとしては、「太宰治 or 三島由紀夫の作品で好きなのはどれですか?」という質問の「だ」か「み」が聞こえた瞬間に即座に、

「太宰治は『右大臣実朝』が好きであります! 三島由紀夫は『美しい星』が大大大好きであります!!」

 って答えるつもりだったんですけど、そんな質問さえこなかったしね。


 こういう突発的なインタビューって、かなりあけすけに自分の好きなものがなんなのか、そしてそれのどこがどうだから好きなのかを整理してわかりやすい言葉に変換する必要に迫られるじゃないですか。こういうのって、脳みそのふだん使ってないところをフル回転させる気持ちよさがあって、とっても楽しいですよね。

 他人の方との、こういうアクシデントぎみのやりとりは、いいね!
 やっぱり下北沢、行ってフラフラしててよかったなぁ~と思った一日でありました。楽しい町だったね、今日も。
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『軍師官兵衛』  視聴メモ 第2回『忘れえぬ初恋』

2014年01月13日 08時20分30秒 | 日本史みたいな
『軍師官兵衛』第2回『忘れえぬ初恋』(2014年1月12日 演出・田中健二)


登場する武将と、それぞれの『信長の野望』シリーズでのだいたいの能力評価(テロップ順)

小寺 官兵衛 孝高(よしたか)…… 知力84、統率力67
 (演・岡田准一)

竹中 半兵衛 重治 …… 知力59、統率力91
 美濃国大名・斎藤龍興の重臣(演・谷原章介)

柴田 勝家     …… 知力51、統率力87
 織田信長の重臣(演・近藤芳正)

赤松 政秀     …… 知力48、統率力62
 (演・団時朗)

蜂須賀 小六 正勝 …… 知力74、統率力90
 尾張・美濃国境の木曽川の水運を支配する国人「川並衆」の頭領(演・ピエール瀧)

斎藤 龍興(たつおき)…… 知力33、統率力26
 美濃国大名(演・斉藤悠)

織田 信長     …… 知力115、統率力108
 (演・江口洋介)

織田 信行(信勝) …… 知力71、統率力54
 信長の弟、回想シーンのみでの登場(演・尾関伸嗣)

浦上 清宗     …… 知力38、統率力40
 播磨国室津城主・浦上政宗の次男(演・達淳一)
 ※清宗本人は『信長の野望』シリーズにはいまだに登場していないため、父である政宗の能力評価を基準に算定しました。

黒田 重隆     …… 知力72、統率力53
 (演・竜雷太)

小寺 政職(まさもと)…… 知力44、統率力49
 (演・片岡鶴太郎)

木下 藤吉郎     …… 知力95、統率力94
 (演・竹中直人)

小寺 職隆(もとたか)…… 知力72、統率力55
 (演・柴田恭平)


ざっとの感想

○岡田さんの、小柄だがちゃんと筋肉のついている体格が、和装にかなりしっくりきている。『太平記』のころの真田広之さんを一瞬だけ!想起させるかっこよさがありました。

●片岡鶴太郎の演技は相変わらずヒドいんだけど、ワンシーンだけクスッとくるやりとりがあったので、今回はま、いっか。でも、あれは益岡徹さんのリアクションがおもしろいのよね!

○やっぱり岡田さんは若々しくないと! 体当たりで経験を重ねていく青年官兵衛のエピソードがひとつひとつ丁寧で、第1回とは比較にならない好印象を持ちました。

○いくさのシーンで、もちろんフィクション要素はありつつも、小寺・赤松両陣の雑兵がちゃんと百姓ものらしい粗末な兵装になっているのがいいな、と感じました。そういった播磨国内の領主間抗争に対して、大名同士の他国間戦争だった織田家と斎藤家の新加納合戦が、武装がかなり本格的になっていたのも地味に感心しました。そういう描写の細やかさは、大事よね~。
 岡田さんの、ちょっと貧相にしすぎなんじゃないかとも思えるみすぼらしい装備も、OK!

○戦場に柴田恭平がいると、なんでこんなに画面が引き締まるんだろうか!? 黒い甲冑が似合うのよねぇ~。野外ロケでも声がしっかり通るのよねぇ~。

○柴田勝家役の近藤さんの、歴史ドラマ史上に残りそうな「似合わなさ」がものすごい! かなりたよりない、いやされる勝家!! でも実際、本人の武将としての才能に、体格なんてあんまり関係ないかも知れないし……はやくも役所広司のイメージをかすませるプリティ勝家に期待大。

○江口洋介さんの信長はまだまだ未知数なんだけど、ちゃんと美濃攻略戦に大失敗して死にかけている「かっこ悪い時期」を映像化しているのは良かった。そうそう、せっかく若い役者さんを信長にしているんだから、こういう汗まみれの殺陣シーンもやんなきゃねぇ!

○ほんの一瞬だけの登場ながらも、「半兵衛なしでは生きてゆけない」斎藤龍興を活き活きと演じていた斉藤悠さんがとっても良かったです。やっぱり悠さんは、お父上からすばらしい「貧相なチョイ役 DNA 」を受け継いでおられる! ふつうにカッコイイはずなのに……これは立派な才能です。

○栗山善助利安の役の濱田岳さんがけっこう良かったです。この、主人公に将来有望な仲間がだんだん集まってくる感じ! 大河だね~。

○いや~、尾藤イサオ、尾藤イサオ!! 自分の娘を官兵衛でなく、見ず知らずの男に嫁がせなければいけなかった父親の哀しみを、笑顔で演じおったわ! えらく感動してしまいました。

○世間じゃいろいろ言われてるみたいですけど、私は藤村志保さんのナレーション、大好きですよ。藤村さんが劇中で官兵衛に関係する誰かの役をやっていない以上、今回のような「人っぽくない雰囲気を感じさせる声」が物語をかたるのは大いにけっこうだと思います。カツゼツがいいだけ、聴き心地がいいだけの声なんかそっこらじゅうにころがってるでしょ!? ここで藤村さんがやってるみたいな声を出せるお人はそうそういないと思います。


結論、「第3回がとてもたのしみです。」

 おそらく、今回のクライマックスで浦上清宗の正室になった女性が「黒田職隆の実子(官兵衛の姉か妹)じゃなくて官兵衛の初恋のひと」というのは本作オリジナルのフィクションかと思うのですが、そこらへんで自由な想像の翼を広げている脚本の奥ゆかしさに、ものすご~く良い印象を持ちました。この女性とのエピソードによって、官兵衛の青春時代がかなりドラマティックな仕上がりになった! そうそう、こういうのを「脚本が仕事してる」っていうのよねェ~!!

 少々、「2回目からとばしすぎなんじゃないか」という心配も残るのですが、第1回で感じた不安をあらかた吹っ飛ばしてくれた今回はとってもおもしろかった! これからもがんばってくだしゃ~い。


 どうでもいいけど、『信長の野望』シリーズにおける蜂須賀正勝の能力値が地味にスーパーマンなんですけど……なんという織田家びいき! 主役チームだから当たり前だけどさ。
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これから読もうと思ってんだけどさぁ8  ~前勉強をつらつら~

2014年01月09日 09時39分18秒 | すきな小説
『連射王』(2007年 メディアワークス電撃文庫)
 『連射王』(れんしゃおう)は川上稔の小説。上下2巻組み大長編。2007年1月に単行本がメディアワークスより発行された。
 これまで、電撃文庫レーベルを主体にライトノベルを執筆していた川上稔が、初めて執筆した一般向け文芸作品である。
 内容は、シューティングゲームと、それに挑戦するゲーマーを題材とする。川上作品全体に共通して設定されている「都市世界」観における「 FORTH シリーズ」第1作とされているが、2013年時点では、このシリーズを構成する唯一の作品である。

 この作品は、川上のサイト上で Web小説として不定期に連載されていたものを改稿し、大幅に加筆して出版したものである。
 一般向け小説として単行本が刊行されたため、2013年2~3月に刊行された電撃文庫版にも、挿絵イラストは掲載されていない。

あらすじ
 「俺って何かに本気になれるのかな……」
 高校生活の卒業を目前にひかえ、それぞれの道を選択して歩み始める者たち。進学する者、就職する者、現実を見据える者、夢に突き進む者。
 新たな自分の可能性を目指す級友たちの中で、何に対しても本気で向き合えない野球部3年生の高村昴(コウ)は一人、取り残される。
 希望などない自分。目標などない自分。彼は急激に変化していく環境の中で、自身の立ち位置を見失いかけていた。
 そんな中、彼はある一人の人物との出会いから、「自分の本気」を模索する道を歩み始める。あるかどうか分からない、自分の中にいまだ秘めた「資質」。果たして、自分自身の本質はどこにあるのか? それは、射撃ボタンだけが知っている……
 「敢えて問いますが、君は、ゲームが好きですか?」

本作の時代設定について
 この小説の物語が展開する年代についての具体的な言及は作中ではなされないが、登場人物の会話から年号が「平成」であることがわかり、さらに主人公がメガドライブ(セガ)とおぼしき家庭用ゲーム機を自宅に持っていることから、「1989~94年ごろ」であると推定される。
 また、作中に登場するフィクション上の縦スクロール型シューティングゲーム『連射』シリーズ(『連射王』『大連射』『大連射2』『大連射 sp 』)を制作したゲーム会社について、実在した「東亜プラン」(1984~94年)を意識したと思われる描写が多く見られ、本作が東亜プランの倒産を目前にひかえた「1993年」の物語である、と解釈しても矛盾はない。
 ちなみに、『連射王』のモデルは東亜プランの『タツジン』(1988年)、『大連射』のモデルは『達人王』(1992年)、『大連射2』のモデルは『バツグン』(1993年)であると考えられる。


川上作品の「都市世界」とは……
 「都市世界」は、川上稔による各小説シリーズの舞台となっている架空の世界観である。
 時間の順番としては、「 FORTH 」、「 AHEAD 」、「 EDGE 」、「 GENESIS 」、「 OBSTACLE 」と、それらの滅亡と発展を繰り返した先に始まる「 CITY 」というそれぞれの世界を指す。各小説シリーズには、この世界の中の様々な時代・場所で発生した出来事が語られている。

世界の成り立ち
 最初に、「 CITY(都市世界)」の基礎となる「 FORTH 」、「 AHEAD 」、「 EDGE 」、「 GENESIS 」の4時代が存在した。これらはまとめて「基礎世界」と呼ばれ、ひとつの連続した時代でもある。この基礎世界は最終的に滅びることとなり、安定した世界を模索して世界の構築と崩壊が繰り返された「 OBSTACLE 」と呼ばれる時代となる。その末に成立した、これまでで最も滅びに強い世界が、都市世界と呼ばれる「 CITY 」である。

FORTH(前望の時代)
 全体としては概ね平和だった時代。この時代に開発された技術を「旧技術」と呼ぶ。世界が無個性であるがゆえに、個人重視となっていた。簡潔に言えば、今現在の現実世界(『連射王』の舞台となる、平成時代の日本もこれに含まれる)のことを指す。

AHEAD(前進の時代)
 基礎世界が、元々この世界に存在していなかった技術(二足歩行の大型人型機械や「異族」の存在、人体改造技術など)の導入により、変容していった時代。しかしその技術はまだ受容するだけの状態であり、人類が自由に利用できる技術にするための研究が進められた。なお、はるか未来の「 CITY 」時代では、それらの技術の由来は謎とされているが、この「 AHEAD 」時代の最初期にあたる『終わりのクロニクル』シリーズでは、その始まりの歴史が語られている。

EDGE(大先端の時代)
 「 AHEAD 」時代の技術を、人類が自らのものとしていった時代。また、人類は地球を出て外宇宙へと進出している。原因はある星系による内乱といわれているが、詳しくはわかっていない。さらにこの時代では、「 AHEAD 」後期に発見された「流体」と呼ばれる新しい燃料が実用化されている。

GENESIS(大基盤の時代)
 人類が地球に戻ってきた時代。「旧技術」の大半が使用できなくなり、それ以降の時代の技術が主流となり、それらの新技術が完全に人類のものとして定着した。最終的には、「 EDGE 」時代を終える契機となった大戦争が再び勃発し、この世界も滅びることとなる(『境界線上のホライゾン』シリーズがこの時代にあたる)。

OBSTACLE(大障壁時代)
 基礎時代をベースに様々な要素が追加されたり削られたりした世界が、無数の構築と崩壊を繰り返した時代。そのそれぞれの世界が、これまでの基礎時代と同程度の長さの歴史を持っていた。2004年2月から連載が開始されている短編小説シリーズ『 OBSTACLE OVERTURE 』(現在は休載中)がこの時代にあたる。

CITY(都市の時代)
 基礎時代と「 OBSTACLE 」にあった全ての技術が集約された時代。これまで世界自体に組み込まれていた「世界保護」の機能が無く、滅びに世界の住人が対峙できるようになった「自己責任の時代」でもある。そのため、何度も世界滅亡寸前の事態が起きているが、そのたびに住人(一連の「都市シリーズ」作品における主人公たち)の活躍によって滅亡は回避されている。
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『軍師官兵衛』  視聴メモ 第1回『生き残りの掟』

2014年01月07日 09時56分23秒 | 日本史みたいな
『軍師官兵衛』第1回『生き残りの掟』(2014年1月5日放送 初回60分拡大スペシャル 演出・田中健二)


登場する武将と、それぞれの『信長の野望』シリーズでのだいたいの能力評価(テロップ順)

小寺 官兵衛 孝高(よしたか)…… 知力84、統率力67
 (演・岡田准一)

赤松 政秀     …… 知力48、統率力62
 播磨国龍野城主(演・団時朗)

織田 信長     …… 知力115、統率力108
 尾張国大名(演・江口洋介)

黒田 重隆     …… 知力72、統率力53
 官兵衛の祖父(演・竜雷太)

小寺 政職(まさもと)…… 知力44、統率力49
 官兵衛の形式上の外祖父、播磨国御着城主(演・片岡鶴太郎)

藤吉郎       …… 知力95、統率力94
 のちの豊臣秀吉(演・竹中直人)

小寺 職隆(もとたか)…… 知力72、統率力55
 官兵衛の父、小寺政職家老(演・柴田恭平)


ざっとの感想

●とにかく菅野祐吾のテーマ曲がつまんない。『功名が辻』(2006年)に似てる上に、数段劣るっていうのは一体どんな了見なんだろうか。

●片岡鶴太郎の演技がまるで演技になっていない。スベりまくりのお笑いコント。北条高時のアグレッシヴさを期待した私がバカでした。

●小寺家重臣の小河良利と江田善兵衛を演じる俳優さんがそっくりすぎて気持ちが悪い。「バカ家臣1と2」みたいな雑さ。

●岡田准一さんの顔のアップは……なんかそんなに多くはほしくない。すぐにおなかいっぱいになって胸焼けする。
 あと、オープニング映像に主人公のモヤモヤしたイメージ演技を入れるの、もうやめてくんない!? 主人公のツラなんか、本編で約一年さんざんっぱら見せつけるんでしょ? 毎回やるオープニングに一回見るだけで飽きるものいれんな、くそたわけがぁああ!!

●冒頭の岡田さんの演技がかなり疲れた感じで、有能さがあまり感じられない。少なくとも「一年間見続けるぞ」という気になる主人公ではない(官兵衛がそうなった経緯はわかるけどよう!)

●隆大介の無駄づかいにも程がある。なんであんな木偶の棒みたいなキャラをわざわざ隆さんが……

●織田軍に発破をかける信長の言い回しが、命を捨てろだの天下を取るだのとものすごく抽象的で、気持ち悪いったらありゃしない。あんなんで桶狭間に行けるか!! ちゃんと織田家らしく現実的に「勝ったら全員ボーナス支給だぎゃー!!」とか言ってください。

●信長に対する藤吉郎の惚れ込みようが狂信的なのはいいけど、江口洋介さんでしょ……なんか説得力がない。ここが渡哲也さんだったらしっくりきてたんでしょうけど!

○竜雷太さん、尾藤イサオさん、団時朗さんの味わいはさすがでした。やっぱり、おもしろい人はおもしろいね!

○官兵衛の子役が今回だけで終わりらしいのはもったいない。若山耀人(きらと)くんっていうあの子は、ちょっとバカっぽい子どもらしさもあってけっこうよかった。でも、岡田さんの幼少時代というよりは、『功名が辻』で官兵衛を演じた斉藤洋介さんの幼少時代のような気がする……


結論、「第2回がとてもたのしみです。」

 まま、視聴率はしょうがないっすよ! 去年の影響をモロに受けちゃったんでしょう。
 あの、家に TVがない私がどうやって視聴できたのかについての説明は、今後もナシという方向で……『1Q84』の天吾のお父さんみたいな人、こないでぇええええ
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いつやるか!? いや、よくわかんねっす……  第13使徒バルディエル 夕陽に死す!!  その数日前

2014年01月05日 22時07分56秒 | エヴァンゲリオン使徒大行進
 年、あけたよね~! 正月三が日、終わったよね~!! どうもこんばんは、そうだいでございまする~。みなさま、今日も一日お疲れさまでした!
 いやぁ、始まった始まった、フツーの日々が。まぁ淡々とね、災禍なくやっていきましょう、災禍なく!


《前回のあらすじ》
 第3使徒サキエルの日本発上陸以来、数々の使徒との約半年におよぶ死闘を繰り広げてきたネルフであったが、ついに第12使徒レリエル戦にいたって、「使徒が人間に精神的コンタクトを試みる」というさらなる新局面に入った!
 そして、レリエルの襲来はエヴァンゲリオン初号機の人類の制御を超えた「覚醒」によって結果的に撃退され、初号機専用パイロットも無事に生還することができたものの、その1ヵ月後、思わぬ事態の報告が、はるか遠方から日本の第3新東京市にもたらされることとなる……


 「思わぬ事態」についての話題に入る前に、ちょっとだけ。
 前回にふれた「対レリエル戦に関する人類補完委員会の特別査問会」シーンの後、お話の視点はごく短いながら、第3新東京市のどこかにあると思われる病院に移り、そこの「12号室」に「 E事件(第3使徒サキエルの襲来)」以来、「なかなか難しいケガ」によって入院している小学生の妹の見舞いをするために病室に向かう、第3新東京市立第一中学校2年 A組の男子生徒(エヴァンゲリオンの専用パイロットたちの同級生、常にジャージ姿、あやしい関西弁)の姿が描写されます。そこに挿入された看護師どうしの会話によれば、彼は「週に2回は必ず顔を出している」そうで、非常に妹おもいな彼の一面が的確にあらわされている重要なシーンになっていますね。それにしても、私の想定によるのならば、ケガで「半年間」も入院ですか……妹さん、大変そうですねぇ。良くなるといいねぇ。もし快復したとしても、あやしい関西弁、お兄ちゃんからうつんないといいねぇ。

 さて、お話はその後、使徒ファンにとっては別にどうだっていい、あやしいネルフ総司令とエヴァンゲリオン0号機専用パイロットとのおノロケ会話シーンをさしはさみまして、今回の第13使徒襲来事件の最初の起点となる、「ネルフ・アメリカ第2支部の消滅」という大事件が発生することとなります。

 この第2支部の消滅事件も、例によって具体的な発生時期の説明はなされていないのですが、作中ではこれに対応する日本のネルフ本部のてんやわんやが、「中学校を休んだ0号機専用パイロットの自宅マンションにたまったプリント類を届ける初号機専用パイロットとジャージ君」という一連のくだりにサンドイッチ形式ではさまれているので、第3支部の消滅が0号機専用パイロットが中学校を休んだ日に発生したことは間違いないようです。限定できねぇ~!! あの青い髪の女の子、学校休んでばっかだもんなぁ~。
 ところでその日は、初号機専用パイロットとジャージ君の共通の親友であるメガネにきび君が、自身の趣味である戦艦見物のために学校を休んで新横須賀(神奈川県?)に出かけてもいたようです。このときに彼がお目当てにしていたという「みょうこう」という名前の戦艦とは、おそらく1996年に就役した海上自衛隊のイージスシステム搭載型護衛艦「みょうこう」(最大排水量9500トン)のことではないかと思えるのですが……約4ヶ月前に国連海軍(実質的にはアメリカ海軍)の太平洋艦隊フル出動に乗船して、エヴァンゲリオン2号機と第6使徒ガギエルとの大決戦をびっくりするくらいのアリーナ席から楽しんだ彼にとっては、物足りないにも程がある見物旅行だったのではないのでしょうか。なんにしろ、学校サボってないで勉強しなさい、勉強!!

 「ネルフ・アメリカ第2支部が消滅」。
 この急報は日本のネルフ本部でも即座に、その状況と原因の究明を急ぐ大事件として対処されましたが、事実としては、「アメリカ合衆国西部のネバダ州にあるネルフ第2支部の、施設の中心部から半径89キロメートル一円が一瞬にして消滅してしまった」ことと、そのとき第2支部に収容されていた「エヴァンゲリオン4号機」もまた、消滅してしまったこと。そして事故発生時、第2支部内では、かの第4使徒シャムシエルの「遺体」から奇跡的に採集された巨大な赤い球状の物体「コア(核)」を、ネルフの「ドイツ第3支部」で修復したものを運び込んで、「S2(エスツー)機関」の搭載実験が実施されている最中だった、ということ。

 S2機関というのは、使徒のみなさんが地球上の生物の常識内では考えられない強靭な生命力と自己再生能力をもって活動する、そのエネルギー源となる「魂」ともいうべき文字通りの核心部分のことでありまして、これの「搭載実験」とはつまり、人間側の切り札である「エヴァンゲリオン」シリーズを、莫大な電気エネルギーがなくとも機動可能な「自立する究極の決戦兵器」に進化させんとする大実験だった、ということになるのです。要するに、「人類製の使徒」を造る、ってことになるんでないかい!?

 結局、状況報告の通りにこの実験は、「基地1コまるごととエヴァンゲリオン1機の、数千人の命を巻き添えにした消滅」という、ペンペン草1本残らない惨劇を招いて大失敗に終わったわけなのですが、ネルフ本部はこの大事故の直接の原因について、

 「予想される原因は3万2768通りあります。」=「なんだかよくわかりませんでした。」

 としながらも、「まぁ、S2機関をガチャガチャいじくったせいなのは間違いないでしょ。」と、なんだか対岸の火事のようなニュアンスで討議していました。
 その後、話題は原因から、「爆発事故じゃなくて『消滅』事故だった」ことについての推測に移り、物知り顔のエヴァンゲリオン計画開発主任(金髪染め、泣きぼくろ)は、「たぶん、『ディラックの海』に飲み込まれたんでしょうね、先の初号機みたく。」とさらっと分析していました。

 と、いうことは、S2機関は、それだけで使徒が生きているのと同じくらいの危険性があるものだった、ということなのだろうか? それとも、第2支部で行われた搭載実験の過程で、S2機関を中心にして、あのシャムシエルが「再生」してしまったのだろうか? 映画版『風の谷のナウシカ』のドロドロ巨神兵とか、『ウルトラマンタロウ』の再生デッパラスとか、ドラクエのバラモスゾンビみたいなグロ注意な風貌で!? それは燃えるなぁ~!!
 日本ではあまりパッとした活躍を見せなかったシャムシエルが、はるか遠く異国の地で大輪の花を咲かせおったわ……よくやった! 負けたら終わりなのではない、あきらめたら終わりなのである!!

 ただし、かろうじて記録された、事故当時の衛星からの第2支部の映像は、第12使徒レリエルの展開した漆黒一色の「ディラックの海」とはまるで様相の違う、それこそ「爆発」にしか見えない衝撃波の拡散や地表の赤熱、その後の地形のクレーター化をしっかりとそのカメラにおさめており、これをレリエルの場合と同じと解釈するほうがおかしいんじゃなかろうか、と思えてしまう描写の差はあります。

 ここで余談ですが、今までの TVシリーズ版でエヴァンゲリオンとのあいだに繰り広げられてきた数々の死闘の中で、使徒のコアが人類側による修復が可能な状態で採集できたのは第4使徒シャムシエルの1例だけだったものの、使徒の遺体が生前に近い状態で残ったものには、第5使徒ラミエルと第9使徒マトリエルの2例が挙げられます。ただ、そのどちらも肝心かなめのコア部分がエヴァンゲリオンの攻撃によって完全に破砕してしまったらしく、残りの遺体部分の分析結果で、特に人類側にメリットのある収穫はなかったようです。
 にしても、かたやラミエルは日本中の電力を総動員した超兵器ボジトロンスナイパーライフル、かたやマトリエルはエヴァンゲリオンの通常兵器パレットライフルの5秒間連射……父ちゃん、情けなくて涙が出てくらぁ!!

 これらの状況から見るのならば、人類側の対応としては、

「なるべく火器を使わずにプログレッシブナイフのような刃物でコアをサクッと刺したほうが、よけいな爆発もなく新鮮なまま使徒をしとめることができます。」

 という、料理番組のテロップのようなコツがつかめるわけなのですが(サハクィエルは死後に仕様で自動的に自爆しちゃいましたが)、みなさんもご存知の通り、最新型の『新劇場版』シリーズでは、使徒はみ~んな仲良く、死後にコアも含めた身体全体が血のような赤い液体に瞬時に変質して流れ去るという処理に統一されたようです。人類に残すヒントは、なしよ!


 さて、この消滅事故に関する討議の中で、ネルフ本部のエヴァンゲリオン作戦指揮官(三佐、酒好き)は、「妨害工作の線もある。」という意味深な発言をしています。
 この「エヴァンゲリオンだけが人類の救い」という、猫の手も借りたい大変な時期に、みすみす基地1コとエヴァンゲリオン1機とパーにしてしまう妨害工作なんて、脚のひっぱりあいにも限度がある話なのですが、どうやらアメリカのネルフ(第1支部と第2支部が存在)は、日本のネルフ本部の息のかかっていない「アメリカ独自のエヴァンゲリオン」の完成にやっきになっていたらしく、今回の早急ともいえるS2機関搭載実験とその失敗も、日本におけるエヴァンゲリオン0~2号機の一連の大戦果に強いあせりを感じた結果だったらしいのです。エヴァンゲリオン2号機は、その完成と起動実験こそドイツの第3支部でとり行われたものの、設計と部品の建造は日本本部が中心になっています。
 だとしたら、作戦指揮官が発言した「妨害工作」が事故の原因だった場合、その有力な容疑者にはまっさきに、他ならぬ作戦指揮官が所属している日本本部が挙げられるワケでして……この時期の、組織内で孤立する彼女の疑心暗鬼な姿勢がはっきり見てとれるセリフですね。討議に同席していた開発主任は、当然のごとくその意見をガン無視して、先にあげたような「S2機関暴走説」を主張するのでした。ぎすぎすしてんな~。

 ん? ということは、開発主任が強引を承知の上であえてゴリ押しした「ディラックの海うんぬん」は、真実から目を遠ざけるための急場ごしらえのウソで、真相は作戦指揮官の読みどおりの、アメリカ支部の先行をおさえるための日本本部による妨害工作だったりして!?
 やっぱり『新世紀エヴァンゲリオン』。『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』とは比較にならない奥深さがあります。でも、その奥深さの行き着くところはアレなんですけどね!! まぁ、おもしろいからいいじゃないの。


 そんな事故直後、かなり早い段階でアメリカ政府は、残されたネルフ第1支部が保有している「エヴァンゲリオン3号機」を、第3新東京市のネルフ本部に「移送する」という通達を一方的におこないます。これを本部側は、「危なくなってきた自分の持ち物を弱気になって他人に押しつける」ような処置、と解釈しました。
 ここでいったん整理しておきますが、『新世紀エヴァンゲリオン』本編で言及されている国際的特務機関ネルフの支部は、アメリカの第1・2支部とドイツの第3支部の3ヶ所だけであり、劇中で直接の言及はないものの、その後の展開で語られる、世界各国に設置されているというスーパーコンピュータシステム「 MAGI 」のコピー(オリジナルはもちろんネルフ本部にある)の所在位置から、第1支部はアメリカ北東部のマサチューセッツ州、第3支部はドイツの首都ベルリンか北西部の主要都市ハンブルクのどちらかにあるようです。
 マサチューセッツ州といえば、いちおう州都は歴史ある大都市ボストンなのですが、いかんせんボストンは港湾都市なんでね……セカンドインパクト後に無事に残っているとは、ちょっと考えられないですね。おそらく、ネルフ第1支部はもっと内陸の「ニューボストン」にあるのではないのでしょうか。まぁ、そんな重要都市にエヴァンゲリオンなんていうデンジャラスなしろものは置いときたかないですよね!

 あれ? そもそも、アメリカ政府はなんでそんなにエヴァンゲリオン3号機を危なっかしく感じているのでしょうか。だってさ、あくまでも消滅事故の原因はエヴァンゲリオンじゃなくて「S2機関」にあるんでしょ? じゃあ3号機、危なくないじゃん。
 ということは、3号機があることで、そこに新たな使徒がよりついてくるとでも考えたんでしょうか。

 でも、ここまで『新世紀エヴァンゲリオン』を楽しんできたみなさんならば、ここでも「?」が出てくるはずです。
 使徒はあくまでも、サードインパクトを発生させるために第3新東京市を目指してやって来るはずなんです。この、視聴者にとっては常識ともいえる事実を、アメリカ第1支部は把握していないということになるんでしょうか?

 確かに、第3新東京市から離れた場所に出現した唯一の例外とも言える第6使徒ガギエルの襲撃は(浅間山火口内の第8使徒サンダルフォンは赤ちゃんだったから除外)、視聴者こそ、それがあやしい総司令の受け取った「第1使徒アダムの胚(東南アジアで食べられるニワトリのひなみたいな気持ち悪いやつ)」を目指したがゆえの活躍だったことはわかっていますが、そんなことを知るよしもないアメリカ政府は確かに、あれを輸送中のエヴァンゲリオン2号機をねらった行動と誤解して、

「ヤッパ、アノ『イーヴァンジェリオン』トカイウろぼっとハ、シトほいほいナンデース! キケンデース!!」

 と分析していたのやもしれず。自慢の太平洋艦隊もさんざんにやられちゃってたしね。
 その上、当時でいう最新の事例だった第12使徒レリエルも、一見すると「エヴァンゲリオンを狙っているとしか思えない」攻撃法をとっていたことから、もしかしたらアメリカ政府は、S2機関うんぬんなぞ関係なく、近日中にエヴァンゲリオンとのかかわりを断ってしまおうと、けっこう前から腹を決めていたのかもしれません。

 じゃあ、あの搭載実験も、敵対する日本のネルフ本部と、態度がどんどん冷たくなるアメリカ政府との板ばさみに汲々としたアメリカのネルフ支部が、一発逆転ホームランをねらってがんばりすぎちゃった末の悲劇だったのかもね……


 のちに『旧劇場版』で語られることになるネルフ本部の末路もひどいものでしたが、実はその影で、同じくらいにひどい目に遭ったアメリカ第2支部があったことも、私たちは忘れてはならないのだ……ノーモア、意味のない主導権あらそい!!

 『新世紀エヴァンゲリオン』は、大人も楽しめるアニメなのねぇ~……と、第13使徒さんそっちのけの感慨をいだきつつ、また次回!!
 さまよえるエヴァンゲリオン3号機、いずこへ~!?
コメント (2)
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