政府は30日、米軍横田基地(東京都)に配備されている米空軍の輸送機CV22オスプレイが鹿児島県・屋久島沖で墜落した事故を受け、国内に配備された米軍のオスプレイの飛行を安全が確認されるまで中止するよう米側に要請した。ただ、その後も沖縄県に配備されるオスプレイは飛行が継続している。原因究明は過去の事故と同様に、米側の機密保全や日米地位協定に阻まれ不十分に終わる恐れがある。(川田篤志)
◆陸自の訓練再開時期は「総合的に判断」
防衛省は同日午前8時、米軍に飛行停止と事故に関する情報提供を申し入れた。だが同省の目視確認では、午前8時から午後3時半の間、普天間(ふてんま)飛行場(沖縄県宜野湾市)で18回、嘉手納(かでな)飛行場(同県嘉手納町)で2回、海兵隊型のMV22オスプレイが離着陸していた。在日米軍のオスプレイは横田にCV22が6機、普天間にMV22が24機配備されている。
今回の事故を受け、陸上自衛隊は所有するオスプレイ14機の機体の安全性を確認するため、訓練飛行を当面の間、見合わせる。再開時期について、陸自トップの森下泰臣陸幕長は記者団に「総合的に判断する」と述べるにとどめた。
松野博一官房長官は記者会見で、事故の原因調査について「米側と連携しつつ適切に対応したい」と語った。陸自オスプレイを配備予定の佐賀駐屯地(佐賀市)の建設計画は変更しない考えも示した。
◆昨年もアメリカで墜落したのに「安全性に問題ない」
オスプレイの事故は国内外でたびたび発生している。昨年は米国内でMV22が墜落して米兵5人が死亡。その調査報告書が公表された今年7月、陸自木更津駐屯地(千葉県木更津市)に暫定配備されたオスプレイの飛行も一時停止したが、米軍が示した再発防止策に従えば安全性に問題ないとして8月に再開した。
今回の墜落事故では、乗員8人のうち1人の死亡が確認された。日本国内で起きたオスプレイの事故で死者が出たのは初めて。第10管区海上保安本部は11月30日、搭乗していたのは8人だったと再訂正した。当初8人と発表し、その後、6人と訂正していた。
防衛省は29日の事故発生当初、CV22が「不時着水した」と説明していたが、30日になり「墜落した」と言い換えた。
<東京新聞社説>オスプレイ墜落 国内配備自体を見直せ
2023年12月1日 07時06分
在日米空軍輸送機CV22オスプレイ=写真は同型機、東京都内で=が鹿児島県の屋久島沖で墜落、乗組員1人の死亡が確認された。オスプレイの死亡事故は日本国内では初めて。この際、在日米軍、陸上自衛隊ともに日本国内への配備そのものを見直すべきだ。
事故機は横田基地(東京都)に所属。11月29日午後、岩国基地(山口県)から嘉手納基地(沖縄県)に向かう途中、屋久島の東約1キロの海上に墜落した。陸地に近く、国民のオスプレイへの不安が強まることは避けられまい。
日本政府は米軍に対し、安全が確認されるまでオスプレイの飛行停止を求め、陸自が保有するオスプレイも飛行を当面見合わせる。墜落原因の究明前に飛行を再開すべきでないのは当然だ。
在日米軍のオスプレイは横田基地に空軍CV22が6機、普天間飛行場(沖縄県)に海兵隊MV22が24機配備されている。日米両政府は7月、MV22の日本国内の山岳地帯で低高度の飛行訓練を認めたが、基本構造は墜落したCV22と同じであり、再検討を求めたい。
陸自は中国の海洋進出や台湾有事を見据え、南西地域の防衛力強化のために輸送力が大きく航続距離も長いオスプレイを導入した。佐賀空港に17機配備する計画で、現在は14機を木更津駐屯地(千葉県)に暫定配備している。
松野博一官房長官はきのうの記者会見で、佐賀空港への配備計画を変更しない考えを示したが「結論ありき」ではないか。
オスプレイは開発段階から安全性が疑問視され、国内外で事故を繰り返してきた。今回の墜落事故も機体の欠陥によるものではないかと疑われている。まずは墜落原因を究明し、国民への説明に努めるべきである。
日本政府は調査結果も踏まえ、在日米軍によるオスプレイの日本配備が適切なのか、米政府と協議する必要がある。陸自も取得に巨費を投じたからといって、安全性に不安がある機体を漫然と使い続けていいわけはない。
防衛装備は国民の命を守るためにある。乗員だけでなく国民の安全をも脅かすなら本末転倒だ。
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