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★脚本家・野木亜紀子さん「そんなことある?」沖縄のリアル、米軍基地と性暴力 「連続ドラマW フェンス」

2023年03月13日 08時13分26秒 | ●YAMACHANの雑記帳
第1話より。キー(右、松岡茉優)と桜(宮本エリアナ)

第1話より。キー(右、松岡茉優)と桜(宮本エリアナ)

 「逃げるは恥だが役に立つ」「アンナチュラル」などを手がけた脚本家・野木亜紀子さんが、沖縄の現状を丹念に取材して書き上げたサスペンスドラマ「連続ドラマW フェンス」がWOWOWで19日午後10時から放送・配信が始まります。(第1話の放送は無料。無料トライアルも可能)。過重な米軍基地負担、性暴力事件、さまざまな差別。野木さんは「(主人公の)キーと桜が悲しみをぶん殴り、フェンスに挑む話。沖縄のことをもっと知ってほしい」と語ります。(石原真樹)

 「フェンス」のストーリー 雑誌ライターの小松綺絵(キー、松岡茉優)は、米兵による性的暴行事件の真相を暴くために東京から沖縄へ。被害者だというブラックミックスの大嶺桜(宮本エリアナ)の供述に不審な点があることから、観光客を装って桜に近づく一方で、沖縄県警の警察官・伊佐兼史(青木崇高)から情報を引き出し、繁華街で米兵に聞き込むなど体当たりで調査。日米地位協定の壁や、沖縄の女性たちが直面する厳しい現実を目の当たりにしながら、真相に近づいてゆく。

◆沖縄のこと、知れば知るほど驚いた

野木亜紀子さん

野木亜紀子さん

 —当初は打診を断ったそうですね。
 2020年夏、18年にNHKで放送したドラマ「フェイクニュース」で一緒に仕事をした北野拓プロデューサー(NHKエンタープライズ)から「沖縄が舞台のクライムサスペンスを」と言われ、そのときは「とてもじゃないけど背負えない」と断りました。ただ、沖縄を舞台に基地問題を扱うドラマは民放の地上波では難しいのが現状で、今回、沖縄の普天間出身の高江洲義貴プロデューサー(WOWOW)が手を上げてくれて、企画が通った。報道記者として沖縄で取材経験のある北野プロデューサーと、WOWOWという自由度の高い放送局、両方がやろうと言ってくれているのならやるしかないかな、と覚悟しました。
 このドラマを作るべきだと思ったのは、私もですが、沖縄のことを知らない人の方が多いからです。今だったら名護市辺野古沖を埋め立てる基地建設の問題があるよね、という程度は一般常識として知っていますが、例えば米兵犯罪の何%が起訴されるのか、日本の警察が自由に捜査できる範囲や制限についても、そんなことがあるの?という状態で、知れば知るほど驚きました。
 6月23日は、沖縄戦で旧日本軍が組織的な戦闘を終えた日とされ、死者を弔う「慰霊の日」です。昨年はその日を沖縄で過ごしたのですが、1日中、テレビでもラジオでも慰霊の日にまつわる話を流していました。でも本土では全国ニュースでちょっと触れるだけ。その後、東京で会う人会う人に「沖縄の慰霊の日って知ってる?」と聞いてみましたが、みんな見事に知らないのです。
 そもそも、新聞やニュースに触れない人もいる。でもドラマという形なら、過去に起きたことも含めて描ける。エンタメには想像させる力もある。そうしたことから、作る意味があると思いました。
 —性犯罪を取り上げた理由は。
第1話より。イーさんこと伊佐兼史(右、青木崇高)

第1話より。イーさんこと伊佐兼史(右、青木崇高)

 北野プロデューサーの提案です。ただ当初は「沖縄を舞台にした刑事ドラマ」で、1話ずつ異なる事件を追いながら、縦を貫くストーリーとしてひとつの性的暴行事件を追う、といったものでした。しかし全5話しかないので、できることが限られてしまう。やるならば、ど真ん中において周辺の話を拾っていくほうが良いのではないか、と考えました。
 「フェンス」というタイトルも北野プロデューサーからです。「フェイクニュース」もそうでしたが、毎回そのまま、ジャストフィットなタイトルを持ってくるのですよね。ほかの作品ではだいたい私がタイトルを付けているので、こういうのは北野案件だけですね。でも、本当に「フェンス」だな、と。

◆「フェンス」が隔てていたのは基地だけじゃなかった

 —普天間基地の返還に伴う辺野古沖への新基地建設への賛否など、沖縄を描こうとすると複雑なことばかりです。
 一般の方から警察関係、弁護士、女性支援の活動をしている人たちなど、ありとあらゆる人たち100人以上に話を聞きました。立場によって言うことが全く違い、途中で「どうするの、これ」とくじけそうになりました。たとえばミックスルーツの人の話にしても、ブラック系と白人系は違うことを言うし、「ハーフ」「ミックス」「バイレイシャル」といった呼び方の好みも人によってさまざま。「差別は問題だから変えていきたい」という人もいれば「差別の話はしないほうがいい」という人も。沖縄の当事者のうち後者が8、9割もいるということは、取材をするまで想定していませんでした。
 10代でシングルで出産する女の子も多くて、両親と祖父母もいるからなんとかなる子もいれば、どうにもならない子もいて。若年妊娠が増えると、貧困率が上がるという面もあるし、続けて産んで最初の子がヤングケアラーになってしまう場合もある。これはもちろん女の子側だけの問題じゃなくて、妊娠させた男の子が逃げてしまうことが多々あって、どうやら「まわりもそうだから」という感覚があるようで。最近では、家事や子育てを頑張る若い男の子も増えてきて二極化しているようですが、なかなか難しいなと思いました。今回はシングルマザーや若年妊娠については描けなかったですが。
 —単純に米軍=悪とは描かれていませんね。
第1話より。桜(宮本エリアナ)

第1話より。桜(宮本エリアナ)

 実際、そんな単純な問題ではありませんからね。北野プロデューサーがセットしてくれて、米軍側の捜査機関にも、中にも入らせてもらって取材しました。ドラマで出てくる、不必要に肩に触れるだけでも性暴力たりえるというのは実際に聞いた話です。沖縄県警の人が「彼らはシニ(沖縄方言で『本当に』の意味)優秀だよ」と言っていたのも本当。ただ、どうしたって米国の組織であるわけだし、国同士の利害が絡めば自国に利すように動きますよね。どこまで信用していいのかは、時と場合によるのではないでしょうか。
 ー「フェンス」は米軍基地だけではないですね。
 企画が始まった当初から、米軍基地のフェンスもそうだし、人種やジェンダー、沖縄と本土などさまざまなフェンスがあることはわかっていたのですが、取材でさらに加わったのは、世代間のフェンス。年配の人たちと、今の若い子たちの認識が結構違っているな、それはちょっと良くないのではないかな、と感じました。若い世代からすると生まれたときから米軍基地が当たり前にあって、アメリカ人の友達もいて、むしろ「ヤンキー・ゴー・ホーム」(アメリカ人は帰れ)などと聞くと眉をひそめちゃうわけです。そんなの差別じゃん、と。その気持ちは分かりますよね。基地反対の人たちがそう言い続けても、なかなか理解されづらい。
 かといって、若い人が全部正しいかというとそうでもない。ネット上の情報は玉石混交で、デマもうそもたくさんあるのに、SNSでどんどんシェアされてしまう。例えば、基地反対の運動をしている人たちはバイト代をもらっている、と沖縄でも信じている子たちがいる。もらった人を知ってるの?と聞くと、「直接は知らない」と。そんなお金になる話なら、「バイトしてきた!」という人がそこかしこにいたっていいのに、いない。沖縄であれだけ慰霊の日などに特集が組まれていても、戦争を体験している世代から直接話を聞けた世代と、もっと若い世代の間で分断がありますね。

◆基地からにじむ暴力「最後には末端の女の子に」

第1話より。キー(松岡茉優)

第1話より。キー(松岡茉優)

 —脚本にあるせりふ「基地の中から染み出るPFOSみたいに、にじみ出た暴力は、低い方へ流れていく」が心に残りました。
 そのせりふは尺の関係で、放送されるドラマではカットになってしまったのですが、まさに、そういうことだと思います。結局、しわよせが全部弱いほうに向かう。それって常ですよね。沖縄に限らず、日本中、世界中で。その構造でいうと、沖縄の男性も実は大変なんですよね。すぐ近くに筋肉ムキムキで大柄の米兵がたくさんいて、その人たちと張り合わなきゃいけない。そうするとどうしても暴力的になっていって、最後には末端の、力のない女の子に向かってゆく。沖縄の基地負担が解消されない間は、その構造は温存され続けるのではないでしょうか。本当にそれでいいのか、そんなことはない、と思います。基地問題も性暴力の問題も、個人の努力ではどうにもならない部分がある。それは社会に変わってもらわないといけないですよね。

 PFAS(ピーファス)有機フッ素化合物 PFOS(ピーフォス)やPFOA(ピーフォア)など多数あり、PFASが総称。水や油をはじく性質があり、泡消火剤や塗料、フライパンのコーティングなどに幅広く使われてきた。化学的に安定し、環境中でほとんど分解されないため「永遠の化学物質」とも呼ばれ、人や動物の体内にも蓄積されやすい。発がん性のほか、出生時の体重に影響が生じる恐れが指摘され、近年、国際的に使用の禁止や規制が進む。日本の水道水などの暫定目標値はPFOAとPFOSの合計が1リットル当たり50ナノグラム。

 ー辺野古の基地建設問題についてどう考えますか。
第1話より。キー(右、松岡茉優)と雑誌編集長の東諭吉(光石研)

第1話より。キー(右、松岡茉優)と雑誌編集長の東諭吉(光石研)

 県外移設ではなく「普天間か辺野古か」となっているのがそもそもなんで?と思います。一方で普天間基地が危なすぎるのは間違いない。本土ではあまり報道されませんが、米軍機からものがよく落ちてるんですよね。「窓枠ごと落ちました」とか「水筒落としました」とか。そんなのラフすぎない?と思います。もしこれが自衛隊なら、間違いなくおおごとになるのに、なんとなくそのままになってしまっている。

◆まずは性犯罪の厳罰化から始めるべきでは

 ー3月8日は国際女性デーです。日本の女性差別の状況をどう見ますか。
 性犯罪の厳罰化から始めるべきではないでしょうか。盗撮だって「迷惑防止条例」どころじゃないでしょう。「フェンス」の話でいうと、沖縄で性暴力の関係の取材をすると、闘っているのはみんな女性。男の人は関心がないのでしょうね。性暴力は被害を受けて終わりじゃなくて、それからが、長すぎるほど長い。だけど、サポートしてくれる人もいるし、ひとりで抱えないでほしいなと思います。日本でもようやく、「不同意性交罪」や盗撮を取り締まる「撮影罪」の検討が始まりましたよね。ぜひとも確実に進めてほしいです。
 ー登場人物が女性である苦しみをつぶやく場面で胸が詰まりました。一方で、ドラマでは女性たちのたくましさも描かれます。
 女はどうしても、奪われる性というところがある。どうしたって力では男性にかなわないので。性別は簡単には変えられないし、変えたいわけでもない。
 日々いろいろなことを見聞きするたびに「まだここか」とも思いますが、少なくとも昔よりは良くなってきていて、特にここ数年で大きく変わってきていると感じます。だから希望を捨てずに、みんなでそれぞれの場所で頑張ろう、ということでしょうか。

 のぎ・あきこ 1974年、東京都生まれ。日本映画学校を卒業後、ドキュメンタリー制作会社に就職、20代後半からフリーランス。脚本家を目指して30歳になる前にテレビの仕事を辞め、派遣社員をしながらフジテレビのヤングシナリオ大賞に脚本を応募し、35歳だった6年目に大賞に選ばれる。主な脚本作品にドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」(原作・海野つなみ)「アンナチュラル」「MIU404」「コタキ兄弟と四苦八苦」、映画「罪の声」(同・塩田武士)「犬王」(同・古川日出男)など。


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