近くにある家の、葉の芽が膨らみ始めたアジサイの枝に、稲穂が掛けてあった。この辺りには30年以上も住んでいるが、このようなものはこれまで気づかなった。
刈り入れの時期はとっくに済んでいるが、稲穂はどこかに保存してあったような感じで、きれいな外見だ。その家の人に尋ねてみようと思ったが、わざわざ呼び出してもと思ってやめた。家に帰って調べてみたが結局わからなかった。この家は今時風の造りなのだが、この辺りの農家なのかも知れず、何か農業上の習俗なのかと思った。
近所のYさんの奥さんに出会ったときに尋ねてみると、「ああ、雀の餌」とあっさり言われたので拍子抜けした。その家は農家ではなくアパートを経営しているそうで、そのどこかからもらったのだろうとのことで、それ以上のことはYさんも知らなかった。
何となく珍しい物のように思えて、あれこれ考えたり調べたりしたのだが、雀の餌とは単純な答だった。それでもまだ心の片隅では何か謂れがあるのか、秋の収穫期に食べられないように、今のうちに食べさせておくというまじないかなどと考えている。