中国迷爺爺の日記

中国好き独居老人の折々の思い

抗日映画

2013-05-23 09:00:08 | 中国のこと

 中国で近年量産され、反日感情をあおる一因とされてきたゴールデンタイムに放映される「抗日ドラマ」が過度に娯楽化しているとして、中国政府が内容の審査強化に乗り出したというニュースがありました。最近の抗日ドラマの中には、カンフーで日本兵を殺したり、登場人物が宙を舞ったりするなど現実離れした演出があり、中国国内にとどまらず、日本政府も問題視していたと言うことで、北京の日本大使館はこうした動きについて「抗日ドラマが大量に放送されることは中国における日本のイメージにとって好ましくない。中国国内でもさまざまな声があると承知しており、関心を持って情報収集している」としているようです。 

 中国共産党の機関紙「人民日報」によりますと、抗日ドラマの放送を管理する国家新聞出版ラジオ映画テレビ総局の幹部は「最近放送されている創作態度は厳粛なものではなく、歴史を尊重しないものが乱造され、社会に良くない影響を与えている。改めなければならない」と述べたようで、過度に娯楽化した内容は改めたり、放送を取りやめたりすることなどを求め、既に複数の抗日ドラマの放送が中止されたと言います。このような質の悪い抗日ドラマが量産される背景には、当局の審査が比較的通りやすいことなどがあるとみられているようです。「反日有理」と言うことでしょうか。

 私は以前よく中国に行っていた時に、夜ホテルの部屋でテレビを点けていました。中国語は理解できないのですが、映像を追っているだけでだいたい筋が解る番組もあり、中にはかなり上質な番組もありました。「抗日ドラマ」も時折観ていました。しかしこの「抗日ドラマ」はC級と言えるような非常に質の低いものが多く、多くはただひたすらに日本軍の暴虐を描き、日本の兵士、とりわけ将校はこれでもかというくらいに醜く残酷に描かれていました。対する中国の共産党のゲリラ(八路軍)の兵士たちはみな高潔に描かれ、俳優もきりっとしたイケメンを多く出していました。私が観たものにはカンフーなどを扱うようなものはありませんでしたが、それでもかなり荒唐無稽に近いものもありました。 

 このような反日一辺倒の映画を見て育った子ども達が、日本や日本人に対してどのような印象を持つかは自明のことです。ある年、私が入っている貧困地区の子どもたちを援助する会のメンバー4人が、寧夏回族自治区の区都の銀川から北京まで夜行列車で移動したときに、小学生くらいの女児とその従弟と親しくなったのですが、その時その少年に日本人を知っているかと尋ねましたら、テレビで知っている、中国人に悪いことをすると答えました。それでは私たちはどうかと聞きましたら、テレビの日本人とはぜんぜん違うと言いました。その子たちとは北京に着く前まで仲良く話したり写真を撮ったりしましたが、もしこの子たちが私たちと親しくならなかったら、日本人に対して悪い印象を持ったまま大きくなるのだろうと思いました。 

 日本軍が中国で戦ったのはもう70年も80年も昔のことですが、中国人にとっては忘れがたいものがあることは分かります。それにしても質の悪い娯楽作品として多くの青少年に良くない影響を与えることをいつまで続けているのかと思います。観ている子ども達の多くは、今の日本人もそのような残酷な者だと思うでしょう。遅まきながら規制の方向を出したのは良いことで、青少年にはもっと未来志向の心を養うような教育をするべきです。