Aさんの新作日本画4点を続けてご紹介いたします。
「縄張り」 日本画 P10
強い日差しに照らされ輝く芙蓉。せめぎ合い重なってしなやかな
花びらが変形しています。花弁の脈一本一本の表情を細やかに
ひろいその美しい影色が花の白さと柔らかさをよく表しています。
近づいてみました。
薄く濡れたように艶やかな花弁の質感をじっくり観察し微妙な
凹凸をとらえ精緻に表現されました。単純化して表した葉が
夏の活気を表し花の白が入道雲を思わせる迫力ある作品です。
2点目です。
「鉄線」 日本画 F4
明治時代の家屋の雨戸を分けていただいたという杉板。色数を
絞って簡潔に描かれた植物は板目の魅力を引き立たせ蘇らせ
ました。杉が遥か辿ってきた道にも思いを馳せることができます。
近づいてみました。
水分を吸い込む古く乾いた板に絵の具がしっかりのるよう丹念に
ヤスリがけした後ドーサをかけました。胡粉をぼかしながら
描いた花は透明感があり敢えて平面的に表現した葉と好対照です。
3点目です。
「なごり雪」 日本画 P10
音もなく降り続ける雪は湿っていて重く春を待つ丈を大きく
しならせています。微妙な色を使い分けて濃淡を出し山の深さ
と遠近感を表現されました。穏やかな静寂が清々しい作品です。
近づいてみました。
雪の白色は岩絵の具と胡粉を、暗部も細やかに粒子を使い分け
点描を重ねました。手前に描かれた万感があたたかみを添えて
凍えるような感風のなかに春を感じる心が描かれています。
4点目です。
「野火」 日本画 F10
なめらかな線と鮮やかな色彩で描かれた炎は勢いよく燃えさかり
じっと見つめていると炎の向こう側に何かが透けて見えるよう。
生命力に満ちた躍動感あふれる表情に想像力をかきたてられます。
近づいてみました。
伸びやか且つきめ細やかにひかれた線にそって入れられた色は
美しく変化に富み見応えがあり楽しんでおられるのがわかります。
試練を乗り越えたAさんの情熱と決意が感じられるような作品です。
常に新しいことに挑戦されているAさん。次の作品もたのしみです。
過去の作品はHP「上郷の森 日本画教室」内の“作品集”の中の
Aさんのページに制作順に掲載されています。
ぜひこちらもご覧下さい。