昨日観た映画「海洋天堂」のレビューです。
私がこの映画の存在を知ったのは、行きつけの美容院から独立した美容師さんの新しいサロンに初めて行ったとき、タウン誌の情報からでした。
覚えやすいタイトルとジェット・リーという主役。
帰るなりネットで調べてすぐに観られる映画館を探したら、シネスイッチ銀座が一番近かったんです。
実は当事者ということもあり、今までは自閉症の人を扱った映画やドラマなどはなんとなく敬遠してしまう気持ちがありました。
でも、今回は父と子の在りようを描いているらしいということで(一歩引いて見られる)観る気になったのでした。
映画本編のあらすじなどは他のサイトやレビューでも読めると思いますので、ここでは純粋に私の感想だけを書きます。(多少のネタバレは勘弁してください)
まず最初のシーンでガーンと頭を殴られました。
親子心中を図る心誠。
でも、失敗に終わる。
病気や障害を持つ子の親なら、これは皆、口にこそ出さないけれど、一度や二度は考えたことがあるんじゃないだろうか。
それをこの監督は初っ端にぶつけてきました。
つまり、そんなことじゃ事態は解決なんかしやしないんだということを示唆しているんでしょうね。
父親は切羽詰まっているのだけれど、息子・大福(ターフー)の自閉症独特の癖やこだわり行動がユーモラスでなぜかホッとさせられる。
ただ、そういう無邪気な息子だから余計不憫さが募る父。
わかるなー。わかる。
私が最初に泣けたのは、心誠が息子の服に名前や連絡先や「自閉症です」などと書いた札を慣れない手つきで縫い付けるシーン。
これはとっても深い。一番父親の愛がにじみ出てるシーンだと感じました。
この場面以降、私の涙は壊れた蛇口のようにポタポタと流れっぱなしでした。
もうひとつ感動したシーンは、水族館の館長さんが、その名札の保護者の欄に自分の名前も入れておいてほしいと言ってくれたところです。
親にとってこれほど有難い心の支援はありません。
親が先に死んでしまうという抗えない事実に対し、いったいどれだけの準備をし、気持ちの折り合いをつければよいのだろう。
これはもう普遍的な課題です。
誰しもが必ず思い悩む大きな問題です。
自閉症という障害を理解して下さいというよりも、どれだけ切ない気持ちで親たちは今この時を生きているのかということに心を寄せていただけたら嬉しい。
私にとって、この世で一番大切な存在は息子です。
よりよく生きようという原動力です。
ノーギャラでもぜひ演じたいと仰ったジェット・リー氏によって、私たちの思いが芸術として多くの人の心に届けられることに感謝です。