いちよう:二千和会だより

 会報「いちよう」を通して、人生がさらに豊かに広がるよう「今も青春!」の心がけで楽しく交流しながら散策しましょう。

歯の治療

2008年04月24日 | SO-Color

 まだ乳歯が生えていた頃の話から始まる。戦時中のことなので周囲は甘いものが不足していたし、糖類が大変貴重品で一般家庭はなかなか手に入らなかった頃のこと。

 幸いというか、悪かったというか!
 その貴重品が、国の省庁・医療機関に勤務していた父親は高給取りだったようで、糖類も容易く手に入る環境にあった。故に甘い嗜好品も身の周りにあって豊かな食生活のなかで育った。ところがそれがあだになって、私の歯は虫歯だらけという訳だ。
 同じきょうだいでも終戦直後に生まれた子は食糧事情も悪く、糖類は手に入りにくい環境のため、虫歯にはなりにくかったようで、歯は私よりず~っと良い。甘いもの好きになってしまった私は、歯磨きをしても歯が悪くて弱くて苦労している。当時歯も磨かない子でも丈夫な歯をしている子が多かったから、糖類が如何に歯に悪いか物語っていると言えないだろうか?

 ず~っと私は歯医者とは縁が切れないのだ。ここから遠い愛知の大学病院が如何に良くても、ちょっとの不都合がヘルプに時間がかかり大変なので、近隣の東京歯科大の病院へ移って治療ということにした。
 そうすれば時間的にも助かる…早く治療が終わるだろうと期待していたが、そんな悪い状態の私の歯で、食事のたびに厄介になっているわけで、こちらは治ってもその間無理に働かせた歯が悪くなる…ということで治療が長引いている。
 治療中の歯の周りの歯肉にポツッという赤みがなかなか消えない。こちらは痛くは無いのだが、先生はこれを治さないと次の治療に入れない。歯根にひびが入っているようだと診断なさった。 
 ひびをレントゲンで確認して1週間後、問題の歯根を抜き「歯牙保存液」に浸してから悪いところを、私の体から離れた短い時間に治療してまた元の位置に植え替えるのだ。
 「歯を植え替えるのです!」聞いたこともなかった治療法…。以前人工の歯根を埋めて治療するという方法が、取れるようになったというニュースは新聞で読んではいたが、自分の歯そのものを植え替える…凄い時代になったのだと思った。

 「新しい治療方法ですね!」施術前の説明の時に、中川教授に問いかけたら、「これはもう何年も前からやっている方法ですよ」とおっしゃる。(そうかなぁ?まあ最近歯医者には行ってないけれど…? まだあまり一般的には知られていない方法みたいだな~。でも自分の歯がまだ活かされるのだということは嬉しいことだわ)と内心思っていた。
《検索と教授のお話を交えて解った情報は、その保存液の研究期間が8年、実際手術をするようになって6年の歳月を踏んでいる。》

     
 上の写真は以前治療していただいた愛知での大学歯学部の付属病院エレベーター入り口の案内プレートと5F待合室。

 下は今お願いしている東京歯科大学千葉病院、4F待合室窓から入り口付近駐車場を見下ろす。初診の時は、雪がちらついていた寒い日だった。
 愛知でご厄介になった中村教授の紹介状を持って、不安な気持ちも少し抱えて待合室に居た…。そこへ東京歯科大の中川教授は「昨日雪の中、東京で理事会がありましてね、中村教授にお会いしましたよ、SOさんあなたのことを聞いていますよ。」と親しげに話しかけてくださったので、気持ちがほぐれた。
 歯の治療はとっても苦痛に感じているので、やわらかに安堵する気持ちに変わっていった…。
    
 手術室ではインターンの歯医者さんの卵?助手?も、顕微鏡をのぞきながら勉強の一つとして参加されていた。この手術という細かい仕事に…私は怖くてず~っと目をつぶっていた。
 術後の痛み止めを麻酔が切れる前にのむようにとのご指示があった。
「私のおんぼろ歯の、根っこが活かされて大変嬉しいです。有難うございました。」と感想とお礼を申し上げたら、
「この歯牙保存液は中川先生の研究によるものです。」と女性の助手が教えてくださった。 
 その晩は3時ごろ歯が痛くなって、2回目の痛み止めをのんで休んだ。今日も少し痛いが、確実に軽くなっている。月曜日は抜糸ということになっている。歯医者は医学界のなかでもあまりめざましい発達はないね…なんて、歯科助手の奥さんを持つ旦那さんが言っておられたけれど、なかなか素晴らしい!
 患部を持ち、困っている者にとっては、途轍もない朗報で大いなる味方だと感じた。