♪ 静かな静かな 里の秋
お背戸で 木の実が落ちる夜は ♬
ああ母さんと ただ二人
♫ 栗の実 煮てます 囲炉裏端 ♪ 斎藤信夫作詞・海沼実作曲
里の秋を静かに軽やかに散歩した。ふるさとの懐かしさを何故か感ずる風景。私たち日本人の原風景である如くに。 とっても広やかな和やかさと豊かな心の奥底にあるような温かみ…。
さわさわと揺れる芒が原。 「むかしお母さんに注意されたよね!」
芒が呆けてくると種をつけて飛んで空を舞う。大群になって綿のように軽く風に乗り、行き先判らず飛んでいるから、子どもの耳のなかに入ったりすると大変なのだ。だから「芒には、あまり近寄らないこと! 耳が聞こえなくなると困るからね」 などとか…その他のご注意いろいろ…。
芒の穂が風に揺れて、夕日に光っているところなんか、それは綺麗だ。惹きこまれるような恋しささえ感じてしまうのは、私だけではあるまい。
夕暮れに見るとそれは幽霊かと、びっくりさせる効果もあるようだ。芒の方にも、人恋しさの要素が多分にあるのかも知れない。
柿もたわわに生っている。見上げながら「これは渋柿よ。干し柿にするといいわ。」としゃべりながら、秋の風景を満喫する。そして、やっぱり食欲の秋だと、主婦感覚で木の実を採りに行くことにみんなの気持ちが一致する。
「大学前の道路に銀杏(ぎんなん)がたくさん落ちていたわ!」と。 単なる散歩ではなくて、「銀杏を拾いましょう!」となった。臭いのに…! 実を処置するためには手が荒れてしまうのに、家族を喜ばせたい一心で拾い出す。
割り箸で拾うのがとても都合が好いのを知った。銀杏並木の中の一本、そのお目当ての銀杏の樹がまだそれほど太くはないのに、実が鈴生りだ。そして実自体が食べるには格好の大き目の実だ。樹の下の方はもう銀杏はいくつもない。風が吹けば自然に上のほうの実も落ちてくるのだが…。誰かに拾われてしまった証拠に、根元にはあの臭い果肉が山になっていた。
いいねぇ、秋は…。歩いていれば“棒”に当たるのだからね。
でも農作物に手を出してはいけませんよ。心無い方が畑に入る事だってあるらしく被害もあると聞いた。親が道徳的な精神の見本を示さなくてはならないのに。新しい団地周辺に移り住んできた人たちは、そんな面が、何故か欠如してしまうらしい。嘆かわしい現実!!