いつの間にか実がついている。
幼いころ、花を鼻の上にくっ付けて天狗になった気分を味わったテングサ(天狗草)
とも呼んでいたヘクソカズラは誰に見られなくても静かに丸い実をつけている。
身の程をヘクソカズラは知るのかや
小さくも丸く結んで逞しい
秋も深くなってきた。日が暮れるのが早い。雨も冷たく感じられる。月が冴え冴えと空にある。やはり人間も時を経れば充実感を身に纏い、ある重さを伴っていければいいと思うのだけれど……それにつけても、静かだ。いつの頃か秋が好きになってきていた。この静かさ、この落ち着き…ちょっとおこがましいけれど、まとめて面倒を見てあげたくなる!
ヘクソカズラも蔓にいっぱい実をつけて、やっぱりまとめて面倒をみてくれそうな蔓の強さ!
金木犀の香りにつられ小路ゆく
煉瓦坂 金木犀を散り敷いて
暮れなずむ秋明菊は確かな位置
包みこむ手のひら 頬も花びらも
そこはかとなく訪れる月の光り、やんちゃで活発だったあの子も、眠くなってきたのか静かに動きが止まった。あたりはほんわか温かい。秋が深くなってきたね。