医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

統計について(基本的用語その4)

2005年05月15日 | 本ブログの理解を深める基礎知識
一般的な自然科学であれば、ある実験に基づいて知り得た事は、同じ状況を用意さえすれば同様に再現する事ができます。たとえば、ある一定のカーブで設計された羽根で飛行機が飛んだ場合、そのカーブで羽根を作るかぎりその飛行機は飛んでくれます(もちろん飛行機の重量など他の条件も同じと仮定します)。ところが医学では、ある人にあてはまった事が必ずしも別の人にあてはまるとはかぎりません。ここに医療の難しさがあります。

このような不確定性を科学的に克服しようとするのが統計という考え方です。ここに2つのサイコロがあったとします。サイコロA、サイコロBのそれぞれを60回ふってみて、Aでは「1」の目が9回、Bでは「1」の目が10回出たとします。この事実だけからBの方が「1」の目が出やすいと言えるでしょうか。普通の感覚ならば「そんな事は偶然かもしれないから、1回の比較ではなんとも言えないのではないか」と思われるでしょう。その感覚は正しいのです。世の中には1回の比較だけで結果を言い切っている例が沢山存在しますが、それは正しい判断とは言えません。「J社の売り上げは前年度が100億円だったのに、今年度は95億円になったので、この会社の将来性に陰りが見えてきた」などという場合もそうです。

それではどうすれば正しく比較できるのか。そのためには何度も試してみることです。つまりサイコロを60回ふるという比較を何度も行うのです。統計学では少なくとも20回が要求されます。そして20回比較して19回サイコロBで「1」の目が出る回数が多かった場合に「サイコロBは1が出やすい」と言えます。逆に言えば、20回のうち1回、サイコロAの方が「1」の目が多く出ても、それは偶然とみなす事ができるのです。結論と反対の事が起きるのが20回のうち1回(確率は0.05)の場合の事を、統計学ではP<0.05と表現し、その結論が統計学的にそう(真理であるかどうかは別問題ですが)であると認められた事を表します。 20回のうち19回なんて、よほどサイコロAとサイコロBの形が違わないとそんな差はでないと思われたのではないでしょうか。科学の世界ではそれぐらい厳しく違いを定義しているのです。P<0.01という場合は100回のうち99回という事で、もっと明らかな差であるといえます。P<0.05とかP<0.01という表現は今度も使用しますので、このように差があるといえる事を「有意差」と呼ぶ事と同時に覚えておくと便利です。
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