前回はACE阻害剤とARBの腎臓保護作用は糖尿病患者さんの腎障害に対しては効果がないという話でした。今回はベータ・ブロッカーの話です。現在、各国の慢性心不全治療ガイドラインでは「ACE阻害剤を使用後、β遮断薬を追加する」事が推奨されています。しかし、β遮断薬よりもACE阻害剤を先行させたほうが有用であるというエビデンスはありません。
Circulation. 2005;112:2426.から「CIBIS III」と呼ばれる最新の報告です。
Effect on survival and hospitalization of initiating treatment for chronic heart failure with bisoprolol followed by enalapril, as compared with the opposite sequence.
(インパクトファクター★★★★☆、研究対象人数★★★★★)
対象は65歳以上(平均年齢72歳)で増悪のない慢性心不全(心臓のポンプとしての働きが正常の約半分)患者1,100人です。レニベースというACE阻害剤20mgを先行投与して26週間後にメインテートというβ遮断薬10mgを追加する群505人と、β遮断薬10mgをを先行投与して26週間後にレニベースというACE阻害剤20mgを追加する群505人に無作為に分けられ、死亡と心不全による入院について18カ月調査されました。
結果は、18カ月後の全ての死因による死亡はACE阻害剤先行群で73人、β遮断薬先行群で65人と差は認められませんでした。心不全の悪化による入院もACE阻害剤先行群で51人、β遮断薬先行群で63人と差は認められませんでした。したがって慢性心不全治療ガイドラインで示されている「ACE阻害剤を使用後、β遮断薬を追加する」は逆であってもいいと結論づけています。
ただし1つ問題点は、慢性心不全に対してβ遮断薬を26週間単独で投与する事は実際はなく、現実に則していない点です。一方、サブ解析では心不全の指標である左室駆出率が28%未満ではメインテート先行が有用で、28%以上ではレニベース先行が有用という興味深いデータも含まれています。
いずれにしても、レニベース(ACE阻害剤)(5mg)97円、メインテート(β遮断薬)(5mg)176円ですから、レニベース20mg+メインテート10mg/日の内服というのは総額一日740円と費用がかさみます。ちなみに日本での常用量はレニベース5~10mg、メインテート5mgです。
さて、ここまでのエビデンスで、みなさんなら降圧剤の選択をどうしますか?
医療費が全額自己負担(こうしないと費用の事が無視されがちだから)で単剤内服とすると、私は最初、ノルバスク(カルシウム拮抗薬)(5mg)93円、高血圧に伴って腎機能が低下してきたらレニベース(ACE阻害剤)(5mg)97円に換えます。腎機能が低下しないなら、そのままノルバスクで、心機能が悪化してきたらメインテート(5mg)176円に換えます。ACE阻害剤は副作用で咳が出ることがあるので、咳が出たらしかたがなくARBに換えます。200円前後するARBはその価格に見合うだけのエビデンスがまだありません。
最近多くの方にお立ち寄り頂いております。誠にありがとうございます。しかし、ここの↓ポチッをお忘れでないでしょうか。宜しくお願い致します。
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Circulation. 2005;112:2426.から「CIBIS III」と呼ばれる最新の報告です。
Effect on survival and hospitalization of initiating treatment for chronic heart failure with bisoprolol followed by enalapril, as compared with the opposite sequence.
(インパクトファクター★★★★☆、研究対象人数★★★★★)
対象は65歳以上(平均年齢72歳)で増悪のない慢性心不全(心臓のポンプとしての働きが正常の約半分)患者1,100人です。レニベースというACE阻害剤20mgを先行投与して26週間後にメインテートというβ遮断薬10mgを追加する群505人と、β遮断薬10mgをを先行投与して26週間後にレニベースというACE阻害剤20mgを追加する群505人に無作為に分けられ、死亡と心不全による入院について18カ月調査されました。
結果は、18カ月後の全ての死因による死亡はACE阻害剤先行群で73人、β遮断薬先行群で65人と差は認められませんでした。心不全の悪化による入院もACE阻害剤先行群で51人、β遮断薬先行群で63人と差は認められませんでした。したがって慢性心不全治療ガイドラインで示されている「ACE阻害剤を使用後、β遮断薬を追加する」は逆であってもいいと結論づけています。
ただし1つ問題点は、慢性心不全に対してβ遮断薬を26週間単独で投与する事は実際はなく、現実に則していない点です。一方、サブ解析では心不全の指標である左室駆出率が28%未満ではメインテート先行が有用で、28%以上ではレニベース先行が有用という興味深いデータも含まれています。
いずれにしても、レニベース(ACE阻害剤)(5mg)97円、メインテート(β遮断薬)(5mg)176円ですから、レニベース20mg+メインテート10mg/日の内服というのは総額一日740円と費用がかさみます。ちなみに日本での常用量はレニベース5~10mg、メインテート5mgです。
さて、ここまでのエビデンスで、みなさんなら降圧剤の選択をどうしますか?
医療費が全額自己負担(こうしないと費用の事が無視されがちだから)で単剤内服とすると、私は最初、ノルバスク(カルシウム拮抗薬)(5mg)93円、高血圧に伴って腎機能が低下してきたらレニベース(ACE阻害剤)(5mg)97円に換えます。腎機能が低下しないなら、そのままノルバスクで、心機能が悪化してきたらメインテート(5mg)176円に換えます。ACE阻害剤は副作用で咳が出ることがあるので、咳が出たらしかたがなくARBに換えます。200円前後するARBはその価格に見合うだけのエビデンスがまだありません。
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