医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

心房細動に対する新しい抗凝固療薬エリキュースの臨床試験のワーファリン群の脳出血が多すぎる件(その3)

2016年04月03日 | 循環器
前回心房細動に対する新しい抗凝固療薬エリキュースの臨床試験のワーファリン群の脳出血が多すぎる件(その2)

の記事で、エリキュースのこの臨床試験を計画した医者や製薬会社の人間は、トルコ、韓国、プエルトリコ、ウクライナ、フィリピン、ロシア、ルーマニア、中国、メキシコ、ブラジルなどでは上手にワーファリンでコントロールできないことを知っていて、自社の薬の成績を良く見せるために意図的に医療後進国臨床試験に組み込んだということをお伝えしました。

今回はその続きで、ワーファリンという薬でのコントロールの上手さ別の治療効果をお伝えしたいと思います。前回と同じ医学論文からの情報です。

Efficacy and Safety of Apixaban Compared With Warfarin at Different Levels of Predicted International Normalized Ratio Control for Stroke Prevention in Atrial Fibrillation
Circulation 2013;127:2166.
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)

上の図の、(C)がTTRが60.6%~66.3%というあまり上手に治療できていない場合の、efficacyつまりこの場合の脳梗塞の発症率です。ご覧いただくとわかるように、エリキュースという新しくて1日約500円する薬と、以前からある1日約30円のワーファリンと、治療効果は差がありません。

上の図の、(D)がTTRが60.6%~66.3%というあまり上手に治療できていない場合の、safetyつまりこの場合の脳出血と輸血を必要とする出血の発症率です。ご覧いただくとわかるように、エリキュースという新しくて1日約500円する薬と、以前からある1日約30円のワーファリンと、治療効果はエリキュースの方が良いです。

上の図の、(E)がTTRが66.4%~71.1%という少し上手に治療できている場合の、efficacyつまりこの場合の脳梗塞の発症率です。ご覧いただくとわかるように、エリキュースとワーファリンで治療効果には差がありません。

上の図の、(F)がTTRが66.4%~71.1%という少し上手に治療できている場合の、safety脳出血と輸血を必要とする出血の発症率です。ご覧いただくとわかるように、エリキュースとワーファリンで治療効果には差がありません。

つまり、製薬会社はプラザキサ、イグザレルト、エリキュース、リクシアナという高価な新薬を使用すれば脳出血の発症をワーファリンより減らすことができると主張していますが、それは医療後進国のようにワーファリンで上手にできていない場合と比較した場合のことであって、TTRが66.4%~71.1%という少し上手に治療できている以上の場合、両者に差がないのです。差がないのなら患者にとっては1日500円支払うより1日30円の方がいいに決まっていますよね。

私が患者を治療する際のTTRは約85%です。

ここでは、ワーファリンでのコントロールの上手さの層別化をしないで、プラザキサ、イグザレルト、エリキュース、リクシアナの方がいいと言ってしまっています。


情報の続きはまだまだありますので、次回お伝えします。

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