以前、心房細動に対する新しい抗凝固療薬エリキュースの臨床試験のワーファリン群の脳出血が多すぎる件(その2)
の記事で、エリキュースのこの臨床試験を計画した医者や製薬会社の人間は、トルコ、韓国、プエルトリコ、ウクライナ、フィリピン、ロシア、ルーマニア、中国、メキシコ、ブラジルなどでは上手にワーファリンでコントロールできないことを知っていて、自社の薬の成績を良く見せるために意図的に医療後進国臨床試験に組み込んだということをお伝えしました。
そして前回、医療後進国の、トルコ、韓国、プエルトリコ、ウクライナ、フィリピン、ロシア、ルーマニア、中国、メキシコ、ブラジルなどが参加していない日本国内だけの研究結果を紹介しました。
Target International Normalized Ratio Values for Preventing Thromboembolic and Hemorrhagic Events in Japanese Patients With Non-Valvular Atrial Fibrillation
–Results of the J-RHYTHM Registry–
Circ J 2013;77:2264-2270.
(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★★★★)
無料でダウンロードできますので、原文も見てください。
↓
https://www.jstage.jst.go.jp/article/circj/77/9/77_CJ-13-0290/_article
これは2年間の結果ですから、私が計算して年間の発生率を記載しました。ワーファリンを内服していないと年間0.15%、ワーファリンを内服して血液のさらさら度を示すPT-INRが低いと年間0.24%、PT-INRがちょうど良く1.6~1.99にコントロールされると年間0.32%です。
エリキュースの臨床試験のワーファリン群での0.47%は発症率が日本の研究の結果より1.5倍高いことがわかります。
ところが、日本国内だけの研究J-RHYTHM研究の結果を見ると、
これは2年間の結果ですから、私が計算して年間の発生率を記載しました。ワーファリンを内服していないと年間1.45%ですが、ワーファリンを少しでも内服して血液のさらさら度を示すPT-INRが1.6に達していなくても発症は年間0.87%に有意に抑制させることができているのがわかります(これは私が自分でカイ2乗検定をして確かめています)。そして、PT-INRがちょうど良く1.6~1.99にコントロールされると脳梗塞の発症率は年間0.57%です。これはエリキュースの臨床試験のエリキュース群2.16%、ワーファリン群2.66%より断然良好な数字です。
これらの結果から、本当はPT-INRが1.6~1.99が一番良い(つまり脳梗塞も抑制できているが2.0以上にすると脳出血が少し増えてくるから)し、1.6に達していなくても1.4や1.5でもワーファリンの効果は十分あるということがわかります。ガイドラインでは「1.6~1.99が一番良い」とすると、PT-INRの範囲が狭いためコントロールしにくいと苦情が出ることを予想して、少し広めの範囲で1.6~2.6と決定されたと推測できます。
私はこの研究の結果を知っているので、70歳以上の患者の場合1.5~2.0でコントロールしています。例えば1.5であってもワーファリンは増やしません。それでも私のTTRは約90%です。
今回はその研究のサブ解析で、サラサラ度を示すPT-INRをもう少し細かく分類して、どの領域が一番いいかを調べた研究です。
Warfarin anticoagulation intensity in Japanese nonvalvular atrial fibrillation patients: A J-RHYTHM Registry analysis.
Yamashita T, Inoue H, Okumura K, et al.
J Cardiol 2015;65:175.
(インパクトファクター★☆☆☆☆、研究対象人数★★★★★)
ご覧になってわかるように、脳梗塞・全身性塞栓症の予防ではPT-INR 1.8~2.0と比較してPT-INR=1.4までは効果がありませんが、1.4より上では効果が認められています。しかも前回お伝えしたように、日本人の医者が上手にコントロールしていますので、プラザキサ、イグザレルト、エリキュース、リクシアナよりも発症率は低いのです。
脳出血の予防ではPT-INR 1.5~2.0と比較してPT-INR=2.5までは発症が増えます。
この2つの結果から、日本人の医者がコントロールすれば、1.4~2.5の間が一番予防に効果的で、その発症率はプラザキサ、イグザレルト、エリキュース、リクシアナよりも低いのです。
これが私の患者でPT-INRが1.5と、1.6以下になってもワーファリンを増やさずに1回様子を見る理由です。
どうですか?医療後進国の、トルコ、韓国、プエルトリコ、ウクライナ、フィリピン、ロシア、ルーマニア、中国、メキシコ、ブラジルなど参加させずに、日本人の医者がコントロールすればワーファリン群は脳梗塞も脳出血もエリキュース群より少ないのです。
この論文の著者は、これらの製薬会社の断トツの広告塔だったのに自分でこのサブ解析をやって、どうも自分が言っていることの間違いに途中から気がついたようで、広告塔としてのトーンを急に弱めましたよね。そう感じた医者の皆さんも多かったと思います。
プラザキサ、イグザレルト、エリキュース、リクシアナを販売している、日本ベーリンガーインゲルハイム、バイエル、ファイザー、第一三共が、これらの新薬はワーファリンより脳出血が少ないと宣伝しているのにはトリックがいっぱいなのです。そしてそれに乗せられた広告塔医師たちが誤った情報を流布しているのです。
国民に不利益になる(効果がそれほどでもない薬を高い値段で買わされるという(真実性))コメントが間違って公言されることがあれば、それは(公共性)(公益性)という観点からも大問題です。
まだまだエビデンスはたくさんありますので、順次お伝えします。
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の記事で、エリキュースのこの臨床試験を計画した医者や製薬会社の人間は、トルコ、韓国、プエルトリコ、ウクライナ、フィリピン、ロシア、ルーマニア、中国、メキシコ、ブラジルなどでは上手にワーファリンでコントロールできないことを知っていて、自社の薬の成績を良く見せるために意図的に医療後進国臨床試験に組み込んだということをお伝えしました。
そして前回、医療後進国の、トルコ、韓国、プエルトリコ、ウクライナ、フィリピン、ロシア、ルーマニア、中国、メキシコ、ブラジルなどが参加していない日本国内だけの研究結果を紹介しました。
Target International Normalized Ratio Values for Preventing Thromboembolic and Hemorrhagic Events in Japanese Patients With Non-Valvular Atrial Fibrillation
–Results of the J-RHYTHM Registry–
Circ J 2013;77:2264-2270.
(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★★★★)
無料でダウンロードできますので、原文も見てください。
↓
https://www.jstage.jst.go.jp/article/circj/77/9/77_CJ-13-0290/_article
これは2年間の結果ですから、私が計算して年間の発生率を記載しました。ワーファリンを内服していないと年間0.15%、ワーファリンを内服して血液のさらさら度を示すPT-INRが低いと年間0.24%、PT-INRがちょうど良く1.6~1.99にコントロールされると年間0.32%です。
エリキュースの臨床試験のワーファリン群での0.47%は発症率が日本の研究の結果より1.5倍高いことがわかります。
ところが、日本国内だけの研究J-RHYTHM研究の結果を見ると、
これは2年間の結果ですから、私が計算して年間の発生率を記載しました。ワーファリンを内服していないと年間1.45%ですが、ワーファリンを少しでも内服して血液のさらさら度を示すPT-INRが1.6に達していなくても発症は年間0.87%に有意に抑制させることができているのがわかります(これは私が自分でカイ2乗検定をして確かめています)。そして、PT-INRがちょうど良く1.6~1.99にコントロールされると脳梗塞の発症率は年間0.57%です。これはエリキュースの臨床試験のエリキュース群2.16%、ワーファリン群2.66%より断然良好な数字です。
これらの結果から、本当はPT-INRが1.6~1.99が一番良い(つまり脳梗塞も抑制できているが2.0以上にすると脳出血が少し増えてくるから)し、1.6に達していなくても1.4や1.5でもワーファリンの効果は十分あるということがわかります。ガイドラインでは「1.6~1.99が一番良い」とすると、PT-INRの範囲が狭いためコントロールしにくいと苦情が出ることを予想して、少し広めの範囲で1.6~2.6と決定されたと推測できます。
私はこの研究の結果を知っているので、70歳以上の患者の場合1.5~2.0でコントロールしています。例えば1.5であってもワーファリンは増やしません。それでも私のTTRは約90%です。
今回はその研究のサブ解析で、サラサラ度を示すPT-INRをもう少し細かく分類して、どの領域が一番いいかを調べた研究です。
Warfarin anticoagulation intensity in Japanese nonvalvular atrial fibrillation patients: A J-RHYTHM Registry analysis.
Yamashita T, Inoue H, Okumura K, et al.
J Cardiol 2015;65:175.
(インパクトファクター★☆☆☆☆、研究対象人数★★★★★)
ご覧になってわかるように、脳梗塞・全身性塞栓症の予防ではPT-INR 1.8~2.0と比較してPT-INR=1.4までは効果がありませんが、1.4より上では効果が認められています。しかも前回お伝えしたように、日本人の医者が上手にコントロールしていますので、プラザキサ、イグザレルト、エリキュース、リクシアナよりも発症率は低いのです。
脳出血の予防ではPT-INR 1.5~2.0と比較してPT-INR=2.5までは発症が増えます。
この2つの結果から、日本人の医者がコントロールすれば、1.4~2.5の間が一番予防に効果的で、その発症率はプラザキサ、イグザレルト、エリキュース、リクシアナよりも低いのです。
これが私の患者でPT-INRが1.5と、1.6以下になってもワーファリンを増やさずに1回様子を見る理由です。
どうですか?医療後進国の、トルコ、韓国、プエルトリコ、ウクライナ、フィリピン、ロシア、ルーマニア、中国、メキシコ、ブラジルなど参加させずに、日本人の医者がコントロールすればワーファリン群は脳梗塞も脳出血もエリキュース群より少ないのです。
この論文の著者は、これらの製薬会社の断トツの広告塔だったのに自分でこのサブ解析をやって、どうも自分が言っていることの間違いに途中から気がついたようで、広告塔としてのトーンを急に弱めましたよね。そう感じた医者の皆さんも多かったと思います。
プラザキサ、イグザレルト、エリキュース、リクシアナを販売している、日本ベーリンガーインゲルハイム、バイエル、ファイザー、第一三共が、これらの新薬はワーファリンより脳出血が少ないと宣伝しているのにはトリックがいっぱいなのです。そしてそれに乗せられた広告塔医師たちが誤った情報を流布しているのです。
国民に不利益になる(効果がそれほどでもない薬を高い値段で買わされるという(真実性))コメントが間違って公言されることがあれば、それは(公共性)(公益性)という観点からも大問題です。
まだまだエビデンスはたくさんありますので、順次お伝えします。
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