医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

心房細動を防いでも死亡、心不全、脳梗塞、出血の頻度は改善しない

2010年11月28日 | 循環器
政治的に微妙な時期ですが、学会で講演するために上海に来ています。交差点に信号があるのに皆がそれを守らないため、警官が交通整理をしているという、まぬけな国です。やはり誰もルールを守りません。こういう写真を撮っていると、いちゃもんを付けられてフジタの社員のように拘束されないか心配です。そして、帰りの飛行機に北朝鮮のミサイルが当たらないよう祈るばかりです。


以前、70歳以上の心房細動の方ではワーファリンという血液をさらさらにする薬剤を内服していないと脳梗塞の発症率は4.8%/年、ワーファリンを内服すると0.9%/年に改善されるということをお伝えしました。


今回はセカンドオピニオンのリクエストがありましたので、心房細動を防ぐことに意義があるのか、またその方法は?という日本人を対象とした研究です。

Optimal treatment strategy for patients with paroxysmal atrial fibrillation: J-RHYTHM Study.
Circ J. 2009;73:242
(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★★☆☆)

一時的な心房細動の兆候がある方で、抗不整脈剤でなんとしても慢性心房細動に移行するのを防ぐ治療を受けた419人と、そういう予防はしないで慢性心房細動のままワーファリンを適切に内服する治療を受けた404人について、死亡・心不全・脳梗塞・出血・精神的苦痛・動悸などの肉体的苦痛の発症率につき1,200日間観察され比較されました。

結果は、両群で死亡・心不全・脳梗塞・出血の発症率には差は認められませんでしたが、精神的苦痛・動悸などの肉体的苦痛の発症率は慢性心房細動の群で多くなりました。

ところでこの研究では、なんとしても慢性心房細動に移行するのを防ぐ抗不整脈剤に関して不整脈の専門家がそれぞれの裁量で選択してよいことになっていました。不整脈の専門家がどんな薬剤を選択したかというと、

サンリズム 32.5%
シベノール 20.7%
プロノン 11.7%
リスモダン 8.8%
タンボコール 8.1%
ピメノール 1.0%
ベプリコール 6.7%
アンカロン 0.5%

です。アスペノンは心機能が軽度低下している場合に使われることもあるようですが、多くの専門家が選択しているのは、サンリズム、シベノールのようです。

また、抗不整脈剤はどれが一番効果的かという目安はあまりなく、ある人には効かなかった薬剤が別の人には凄く効くということがありますので、いろいろと試して効果のある薬剤を探す(トライ アンド エラー)ということが行われます。

心房細動は日中活動中に多く発症する交感神経緊張型と、夜間安静時に多く発症する迷走神経緊張型に分けることもできます。交感神経緊張型にはβブロッカーやプロノン、迷走神経緊張型にはシベノールやリスモダンが比較的効果があります。


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2 コメント

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ためになります (つぶクリドクター)
2010-11-30 12:02:10
いつも拝見させていただいております。

MRさえも立ち寄らないつぶクリの院長ですが、
なかなか偉い人の講演会では聴けないような、
現場に即戦力となるようなお話ばかりで、
大変勉強になります。

引き続きご教示お願いいたします。
返信する
真実が (さすらいの、、、)
2010-11-30 15:29:36
発作性心房細動の治療ガイドラインがどういうものなのか、患者として苦渋の毎日です。
ご健筆を期待しています。
返信する

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