医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

いつまで休職するべきか、ノロウイルスによる感染性胃腸炎

2014年02月21日 | 感染症
以前、飲酒運転に関して、運転者側が自分で呼気のアルコール濃度を測定できるようになると、これまでの考えをガラリと変えなくてはならないある種のパラダイムシフトが起こることをお伝えしました。

最近、各医療機関で簡便にノロウイルス感染症の検査ができるようになり、私はある種のパラダイムシフトが起きていると感じています(平成24年4月から保険適応になりました。ごく最近のことなのです)。これは、インフルエンザの場合は飛沫感染で5日間ぐらいで他人への感染性がなくなるので起こりえなかった事態です。

ノロウイルスに関してはネットで検索すれば情報はたくさん得られますので、ここでは書きませんが、まず、今回の記事に関連していることだけを、復習してみます。

感染者のノロウイルスは糞便中に多く存在しますので、ノロウイルス感染症の検査は肛門に綿棒のようなものを入れて検体を採取するか直接便から検体を採取することで行われます。費用が保険適応になるのは次に該当する場合です。

1、3歳未満
2、65歳以上
3、抗ガン剤や免疫抑制剤を内服している患者
4、ガン患者
5、臓器移植後の患者


いずれも、ノロウイルス感染症が重症化しやすい患者が想定されています。これは正しい考え方だと思います。これ以外で検査を希望すると(ほとんどが職場の事情です)自費になるのですが、以下のサイトにあるように一番安いELISA法で2,100円です。これに初診料などが加算されて5,000円前後になるのだと思います。(このサイトは少し古いので検査に数日かかると記載されています)
http://www.shokukanken.com/kensa/1&fm=price

しかし、症状の治療も同時に行うとなると、検査が自費の場合は、日本では混合診療は認められていないので、治療費も自費になってしまいます。ノロウイルス感染と判明しても特効薬はなく治療法に変化は生じないですから、結局、検査が保険適応にならない患者は検査しないことが多いです(そうすると厚生労働省が発表している感染者の統計って、意味があるの?という疑問も生じます)。

さて、ノロウイルスによる感染性胃腸炎では症状消失後2~3日で復職するのが一般的ですが、症状消失後のウイルスの排出が数週間続くし、乾燥した便のほんの一部でも空気中に舞い上がると感染源となるウイルスを含みますので、保育士や食品関係の仕事をなさっている方が「どれだけ休職するべきか」は非常に難しい問題です。以下のように「国立感染症研究所」も、「厚生労働省」も明確な言及をあえて避けています。なぜなら、患者の給与をも左右するかもしれないからです。
http://idsc.nih.go.jp/disease/norovirus/index.html
http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html

そこで、新型インフルエンザに関して、給与について示された厚生労働省のサイトがあるので参考にしてみます。

(以下、厚生労働省のサイトから引用)
感染拡大防止の観点からは、感染又は感染の疑いがある場合には、保健所の要請等に従い外出を自粛することその他感染拡大防止に努めることが重要ですが、その際、欠勤中の賃金の取扱いについては、労使で十分に話し合っていただき、労働者が安心して休暇を取得できる体制を整えていただくようお願いします。
なお、賃金の支払の必要性の有無等については、個別事案ごとに諸事情を総合的に勘案すべきものですが、法律上、労働基準法第26条
「使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合は、使用者は休業期間中労働者に、平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない」
に定める休業手当を支払う必要性の有無については、一般的には以下のように考えられます。(※以下は現時点の状況を基にしており、今後の新型インフルエンザの流行状況等に応じて保健所の要請等が変更される可能性がありますのでご留意ください。)

(1)労働者が新型インフルエンザに感染したため休業させる場合

新型インフルエンザに感染しており、医師等による指導により労働者が休業する場合は、一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当しないと考えられますので、休業手当を支払う必要はありません。医師による指導等の範囲を超えて(外出自粛期間経過後など)休業させる場合には、一般的に「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当たり、休業手当を支払う必要があります。

(2)労働者に発熱などの症状があるため休業させる場合

新型インフルエンザかどうか分からない時点で、発熱などの症状があるため労働者が自主的に休む場合は、通常の病欠と同様に取り扱えば足りるものであり、病気休暇制度を活用すること等が考えられます。

一方、例えば熱が37度以上あることなど一定の症状があることのみをもって一律に労働者を休ませる措置をとる場合のように、使用者の自主的な判断で休業させる場合は、一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当たり、休業手当を支払う必要があります。
(以上、厚生労働省のサイトから引用)

先日、私の外来に保育士が受診されました。症状は頻回の下痢と嘔吐で、家族が通う学校にノロウイルス感染症の生徒がいて、ほとんどの家族が一瞬にして同じ症状になったそうですので、自費で検査をするまでもなくノロウイルス感染症は間違いない状況でした。

私は患者から尋ねられました。「いつまで仕事を休まないといけないですか?」

しかし、上の厚生労働省の記載にあるように、私が「ノロウイルス感染症は、症状消失後のウイルスの排出が数週間続くので、保育士のお仕事なら数週間、いや最低でも1週間休んだ方がいいですよ」などと言ってしまうと、「使用者の責に帰すべき事由による休業」ではなく、「医師等による指導により労働者が休業する場合」になってしまい、この保育士の給与が保証されなくなってしまいます。職場の利益のためにする行為が患者の不利益になってしまうのです。

各医療機関で簡便にノロウイルス感染症の検査ができるようになった。

特に保育士や食品関係の業種は、休職中の給与について労使間で十分に話し合って早急にルールを決める必要がある。


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