医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

インフル予防接種は一般の高齢者には有用性が低い、小児の接種は有用

2014年02月19日 | 感染症
以前、以下のような新聞記事がありましたので、それについてお伝えします。

かつて小学校などで行っていたインフルエンザワクチンの集団接種が、高齢者の死亡を半分以下に抑える効果があったとする分析が、米科学誌プロスワンに掲載された。著者らは日米両国の1978~2006年の人口統計を基に、インフルエンザによるとみられる死者の数を分析。日本の65歳以上の死者は、小学校などでの集団接種が行われていた94年まで10万人あたり6・8人だったが、95年以降は同14・5人に倍増した。小学生などの集団接種がない米国では、高齢者のワクチン接種率が大幅に増えたにもかかわらず、両期間とも同16~18人でほとんど変化がなかった。集団接種による社会全体への感染予防効果が高齢者の感染を抑えたとみられる。結果として、小学校などで行っていた集団接種が65歳以上の死亡率を減少させ、年間約1000人の死亡を抑えていたと、著者らは推定している。
(読売新聞より引用)

そこで、論文の原版を読んでみました。

Influenza-Related Mortality Trends in Japanese and American Seniors: Evidence for the Indirect Mortality Benefits of Vaccinating Schoolchildren
PLoS ONE 6(11): e26282. doi:10.1371/journal.pone.0026282


PLoS ONEは掲載料を著者が支払い、掲載コストを負担する代わりに読者は無料で閲覧できる科学雑誌です。「真に意味のある論文は雑誌の序列は問わず、他の研究者に必要とされる」という理念のもとに、インパクトファクター度外視で運用されている雑誌です。というか、論文審査における却下率を下げて(全投稿論文の70%近くを受理する)運営コストを下げる目的もあると思います。自力で掲載できるので、最近は著者が話題作りをしたい場合にもよく選ばれます。

上の図の棒グラフはインフルエンザワクチンの接種数、青色の折れ線グラフは高齢者のインフルエンザによる死亡率です。日本で1994年に小学校などで行っていた集団接種が終わってから高齢者のインフルエンザによる死亡率が増え、その後任意で小児の接種が増えてきたら、高齢者の死亡率は減ってきたというものです。

一方、集団接種がないアメリカでは、高齢者のワクチン接種率が大幅に増えたにもかかわらず、両期間とも高齢者のインフルエンザにようる死亡率はほとんど変化がありませんでした。

つまり、高齢者のインフルエンザによる死亡率は、高齢者のワクチン接種率よりも、子供のワクチン接種率に関係が深かった、ということです。

以前、意外に効いていなかったインフルエンザワクチンについてお伝えしました。
高齢者ではワクチン非接種者でもインフルエンザの発症率は高くなく、ワクチンを接種しても効果はなかったというものです。

この2つの結果を総合して考えると、一般の高齢者にはインフルエンザワクチンは必要ないのではないかと思えます。もちろん慢性呼吸器疾患などのリスクを持った高齢者には必要でしょうが、少なくとも、この2つの結果からは、助成金を交付して「一般の」高齢者のインフルエンザワクチンを推奨する有用性はないようです。

なぜ、こういうデータがあるのに、一般の高齢者への接種が助成金で行われているのか、政治家の票集めのためでなければよいのですが・・・

それともまた、ワクチンを生産している製薬会社との「あれ」ですか?

その助成金を小児の福祉に回した方が有用な気がします


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