院長のひとりごと

私、竹村院長が食べ物から健康まで基本的にノンジャンルでかきつづります。

「カラセン ~卒業~」

2009年09月07日 22時42分43秒 | ノンジャンル
~ドライブ中の松田智穂(22才)~

エリワーンポイスリー・ジェーイウェーイ


「さて、今夜も『あの人にステイチューン』と題して

 お送りしているわけですけども、改めて今夜のゲスト、ご紹介させて

 いただきます!OLから教師を経て現在恋愛のカリスマと幅広い

 世代の女性から支持を集めております、異色の経歴の歌手、

 辛島みどりさんでーす。ようこそいらっしゃいました~」

「こんばんは、辛島みどりです。よろしくお願いします。」

「えーっと先ほどもご紹介にありましたけども、辛島さんは元々はOLさんを

 されていたっていうのは本当ですか?」

「はい、OLとは言っても1年半くらいでしたけど。」

「なるほど、で、その次がまた面白いんですけど、学校の先生!?」

「えぇ、教師っていうか非常勤の講師でしたが、5年ほどしてました。」

「ちなみに教科は?」

「音楽です。 といいたいところですが、実は現国、現代国語でした。」

「え~、歌手の辛島さんだからてっきり音楽かと思ってましたよ。

 生徒はナマ辛島の歌声聴いてたのかよ~って羨ましく思ってたんですけど

 そうじゃなかったんですか~」

「そうじゃなかったんですよ~」

「そーか・・あ、話を少し戻しましてOLさんで1年半いた時というのは

 やはり今の辛島さんの歌の元になってるわけですかね、やっぱり。」

「うーん、OLやってた時は特に親しい同僚とかもあまりいなかったんですよ。

 だから同世代の女性の恋愛観とかは私自身の経験も含まれてるし

 想像っていう部分も実は多いんです。」

「想像ですか!?それにしても多くの女性から共感を得ているからこそ

 辛島さんの歌は愛されていると思うんですけどね。」

「ありがとうございます。同性からの支持は単純に嬉しいですね。」 

「ちょっと突っ込んだ話になりますけど、ぶっちゃけOL時代に

 ちょっと危険なというか、そういう恋愛も経験されたわけですか?

 ここ、結構ファンの方も気になってると思うんですよ」

「う~ん、そうですね、ま、ご想像にお任せします。」

「出た!ご想像にお任せします!そうですか。で、次に学校の先生に

 なられたということですが、なんでまたOLから先生に?」

「あ、それはですね、話すと別に面白くない話なんですけど。」

「と、いいますと?」

「あ、聞きますか(笑)えっーとですね、私は元々出身は富山なんですよ。」

「私は石川です!」

「そうなんですか!?お隣ですね。あ、それでですね、大学は東京に

 出てきたかったので・・その当時私が夢中になっていた先輩が

 東京に行ってしまって、まぁ不純な動機なんですけど。それで東京の

 大学に入ったんですが、授業もまじめに出ていたので教職もついでというか

 邪魔にはならないだろうと、取ったんですね。」

「まぁ教職課程ってそんな感じですよね。」

「怒られちゃうかな?それで、まぁ教職も取ったし先生でも・・って

 思ったんですけど、思ったほど採用がなくって、OLをして

 繋いだってだけなんですよ。」

「じゃ、一応は先生メインで考えてたわけなんですね?」

「そうなんです。でも今ではOL時代の経験が歌詞に生きてるわけですから

 何が後で生きてくるかはわからないものですね。」

「お、やはり実体験も多く歌詞に含まれてるわけですね」

「あ、言っちゃいましたね。」

「アハハ、それでその後の学校では現国を教えてたということですが。」

「えぇ、言葉のもつ力みたいなものってあると思うんですけど、それを

 ぜひ文学を通して伝えたいなという想いがありまして。」

「うん、わかりますわかります。そこでは担任を受け持ったりは

 しなかったんですか?」

「そうですね、講師のみでした。ずるい考えだとは思うんですが

 生活指導とか進路指導といった責任を負わないことで、より生徒に

 近い立場でいられるかなと思ったんですが、実際は進路指導や

 生活指導みたいなことにも手を出しちゃってましたね。

 指導っていうかあくまでもお手伝いという感じでしたけど。

 果たして生徒さんのためにはどうだったのか?って今でも疑問です。

 すみません。」

「いや~、生徒さんはきっと喜んでいたと思いますよ。そういう先生って

 記憶に残るものですからね。

 きっと彼らも同窓会かなんかで辛島さんの話をしていますよ。

 まさか歌手になるとはね~なんて言って。」

「どうでしょうか。覚えていてもらってるなら嬉しいですけど。」

「それで今回の新曲はまさにそんな辛島先生としての目線で書かれてるように

 思えるんですけど、そんな感じですか?」

「そうですね、いろんなコたちがそれぞれの進路に巣立っていくのを

 見ましたが、その一つ一つの思い出が私の宝物なので、そんな思いを

 歌にしました。」

「はい、それでは新曲、辛島みどりで「夢の中で ~Graduetion~」です。

 辛島さん、今夜はありがとうございました。」


~ まぶしすぎるね 晴れた朝 走り出す時を ふと止めて

  ウィンドウ越しに映す制服も 一度リボンを結んだ

  テストの赤点みたいに ギリギリセーフで飛び乗る

  いつものバスも いつもの君も 今日で最後になるね

  そう初めて 会ったときから もう別れは始まってたと

  大人たちは言うけど  それじゃ悲しい


  夢の中で 夢の中で会いたい 数え切れない思い出たちの

  ひとつひとつが宝物 

  みんな違う 違う道を行くけど 君の素敵な 微笑はきっと忘れない

  
  野球の応援みたいに 元気な声を聞かせてね 笑顔のままで

  手を振るつもり 明日へ踏み出すために

  そう地球儀回したときの もう止まらない好奇心を 

  胸につかむときまで ちょっとサヨナラ


  夢の中で 夢の中で会いたい 

  離れていても キミは世界でたった一人のキミだもの

  みんな違う 違う道を行くけど   

  進めなくなる そんな日はきっと話してね

  
  夢の中で 夢の中で会いたい 数え切れない思い出たちの

  ひとつひとつが宝物 

  みんな違う 違う道を行くけど 君の素敵な 微笑はきっと忘れない~



「ふ~ん、辛島みどりって先生だったんだ!?知らなかった。

 俺、結構辛島みどりって好きでさ、失恋の歌が多いイメージだけど

 こういうのも書くんだな。 先生をやってたって知ったらわかるけど

 知らなかったら、ちょっと「アレ?」って思うんじゃないかな。

 でもあれだよな~ 辛島みどりの教え子とかがこのFM聴いてたら
 
 嬉しいだろうな~ 自分のことかな?って思えるじゃん。

 で同窓会とかでさ、辛島先生すっかり有名人だね~なんて思い出ばなしで

 盛り上がったりしてさ。いいね~  ってチホ、オメー泣いてんの!??

 何?? 案外、辛島みどりの歌、響いちゃった!?

 アセッた~、いきなり泣くなよな~」


「・・アハハ、ばーか、そんなんじゃないっつーの。

 そっか、そっか、辛島先生が・・・そっかそっか。」

「なんだよ、こんどはニタニタして気持ちわりーな。」

「うっさい、ばーか。ところでアンタさ、思い出に残ってる先生とか

 いないわけ?」 


「ん?俺か?思い出に残る先生? あ、俺の場合はね~・・・」





  ~終~

「カラセン ~卒業~」

2009年09月07日 06時32分12秒 | ノンジャンル
卒業生 ~鈴原多恵子のはなし~


「学校に行ってた時はだいたい2限と3限の間に教室を抜けて

 帰ってました。

 駅から少し離れたオスロっていうゲームセンターになんとなく

 行くのがお決まりのパターンでしたね。

 最初の頃は校門を抜ける時に担任の関田にみつかったりするヘマをしてたけど

 秘密の抜け穴を見つけてからはバッチリでした。

 場所ですか? まぁ今なら別にバレてもいいからいうけどチャリ置き場の

 奥にフェンスの一部がネットになってるとこあったじゃないですか?

 あそこって普通にカーテンめくるようにネットをたぐり挙げると

 外に出られるんですよ。

 そこから出るとヒラガの裏庭みたいなトコに出るんですよ。

 あったじゃないですか、ヒラガっていう小さい駄菓子屋みたいな店。

 そう、懐かしいでしょ。その店のっていうかお家の裏庭に出るんですよ。

 まぁ人んちですけどね。

 そこからはもう誰にも見つからずに駅まで逃亡ですよ。

 駅まで行っちゃえばもう生活指導の先生とかはいないから

 あとは余裕でしたよ。

 でもある時にオスロでなんかのゲームやってたら、いきなり誰かに

 後ろから肩を叩かれたんです。

 「よお!」って(笑)

 心臓止まるかと思いましたよ。

 友達のはずないし、ほんとに終わったって思いました。

 そしたらそれが辛島先生だったんですよ。

 「上手いね」って。 あ、わたしのやってたゲーム見て。

 その場ですぐに関田に連絡されるって思ったから、すんごい憂鬱に

 なったんだけど、辛島先生は私の隣のゲームをやり始めたんですよ。

 なんかのパズルゲームだったけど、辛島先生もかなり上手かった。

 で、いつまでたっても関田に電話する様子じゃないから、いったい

 この人、何考えてるんだろう?ってわけわかんなくなったんです。

 先生のゲームがようやく終わったら先生が「お腹減らない?」って

 聞いてきたんですよ。

 ちょっと・・って答えたら「じゃ行こ!」ってスタスタ、店を

出て行くんですよ。

 どこ行くんですか?って聞いたらニコって笑ってそのあとも無言で

 歩くから、やっぱり学校連れて行かれるのかと警戒したら

 駅の反対側にあるシェーキーズに入ったんです。

 今は無いけど、その時は北口にあったんですよ。

 うちらはもちろんシェーキーズは好きだったけど辛島先生がそんな店に

 入るイメージ無かったし、驚いたんですよ。

 っていうか、この先生なんで私とシェーキーズなんか来てんの??

 って感じで、もうほんとワケわかんなかった。

 で、しばらくピザを無言で食べてたんだけど、やっぱりというか

 学校はどうしたの?って聞いてきたから、黙ってたんです。

 そしたら辛島先生は私が関田の授業のあるときはだいたい抜けてるって

 知ってたみたいなんです。

 職員室で関田がぼやいてるのを聞いたらしいけど。

 そんで「関田先生が苦手とか?」っていきなり核心突いてきた。

 黙ってたら「やっぱりぃ!そっか~」ってニコニコしだしたんです。

 「実は私もちょっとね~」って、普通言わないですよね、生徒にそんなこと。

 先生はそんな私のことは理解はできるけど・・って前置きして

 いろいろ話をしてくれました。

 「学校って勉強をするところってことで間違いは無いんだけど

 でも勉強だけなら家庭教師つけて家でやってても同じなのかっていうと

 それは大いに違うんだな~

 私が今になって学生時代を振り返ると、学校ってとこは我慢の練習を

 するところだって思うのね。

 鈴原さんみたいに担任の先生がどうしても苦手とか、クラスにどうしても

 合わない人がいるとか、部活がつまらないけど辞められないとか

 単純に授業がツライとか、それこそ日常が我慢の連続なんだよね。

 でもそれって社会に出てもどこまでいっても付きまとってくるもので

 我慢の訓練ができてない人は、いざってときに弱いんだよ。

 中には考え方が前向きで、嫌なことを嫌なこととして捉えないから

 そもそも我慢なんかする必要のない人もいるけど、誰でも

 どこかで我慢はしていると思うの。

 それで我慢できる人になるかどうかはやっぱり我慢した量の積み重ねだって

 私は思うの。

 我慢も繰り返ししてると習慣になるし、逆に逃げることも習慣になる。

 困ったことに逃げることってクセになりやすいの。

 大人になっても問題に向き合うことが出来なくて、おちゃらけて

 やり過ごすっていう人は結構多いんだよ。

 先生の中にだっているくらいだから。

 あ、これは内緒だよ。

 辛かったら我慢しないでいいんだよ。なんて私は言うつもり無いんだ。

 我慢は繰り返して経験しないと、逃げる大人になっちゃうよ。

 鈴原さんが今学校に行く以外でどうしてもやりたいことがあるっていうなら

 私は応援するけど、それってゲームセンターでゲームすることじゃ

ないでしょ?」



 卒業までは5ヶ月くらいあったけど、それからは私、毎日学校行ったよ。

 うん、すごい我慢した。

 先生の歌って恋愛の、しかも失恋の歌が多いけど、歌詞をよく読むと

 あぁやっぱりこの人は私が知ってる辛島先生だな~って思うんだよね。


 ~続く~